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前編

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「ねーぇ。聞いてぇ。昨日も大変だったのぉ」
「そうかい」
「貴方はぁ?」
「オレは可愛げのない婚約者に困ってるよ。いっつも鬱陶しいんだ。いなくなればいいのに」

 婚約者バレルが見知らぬ女性といちゃつきつつそんな風に喋っているのを見た時から、私は薄々勘づいていた。
 私は嫌われているのだろうな、と。

 でもすぐには何も言わなかった。

 彼が女性といちゃついている証拠だけ保存しておいた。


 ◆


「可愛げのない君のような女とはやっていけない。婚約破棄させてもらう」

 だから、バレルからこう告げられた時も、私はそれほど驚かなかった。

「そうですか、分かりました」
「やはり可愛らしくない。泣いて謝れば考えてやろうと思ってきたんだが。……もう二度と会いたくないな」
「そうですね。私も同感です」

 私は写真を取り出す。
 バレルと女性が濃厚な接触に至っている写真。

「でも、この件に関しては償っていただきます」

 愕然とするバレル。

「その点はお忘れなく」
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