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前編
しおりを挟む前妻の子であることを理由に、私は、現在の母である義母とその娘である義妹エリサから虐げられている。
私は二人が現れた時も嫌な顔をしないでいた。それは、事故で妻を亡くした父に、どうにか明るく幸せに暮らしてほしかったからだ。私の存在によって父が不幸になるのは嫌だったし、私がいるからと父に人としての幸福を放棄させる気もなかった。
でも……そんな害のない私だったからこそ虐げられることになってしまったのかもしれない。
舐められたのだ。
たいしたことない娘だと。
当時私には婚約者がいたのだがその婚約も二人によって強制的に取り消されてしまった……もっとも、そんなものは始まりでしかなかったのだけれど。
ここは父と私の実母である前妻の家だというのに、今ではすっかり義母が頂点に君臨してしまっている。そのこともあって、父も、彼女の対して強くはでられず。それゆえ、父も私がされていることを知りながら見て見ぬふりをしている。
かつては父には幸せに生きてほしいと思っていたけれど、今は……正直もうそうは思えない。
見て見ぬふりをしている父だって私を虐めているようなものだ。
手を下していないだけでほぼ同罪である。
◆
だがある日、義母がこんなことを言ってきた。
「あんた、エリサが城へ行くから、世話役としてついていきな」
私は戸惑った。
彼女はずっとエリサと私を積極的に関わらせようとはしていなかったから。
何かの企みがあるとしか思えない……。
「何だい、その顔」
「あ、い、いえ。少し驚いてしまいまして」
「はぁ?」
「エリサさんに同行させていただけるとは思っていなかったもので……」
「ふん。何でもいいよ。ま、そういうことだから、行ってね。エリサをきちんと守るんだよ」
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