上 下
2 / 4

2話

しおりを挟む

「さようなら、メイアさん」
「どうかお元気で! ルリファ様!」

 その後私は実家へ戻った。

 親は一応受け入れてはくれたけれど、私への対応は冷たいもので。

「ルリファったら、ドジやらかしたのね。あーあ、あんたみたいな娘でがっかりだわ」
「やはり馬鹿娘は無能だな、ははは」

 母も、父も、そんな態度だった。

 それから少しして、国民向けにビスコス王子とベティの婚約が発表されることとなる。

「ベティがいて本当に良かったわ。彼女はいてくれなかったら今頃……間違いなく恥をかいていたもの」
「そうだな、はは」
「馬鹿姉の埋め合わせをさせられるなんてベティも可哀想だけれどね」
「それはそうだな、また今度良い物を買ってやろう。色々な。ベティのためにたくさん金を使おう」
「そうだわ。彼女は可愛いもの、姉と大違い」

 ベティは私の座を奪うためにあんなことをしたのだろう。

 今どんな気持ち?

 嬉しい?
 純粋に喜べている?

 聞いてやりたい気もするが、そんな機会ももはやない。

「姉はさっさとどこかへ出ていってほしいわね」
「ああそうだな、ははは」

 両親まで心ないことを言って……。

 もやもやする毎日だった。


 ◆


 しかしその後、ベティに関する黒い噂が流れ始めた。

 新聞にネタが載ったのが始まりで、話はみるみるうちに拡散していって――気づけばその黒い話を民の多くが知るところとなっていった。

 そして徐々に結婚反対活動が起こり始める。

「第一王子の妻にあんな黒いやつを据えるなんておかしいだろ! 変えろ! ゆくゆくベティさんが王妃になるなんて嫌だ! 絶対に反対だ!」
「ベティ下ろせ!」
「嘘つきなのは妹なんだろ!? 違うなら違うと言えよ!! それをはっきり言えないってことは記事の話は本当なんだろ!?」

 ルリファが妹を虐めていたという話は、その座を奪いたい妹ベティの作り話だった。

 そういう情報が流れたのだ。

 そのことが国民たちを怒らせる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄され聖女も辞めさせられたので、好きにさせていただきます。

松石 愛弓
恋愛
国を守る聖女で王太子殿下の婚約者であるエミル・ファーナは、ある日突然、婚約破棄と国外追放を言い渡される。 全身全霊をかけて国の平和を祈り続けてきましたが、そういうことなら仕方ないですね。休日も無く、責任重すぎて大変でしたし、王太子殿下は思いやりの無い方ですし、王宮には何の未練もございません。これからは自由にさせていただきます♪

死に戻るなら一時間前に

みねバイヤーン
恋愛
「ああ、これが走馬灯なのね」  階段から落ちていく一瞬で、ルルは十七年の人生を思い出した。侯爵家に生まれ、なに不自由なく育ち、幸せな日々だった。素敵な婚約者と出会い、これからが楽しみだった矢先に。 「神様、もし死に戻るなら、一時間前がいいです」  ダメ元で祈ってみる。もし、ルルが主人公特性を持っているなら、死に戻れるかもしれない。  ピカッと光って、一瞬目をつぶって、また目を開くと、目の前には笑顔の婚約者クラウス第三王子。 「クラウス様、聞いてください。私、一時間後に殺されます」 一時間前に死に戻ったルルは、クラウスと共に犯人を追い詰める──。

婚約破棄が国を亡ぼす~愚かな王太子たちはそれに気づかなかったようで~

みやび
恋愛
冤罪で婚約破棄などする国の先などたかが知れている。 全くの無実で婚約を破棄された公爵令嬢。 それをあざ笑う人々。 そんな国が亡びるまでほとんど時間は要らなかった。

婚約破棄ですか? ならば国王に溺愛されている私が断罪致します。

久方
恋愛
「エミア・ローラン! お前との婚約を破棄する!」  煌びやかな舞踏会の真っ最中に突然、婚約破棄を言い渡されたエミア・ローラン。  その理由とやらが、とてつもなくしょうもない。  だったら良いでしょう。  私が綺麗に断罪して魅せますわ!  令嬢エミア・ローランの考えた秘策とは!?

薬屋の一人娘、理不尽に婚約破棄されるも……

四季
恋愛
薬屋の一人娘エアリー・エメラルドは新興領地持ちの家の息子であるカイエル・トパーヅと婚約した。 しかし今、カイエルの心は、エアリーには向いておらず……。

王宮で虐げられた令嬢は追放され、真実の愛を知る~あなた方はもう家族ではありません~

葵 すみれ
恋愛
「お姉さま、ずるい! どうしてお姉さまばっかり!」 男爵家の庶子であるセシールは、王女付きの侍女として選ばれる。 ところが、実際には王女や他の侍女たちに虐げられ、庭園の片隅で泣く毎日。 それでも家族のためだと耐えていたのに、何故か太り出して醜くなり、豚と罵られるように。 とうとう侍女の座を妹に奪われ、嘲笑われながら城を追い出されてしまう。 あんなに尽くした家族からも捨てられ、セシールは街をさまよう。 力尽きそうになったセシールの前に現れたのは、かつて一度だけ会った生意気な少年の成長した姿だった。 そして健康と美しさを取り戻したセシールのもとに、かつての家族の変わり果てた姿が…… ※小説家になろうにも掲載しています

こんなに馬鹿な王子って本当に居るんですね。 ~馬鹿な王子は、聖女の私と婚約破棄するようです~

狼狼3
恋愛
次期王様として、ちやほやされながら育ってきた婚約者であるロラン王子。そんなロラン王子は、聖女であり婚約者である私を「顔がタイプじゃないから」と言って、私との婚約を破棄する。 もう、こんな婚約者知らない。 私は、今まで一応は婚約者だった馬鹿王子を陰から支えていたが、支えるのを辞めた。

元婚約者が「俺の子を育てろ」と言って来たのでボコろうと思います。

音爽(ネソウ)
恋愛
結婚間近だった彼が使用人の娘と駆け落ちをしてしまった、私は傷心の日々を過ごしたがなんとか前を向くことに。しかし、裏切り行為から3年が経ったある日…… *体調を崩し絶不調につきリハビリ作品です。長い目でお読みいただければ幸いです。

処理中です...