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前編

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 良家の娘としてのびのび育ったエライカは齢十八で親戚に紹介された五つ年上の青年アッポと婚約。

 だがいつしか不穏な空気になってきて……。

「エライカ! お前とはもうやっていけん! 婚約なんぞ破棄だ!!」

 その日、アッポは躊躇うことなく婚約破棄を告げた。

 きょとんとするエライカ。
 だが彼女はすぐに言われていることを理解する。

「私のことが嫌になったということですね」
「ああそうだ! ったく、お前みたいなマイペースな女と関わるべきではなかった。今はとても後悔している! お前みたいな女と婚約していた、というだけでも、一生恥ずかしい思いをするわ。最低だ」

 こうして一方的に切り落とされたエライカだったが、彼女はあまり動じていなかった。

 婚約破棄されても深く傷つきはせず。
 まぁいいか、くらいにしか考えず。

 ただ、『もう愛は求めない』という決意だけを、しっかり胸に刻んでいた。
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