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前編

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「どうしてそんなことを言われなくちゃならないのよ!」

 侮辱するようなことを言ってくる婚約者アドベンにそう言い放ったところ。

「あ? うっぜ。もういいわ。あんたなんて要らねぇわ。婚約、破棄な」

 そんな風に言われてしまった。

 ――そう、関係を解消するという言葉である。

 急に何を言い出すのか。
 理解不能だ。
 あまりにも唐突かつ身勝手過ぎる。

「婚約破棄? どうしてよ、急に」
「うぜえからだよ」
「酷いことを言ったのはそちらじゃないの」
「だとしてもうぜぇんだよ!」

 アドベンは同じようなことしか言わない。

 これでは話し合いにはならない……。

 こんなやりとりをしていても時間の無駄だ。
 きっと何も生まれない。
 このまま言葉を発し続けても同じようなやり取りが無限に繰り返されるだけだろう。

「……なら私は何を言っても駄目ということなの? 意見すらも?」
「うるせぇ!」
「会話して。言葉でやり取りして」
「うぜぇよ!!」
「……分かった、もういいわ」
「よし、じゃあ婚約は破棄な!」
「分かった。そうしましょ。それでいいわ」

 もうこれ以上話したくない。
 そう思ったから、私はそれを受け入れることにした。

「さようならアドベン」
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