妹に比べてぱっとしなかったために両親から愛されず育ちましたが、今は夫から大事にしてもらえています。

四季

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3話

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 他人の家に押し入り家族を惨殺、それ自体はかなり恐ろしいことだ。
 ただその一件によって私が思わぬ得を得られることとなったこともまた事実で。

 これでもう何も言われない。
 これでもう妹と比べて嫌みを言われることはない。

 そう思うと、不謹慎だがにやけてしまった。

 不愉快だった人たちは皆この世界から消えたのだ。

 ……笑いが止まらない夜もあった。


 ◆
 

「シトリン! この書類なんだけどさ、ちょっと質問してもいい?」

 家族の死から五年。
 私は今、若き領主オブサーバーの妻となり、彼を公私共に支えながら生きている。
 屋敷の世話は基本的にすべて雇っている使用人たちがしてくれているが、領主の仕事のサポートは主に私が行っている。

「はい、オブサーバー様」

 これは妻としての務めだ。

 そういうことも含めての結婚。
 そう知っていて彼を生涯の伴侶に選んだ。

「ここなんだけど、これって」
「はい。その点ですが、こちらとこちらに関してここにまとめて書いておりまして、この数値と領地の広さをこのような計算式に当てはめ――」
「あ! そっか! そういうことか」
「そうです」
「なるほど分かったよ! だからこれはこの数になってるんだ!」
「はい」

 オブサーバーはこんな愛想のない私のことも受け入れてくれている。

 悪くなんて言わない。
 そしてそれどころか定期的に褒めてくれる。

 彼は本当に優しい、それに、精神面でもよくできた人だ。

「いやぁ、分かった分かった、助かったよ~。さすがはシトリンだね! とっても優秀でびっくりすぎるよ。いつもだけど、ほんと、君の仕事は素晴らしいなぁ!」

 彼と一緒にいられる、ただそれだけで私は幸せ。

 私はようやく居場所を手に入れた。

 大事にしてもらえる場所。
 そこにいても悪く言われない場所。

 幸福は、ここに在る。


◆終わり◆
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