上 下
2 / 2

後編

しおりを挟む
「泊まり込みでいいかな?」
「はい」
「大丈夫?」
「はい、むしろありがたいです」
「良かった。では決まりだね。それでは、これからよろしく」


 ◆


 あれから六年、私は今、屋敷の主人の妻となっている。

 あの時は知らなかったが、主人は独身だったのだ。
 それを知った時はかなり驚いた。
 あれほどお金があるなら奥さんもいるものだろうと思っていたのだ。

「君が妻になってくれて嬉しいよ」

 彼はいつも私に温かな視線を向けてくれる。
 そこが好きだ。

「いつもありがとうございます」
「そろそろ敬語やめないかい? 普通に話していいんだよ。今はもう雇い雇われじゃない」
「しかし……」
「どうしても無理?」
「そう、ですね……その、まだ、あまり慣れていなくて」
「なら! まずは練習から始めよう!」

 これからも彼と共に生きてゆきたい。

 穏やかな幸福の中で。

 そうそう、そういえば、これらは最近知ったのだけれど。

 私の両親はあの後離婚したそうだ。
 母の同時五人不倫が発覚したことで揉めて離婚に至ったらしい。

 そして、エイブリールはというと。
 街で出会った女性に惚れられてしまい、追いかけ回され、ストーカーのような行為を繰り返された果てに捕まってしまい監禁されることとなってしまったそうだ。
 表向きは同棲ということになっているようだが。
 情報によれば、エイブリールは嫌がっているそうだが離してもらえず監視され続けているらしい。

 ま、もう関係ないけれど。

 ただ……閉じ込められて監視され続ける日々というのは辛そうだなとは思う。


◆終わり◆
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...