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後編

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 一人の麗しい女性が声をかけてくれた。
 私だけに、だ。
 群れでいる彼女らと少し離れたところにいたから私だけ目についたのかもしれない。

「あ……えと」
「珍しいお洋服ですね」
「は、はい……実は、遠い世界から」
「そうでしたか!」

 その女性は己が王女であると明かした。
 そして「一緒に来てくださいませんか? よければお話など聞いてみたいのです!」と言ってくれて。
 私は頷いた。
 幸い言語は自動的に分かるようになっていたので、会話くらいならできる気がしたのだ。

 こうして王女の友人となった私は城に住めることになった。

 なんでも、王女は最近婚約者に浮気され、婚約が急遽破棄となったばかりだそう。それで、ちょうど話し相手を探しているところだったようだ。

 これは本人から聞いた話ではないけれど。
 でも、王女を幼い頃からよく知っているという人から聞いた話なので、嘘ではないと思われる。

 また、王女本人からも、切ない恋や異性関係の話を聞かせてもらったことがあった。
 その辺りを統合して考えると、婚約破棄の話も完全な嘘だとは思えなかった。

 そんな流れで私は無事住むところを得たのだけれど、それとは対照的にクラスメイトたちはそれぞれ悲惨なその後を迎えたようだ。

 賊に襲われ殺められた者。怪しげな性癖の不審者に誘拐され拷問尽くしの日々を生きなくてはならなくなった者。食料にありつけず気を失いそのまま逝ってしまった者。毒のあるきのこを食べたためにその場で倒れて旅立ってしまった者。馬車にはねられて身体を岩にぶつけてしまい落命した者。

 ……など。

 ほとんどが幸せにはなれなかったようだ。

 しかし同情はしない。
 だって彼女らは私をずっと虐めてきていた人たちだから。

 だから、可哀想なんて思ってやるものか。

 自業自得だ!


◆終わり◆
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