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4話
しおりを挟むちなみに、両親はある時暴動に巻き込まれて死亡した。
なんでも荒れ狂う群衆によって破壊された軽食屋である小屋の下敷きとなったようなのだ。
だが何も思わなかった。
二人が生きていても良いことなんてない。
それなら一人生きてゆく方がましだと思うばかり。
実の親が亡くなった、その事実は変わらないけれど、だからといって悲しいとか辛いとか泣いてしまうとかは一切なかった。
ま、ざまぁみろ、という気持ちは多少あったけれど。
◆
あれから数年、私はメイアが紹介してくれた男性と結婚した。
「いやぁ平和になってきましたねぇ」
「そうですね!」
「一時はこの国も荒れていましたケド、ましになってきた気がしますねぇ。そう思いません? ルリファさん」
「思います」
「ですよねぇ!」
彼は少々不思議な雰囲気のある人だ。
でも嫌いではない。
彼と一緒にいるとほどよい心地よさがある、その事実に変わりはない。
「ルリファさんも災難でしたねぇ、色々」
「ええ、そうなんです……でも、今は幸せですよ」
彼は私のこれまでのことをすべて知ったうえでこうして一緒に生きてくれている。
だからこそ感謝の念も強い。
「それは本心ですかぁ?」
「もちろんです!」
「なら良かったです、安心しましたよぉ」
個人的にも社会的にも、ここへたどり着くまで色々あった。
けれども終着地点には確かな光があって。
多くの命が散る中でも私は命を落とすことなく無事ここまで来ることができた。
この幸運に感謝して、これからも歩んでいきたい。
◆終わり◆
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