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前編
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私、エリシーナは、若き国王ルルガと婚約していた。
彼との婚約はこの国のことを考えて病で早くに退位した先代国王が決めたもの。それゆえそこそこ良い家柄の出の私も拒否することができず。そのまま、先代国王の望んだ通り、婚約は成立した。
けれども少々わがままなルルガはそれを良く思っていないようで。
「エリシーナ、君との婚約はやはりなかったことにする」
今日、ついにそう告げられてしまった。
婚約はなかったことに。
これは事実上の婚約破棄である。
「急ですね。良いのですか? この婚約は先代国王が決めたことなのですよ? 勝手に判断して問題ものなのですか」
「うるさい女だな。そんなだから嫌いなんだよ」
「話を逸らさないでください」
「黙れ! ……おい、そこの、この女を城から追い出せ」
こうして私は城から追い出されることとなった。
ルルガはいつもこうだ。少しでも気に食わないことがあれば相手を城から強制的に追い出そうとする。そして、人格のわりに大きな権力を持ってしまっているがために本当にできてしまうので、そこも厄介だ。
先代国王からは「あのわがままを少しでも良いので改善させてほしい」と言われていたけれど、どうやら私には無理だったようだ。
しかし、あれに付き合うのはもう疲れた。
「エリシーナ様……申し訳ありません、このようなことになり」
「良いのですよ」
「本当は誰も従いたくなどないのです……しかし彼は国王であり……逆らえはしないのです」
「分かっています。それが貴方の仕事ですものね。気になさらないでください」
ここらで彼からは離れて。
新しい人生を選ぼう。
できるのなら、自由にも生きてみたい。
彼との婚約はこの国のことを考えて病で早くに退位した先代国王が決めたもの。それゆえそこそこ良い家柄の出の私も拒否することができず。そのまま、先代国王の望んだ通り、婚約は成立した。
けれども少々わがままなルルガはそれを良く思っていないようで。
「エリシーナ、君との婚約はやはりなかったことにする」
今日、ついにそう告げられてしまった。
婚約はなかったことに。
これは事実上の婚約破棄である。
「急ですね。良いのですか? この婚約は先代国王が決めたことなのですよ? 勝手に判断して問題ものなのですか」
「うるさい女だな。そんなだから嫌いなんだよ」
「話を逸らさないでください」
「黙れ! ……おい、そこの、この女を城から追い出せ」
こうして私は城から追い出されることとなった。
ルルガはいつもこうだ。少しでも気に食わないことがあれば相手を城から強制的に追い出そうとする。そして、人格のわりに大きな権力を持ってしまっているがために本当にできてしまうので、そこも厄介だ。
先代国王からは「あのわがままを少しでも良いので改善させてほしい」と言われていたけれど、どうやら私には無理だったようだ。
しかし、あれに付き合うのはもう疲れた。
「エリシーナ様……申し訳ありません、このようなことになり」
「良いのですよ」
「本当は誰も従いたくなどないのです……しかし彼は国王であり……逆らえはしないのです」
「分かっています。それが貴方の仕事ですものね。気になさらないでください」
ここらで彼からは離れて。
新しい人生を選ぼう。
できるのなら、自由にも生きてみたい。
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