26 / 32
26話「父親からの呼び出し」
しおりを挟む
翌朝、私がベッドで目を覚まし上半身を起こすと、すぐ傍にアナがいた。彼女はニコニコしていて、朝から元気そうだ。しかもなぜか、ペンと便箋を持っている。
「おはようございます、リリエラ様!」
「あ……おはようございます」
アナの妙に元気な挨拶に戸惑いつつ、挨拶を返す。
「一晩考えてみましたが、まずは手紙を書かれてはどうでしょうか?」
彼女が言っているのは、恐らく、パトリーへの手紙ということなのだろう。昨夜の話があったから、すぐに察することができた。
「ま、待って下さい。起きるなりそんなことを言われても」
ひとまずそう返しておく。
するとアナは申し訳なさそうに頭を下げ、「そ、そうでしたね! すみません! お飲み物でも、持って参ります!」と言いながらベッドから離れていった。
せっかく私のことを考えて提案してくれていたのに、少し可哀想な接し方をしてしまったかもしれない——そんな風に思いつつ、私はベッドからゆっくりと下りた。
朝食後、自室へ戻ると、アナはワクワクした表情で私を迎えてくれた。
「お手紙の準備、させていただいております!」
「あ……ありがとうございます」
いや、そもそも、私はまだ手紙を書くなんて言っていない。
けれど、アナにこんなに期待したような目で見られたら、書かないというわけにもいかず。
そのくらいなら大丈夫だろう、と、私は手紙を書くことに決めた。
「便箋、三種類ほど用意しております。その中から、どれかお好きなものをお使い下さい」
そう言ってアナが見せてきた便箋は、どれも、シンプルかつ女性的なデザインのものだった。
一つは、白地に微かな花柄。パステルピンクの小さな花がいくつもプリントされている、少女的な雰囲気のもの。
もう一つは、地は薄いクリーム色で、その端に向日葵のような花が二つほど描かている、夏らしさ全開といった雰囲気のもの。こちらは、健康的な感じがする。
先ほどのものが恋する乙女というイメージであったのに対し、こちらは活発な少女というような印象を受けるデザインだ。
そしてもう一つ。それは、ドット柄だった。
ほんの少し青みを帯びているようにも見える白地に、パステル調の点がさりげなくプリントされている。点は、桜色や空色、薄緑など、様々な色だ。
「どれも素敵ですね」
私はまず、思ったことを述べた。
するとアナは頬を緩ませる。
「本当ですか? 嬉しいです! 昨夜、じっくり選んだので!」
「……アナさんが、ですか?」
「はい! この家にある便箋の中から、リリエラ様に相応しいと思えるものを選んでみたのです!」
アナの言葉を聞いたら、なぜか、急に涙が浮かびそうになってしまった。私のために色々頑張ってくれていたのだと知り、それがとても嬉しくて。
「……ありがとうございます。色々考えて下さったんですね」
こちらの世界へ来て戸惑っていた私にも、親切にしてくれて。少しおかしなことを言ったこともあっただろうけど、それでも嫌な顔をすることはなく、傍にいてくれた。
そのことだけでも、アナには本当に感謝しかない。
なのに、また色々考えて行動してくれて。
もう、感謝しきれない。
「はい! リリエラ様には幸せになっていただきたいですから!」
「幸せにって……パトリーと、ということ?」
「はい!」
「……そうですね。では、お手紙を書きます」
幸せに、は、まだ分からない。
でも、パトリーのことは嫌いじゃないから、これかもずっと仲良くしていけたらと思う。
——さて、手紙を書くとしよう。
手紙に内容は無難なもの。
ただ、便箋がアナの選んでくれたドット柄だったため、これまでの手紙よりは可愛らしい雰囲気に仕上がったように思う。
パトリーが戸惑わないだろうか、という気もしないことはないけれど。
こうして、その手紙は午後の回収に間に合ったのだった。
その日、私は父親に呼び出された。
珍しく二人きりだ。
父親——厳密にはリリエラの父親になるが、彼は、恰幅のいい男性だ。シャツの下にキャミソールのような妙なデザインの下着を着ていて、それが透けているのが非常に気になってしまうが、そこを見なければ立派な男性に見える。
「リリエラ、お前が西の国の商人の息子と親しくしていることは知っているが、それでも、言わせてほしい」
「えっと……何でしょうか?」
リリエラの父親は、現代日本で暮らしていた私の父親とは、まったくと言っても問題ないほど似ていない。そのため、こうして向かい合う時、他人の父親と話しているみたいな気がしてとても緊張してしまう。
「リリエラを妻にしたいとの申し出があった」
父親の発した言葉を、私は、すぐには理解できなかった。
だって、いきなり『妻にしたい』よ?
理解できるわけがないじゃない。むしろ、そんなことをすぐに理解できる方が、どうかしているわ。
「おはようございます、リリエラ様!」
「あ……おはようございます」
アナの妙に元気な挨拶に戸惑いつつ、挨拶を返す。
「一晩考えてみましたが、まずは手紙を書かれてはどうでしょうか?」
彼女が言っているのは、恐らく、パトリーへの手紙ということなのだろう。昨夜の話があったから、すぐに察することができた。
「ま、待って下さい。起きるなりそんなことを言われても」
ひとまずそう返しておく。
するとアナは申し訳なさそうに頭を下げ、「そ、そうでしたね! すみません! お飲み物でも、持って参ります!」と言いながらベッドから離れていった。
せっかく私のことを考えて提案してくれていたのに、少し可哀想な接し方をしてしまったかもしれない——そんな風に思いつつ、私はベッドからゆっくりと下りた。
朝食後、自室へ戻ると、アナはワクワクした表情で私を迎えてくれた。
「お手紙の準備、させていただいております!」
「あ……ありがとうございます」
いや、そもそも、私はまだ手紙を書くなんて言っていない。
けれど、アナにこんなに期待したような目で見られたら、書かないというわけにもいかず。
そのくらいなら大丈夫だろう、と、私は手紙を書くことに決めた。
「便箋、三種類ほど用意しております。その中から、どれかお好きなものをお使い下さい」
そう言ってアナが見せてきた便箋は、どれも、シンプルかつ女性的なデザインのものだった。
一つは、白地に微かな花柄。パステルピンクの小さな花がいくつもプリントされている、少女的な雰囲気のもの。
もう一つは、地は薄いクリーム色で、その端に向日葵のような花が二つほど描かている、夏らしさ全開といった雰囲気のもの。こちらは、健康的な感じがする。
先ほどのものが恋する乙女というイメージであったのに対し、こちらは活発な少女というような印象を受けるデザインだ。
そしてもう一つ。それは、ドット柄だった。
ほんの少し青みを帯びているようにも見える白地に、パステル調の点がさりげなくプリントされている。点は、桜色や空色、薄緑など、様々な色だ。
「どれも素敵ですね」
私はまず、思ったことを述べた。
するとアナは頬を緩ませる。
「本当ですか? 嬉しいです! 昨夜、じっくり選んだので!」
「……アナさんが、ですか?」
「はい! この家にある便箋の中から、リリエラ様に相応しいと思えるものを選んでみたのです!」
アナの言葉を聞いたら、なぜか、急に涙が浮かびそうになってしまった。私のために色々頑張ってくれていたのだと知り、それがとても嬉しくて。
「……ありがとうございます。色々考えて下さったんですね」
こちらの世界へ来て戸惑っていた私にも、親切にしてくれて。少しおかしなことを言ったこともあっただろうけど、それでも嫌な顔をすることはなく、傍にいてくれた。
そのことだけでも、アナには本当に感謝しかない。
なのに、また色々考えて行動してくれて。
もう、感謝しきれない。
「はい! リリエラ様には幸せになっていただきたいですから!」
「幸せにって……パトリーと、ということ?」
「はい!」
「……そうですね。では、お手紙を書きます」
幸せに、は、まだ分からない。
でも、パトリーのことは嫌いじゃないから、これかもずっと仲良くしていけたらと思う。
——さて、手紙を書くとしよう。
手紙に内容は無難なもの。
ただ、便箋がアナの選んでくれたドット柄だったため、これまでの手紙よりは可愛らしい雰囲気に仕上がったように思う。
パトリーが戸惑わないだろうか、という気もしないことはないけれど。
こうして、その手紙は午後の回収に間に合ったのだった。
その日、私は父親に呼び出された。
珍しく二人きりだ。
父親——厳密にはリリエラの父親になるが、彼は、恰幅のいい男性だ。シャツの下にキャミソールのような妙なデザインの下着を着ていて、それが透けているのが非常に気になってしまうが、そこを見なければ立派な男性に見える。
「リリエラ、お前が西の国の商人の息子と親しくしていることは知っているが、それでも、言わせてほしい」
「えっと……何でしょうか?」
リリエラの父親は、現代日本で暮らしていた私の父親とは、まったくと言っても問題ないほど似ていない。そのため、こうして向かい合う時、他人の父親と話しているみたいな気がしてとても緊張してしまう。
「リリエラを妻にしたいとの申し出があった」
父親の発した言葉を、私は、すぐには理解できなかった。
だって、いきなり『妻にしたい』よ?
理解できるわけがないじゃない。むしろ、そんなことをすぐに理解できる方が、どうかしているわ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【完結】王宮内は安定したらしいので、第二王子と国内の視察に行ってきます!(呼ばれたみたいなので、異世界でも生きてみます。の続編です)
まりぃべる
恋愛
異世界に呼ばれた佐川マリア。マリア・サガワとしてこの世界で生きて行く事に決め、第二王子殿下のルークウェスト=ヴァン=ケルンベルトと一緒に、この国をより良くしていきます!って、実際は2人で旅行がしたかっただけ?
呼ばれたみたいなので、異世界でも生きてみます。の続編です。
長くなりましたので、前作の続きでは無く新しくしました。前作でしおりを挟んでくれた方ありがとうございました。
読んでなくても分かるようにしております。けれど、分かりにくかったらすみません。
前作も読んで下さると嬉しいです。
まだまだ未熟なので、稚拙ではありますが、読んでいただけると嬉しいです。
☆前作で読者様よりご指摘が有りましたのでこちらにも記載しておきます。
主人公の年齢は設定としてありますが、読者様が主人公になれたらな(もしくは好きな年齢に当てはめて読めたら)という思いを込めて敢えて年齢を記載していません。
【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?
咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。
※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。
※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。
※騎士の上位が聖騎士という設定です。
※下品かも知れません。
※甘々(当社比)
※ご都合展開あり。
【本編完結】獣人国での異種族婚
しろねこ。
恋愛
獣人とひと言で言っても多種多様だ。
力の強いもの弱いもの、体の大きいもの小さいもの、違いがあり過ぎて皆が仲良く暮らすというのは難しい。
その中でも変わらず皆が持っているのは感情だ。喜怒哀楽、憎悪や猜疑心、無関心やら悪戯心……そして愛情。
人を好きになるのは幸せで、苦しい。
色々な愛情表現をお楽しみください。
ハピエン厨なので、こちらもそのような話となる予定。
ご都合主義、自己満、それと両片思いが大好きです(n*´ω`*n)
同名キャラにて色々なお話を書いておりますが、作品により立場、性格、関係性に多少の違いがあります。
他サイトさんでも投稿中!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる