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悪女と呼ばれた令嬢は、理不尽な婚約破棄の後、どこかへ消える。

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「君の悪女ぶりには溜め息しか出ないよ。呆れてしまう」

 良家の娘であるスウィーティー・アンバレラは、婚約者ハリーから悪女と呼ばれている。

 だが、彼女自身が何かやらかしたのではない。
 彼女を良く思わないハリーの周りの女性たちが、ハリーに対して、たくさんの嘘を吹き込んだのだ。

「婚約は破棄とさせてもらうよ」

 ハリーは淡々とそう告げ、スウィーティーの前から去った。


 ◆


 突然の婚約破棄。それもとても理不尽な。死んでしまいたいほど悲しみにくれていたスウィーティーの前に現れたのは、一羽の鳥。全身がコバルトブルーの小鳥であった。

「美しい鳥ね……。私もあなたのように……美しく……飛びたかった……」

 スウィーティーが呟いた瞬間。
 天から光が降り注ぎ、彼女を包み込んだ。

 直前まで人間の女性だったスウィーティーは青い鳥になっていた。

「よし、行こうか」
「えっ。鳥が喋って……って、えええ! 私も鳥になってる!」
「幸せな国へ行こう」
「そうね、素敵だわ。そうするわ」

 そうしてスウィーティーは青い鳥になって飛んでいった。


 ◆


 婚約破棄の後、スウィーティーが行方不明になったことを受け、ハリーの評判は地に堕ちていた。

 皆「婚約者に対して失礼なことをしたのだろう」と考えたのだ。

 ハリーの味方をするのは、すべての元凶である、ハリーに嘘を吹き込んだ者たちだけ。しかも、その女性たちの狙いはハリーの資産であって、彼自身ではない。

「ねぇハリー様、欲しいバッグがあるのぉ。買ってくれなぁい?」
「え。またかい」
「買ってくれたらぁ、みんなにぃ、ハリー様の素敵なところアピールしておくからぁ」
「仕方ないなぁ。分かったよ買おう」

 そんな風にして女性たちの言いなりにされたハリーは、三十代のうちに資産をほとんど失い、その後は貧しい生活をすることになってしまった。


◆終わり◆
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