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13話「国に平穏を、そして私も幸せになります」

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 ――あれから二年半が過ぎた。

 結論から言えば、クロミヤスは勝利を収め平穏を取り戻した。

 侵攻による被害はそこそこあった。が、クロミヤスの兵たちは種族が豊富ゆえに強かった。そして、ルミッセルの父親――国王率いる軍を、少し時間はかかったがしっかりと受け止め、それからはね返した。

 戦いの中で、私は魔法を使った。

 すべてを消し飛ばす魔法――いや、すべて、は言い過ぎかもしれないけれど――しかしそれに近しいくらいの威力のある魔法を使い、敵軍を蹴散らした。

 初めてこの力が役に立って、あの時はとても嬉しかった。

 皆が褒めてくれて、クロミヤスの優位さもぐっと上がって。
 他者のためにこの手で何かできたことが、私にとっては何よりも喜ばしいことだったのだ。

 そして戦後、ルミッセルを含むあちらの国の王家は滅んだようだ。

 国に災いをもたらした。
 民からはそう言われて。
 王族は皆処刑されたり暗殺されたりしてこの世から去り、王家はほぼ空っぽの状態となって消滅したらしい。

 あの国は今、少しずつ民による新しい制度ができていっているところだとか。
 王家の支配から解き放たれた民たちがこれから作り上げてゆく国、その未来が明るいものであることを願う。

 できるなら、穏やかな良き国となってほしい。

 そうすればいつかはあの国とクロミヤスも仲の良い国となれるかもしれない――そんな淡い願いを抱きつつ。

 夜明けを遠くからそっと見つめている。

 そして、私の人生もまた大きく変わろうとしている。

 ――明日、私は、クロミヤスの王たるバーレットと結婚する。

 ドレスやら何やらも既に用意されているし、後は今夜をそっと過ごして特別な朝を迎えるだけ。

「ローゼマリン様、夜のお飲み物をお持ちしました」
「あ、はい! ありがとうございます!」

 ちょっぴりそわそわしてしまう夜には心が落ち着く素敵な香りのお茶を飲みたい。そう思って頼んでいたものが今届いた。希望のものを持ってきてくれたのは、もちろん、この部屋の担当をしてくれているプレアだ。

「こちらの香りでよろしかったでしょうか?」
「はい、もちろん! あの……プレアさん、いつも本当にありがとうございます。色々お世話になって……」
「いえ、お気になさらず。これも仕事ですので」
「それでも……どうか、ありがとうと言わせてください」

 バーレットと結婚すれば、私はこの国の王妃となる。現在とは異なった視界が広がることだろう。きっと、新しい、今はまだ知らない世界が私の前に現れてくるはず。

 それでも、あの人と共に歩む。

 いつからかもうそう決めていた――。

 こんな人生になるなんて思っていなかったけれど、でも、案外こういうのも悪くはないのかもしれない。


◆終わり◆
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