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後編

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 力とは、持たない者からすれば恐ろしいものでもある――それは一応理解しているつもりだ。

 でも、できるなら、もう少し歩み寄ろうとしてほしかった。一方的に切り捨てるのではなく、心をこちらへ向けてほしかった。いきなりぶちぎるようなことをしないでほしかった、どうしてもそう思ってしまう部分はある。落ち着いて話せば少しは分かり合えたかもしれないのだ。

 とはいえ、それも彼が選んだ道。

 彼の人生は最終的には彼が決めるもの。
 私が決めるものではない。

 だから仕方なかった――そう思いはしても、でも、それでも少し切なさは残った。


 ◆


 後日、私は、ちょっとした思いつきから能力を使った。

 相手はこの前私を切り捨てた元婚約者の彼。
 彼が家にいそうな時間帯を狙って使ってみた。

 ちょっとした仕返しのつもりだったのだが――その日の彼はたまたま学会の会合に参加していたらしく、壇上で話している最中に服が剥げてしまったらしく、恥をかくこととなったそうだ。

 それ以来、彼は皆から「人前で服を脱ぐのが好きな男」と呼ばれるようになってしまったらしい。

 今や道を歩くだけでも笑われるとか。


 ◆


 婚約破棄から一年三ヶ月。

 私は友人の結婚式にて知り合った六十代くらいの男性から息子を紹介され、お試し期間のような感じでしばらく関わったその後に結婚することとなった。

 彼の家は裕福だ。
 そのおかげで私も心穏やかに生活できている。

 驚くほどの贅沢をするということはない。
 が、金銭面で困ることもない。

 ここにたどり着くまで悲しいこともあったけれど、今は生き抜いてきて良かったと心から思えている。


◆終わり◆
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