1 / 2
前編
しおりを挟む
私の婚約者である彼アブレ・アブラモンは私より十ほど年上だ。
背は高くすらりとしていて、髪は少なめ、肌が剥き出しになったおでこは不自然なほどてかてかしている。
揚げ物が好きな私ではあるが、異常なほどてかったおでこは好きではない。
「急に呼んで悪いナ」
「いえ」
「実はぁ、伝えたいことがあっテナ」
「何でしょうか」
すると彼は口角を怖いくらい大きく持ち上げた。
「婚約サァ! 破棄するかラァ!」
彼は大きな声で言った。
その面に浮かぶ笑みは不気味としか言い様がないようなものだ。
「君みたいナ地味で美人でない女トォ生きていくなんてサァ! 生理的に無理なンダよぉ!」
だが、彼が婚約を破棄したいというのなら、私にとってはある意味幸運とも言える。こちらとしても彼と結ばれることを嬉しくは思っていなかったから。そういう意味では私たちは同じ気持ちを抱いているとも言えるのかもしれない。
「これ以上付き合っていられないヨォ!」
「そうですか。分かりました。では、さようなら」
こうしてアブレとの関係は終わった。
さてこれからどうしようか……。
背は高くすらりとしていて、髪は少なめ、肌が剥き出しになったおでこは不自然なほどてかてかしている。
揚げ物が好きな私ではあるが、異常なほどてかったおでこは好きではない。
「急に呼んで悪いナ」
「いえ」
「実はぁ、伝えたいことがあっテナ」
「何でしょうか」
すると彼は口角を怖いくらい大きく持ち上げた。
「婚約サァ! 破棄するかラァ!」
彼は大きな声で言った。
その面に浮かぶ笑みは不気味としか言い様がないようなものだ。
「君みたいナ地味で美人でない女トォ生きていくなんてサァ! 生理的に無理なンダよぉ!」
だが、彼が婚約を破棄したいというのなら、私にとってはある意味幸運とも言える。こちらとしても彼と結ばれることを嬉しくは思っていなかったから。そういう意味では私たちは同じ気持ちを抱いているとも言えるのかもしれない。
「これ以上付き合っていられないヨォ!」
「そうですか。分かりました。では、さようなら」
こうしてアブレとの関係は終わった。
さてこれからどうしようか……。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
あなたの嫉妬なんて知らない
abang
恋愛
「あなたが尻軽だとは知らなかったな」
「あ、そう。誰を信じるかは自由よ。じゃあ、終わりって事でいいのね」
「は……終わりだなんて、」
「こんな所にいらしたのね!お二人とも……皆探していましたよ……
"今日の主役が二人も抜けては"」
婚約パーティーの夜だった。
愛おしい恋人に「尻軽」だと身に覚えのない事で罵られたのは。
長年の恋人の言葉よりもあざとい秘書官の言葉を信頼する近頃の彼にどれほど傷ついただろう。
「はー、もういいわ」
皇帝という立場の恋人は、仕事仲間である優秀な秘書官を信頼していた。
彼女の言葉を信じて私に婚約パーティーの日に「尻軽」だと言った彼。
「公女様は、退屈な方ですね」そういって耳元で嘲笑った秘書官。
だから私は悪女になった。
「しつこいわね、見て分かんないの?貴方とは終わったの」
洗練された公女の所作に、恵まれた女性の魅力に、高貴な家門の名に、男女問わず皆が魅了される。
「貴女は、俺の婚約者だろう!」
「これを見ても?貴方の言ったとおり"尻軽"に振る舞ったのだけど、思いの他皆にモテているの。感謝するわ」
「ダリア!いい加減に……」
嫉妬に燃える皇帝はダリアの新しい恋を次々と邪魔して……?
【完結】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか?
曽根原ツタ
恋愛
「クラウス様、あなたのことがお嫌いなんですって」
エルヴィアナと婚約者クラウスの仲はうまくいっていない。
最近、王女が一緒にいるのをよく見かけるようになったと思えば、とあるパーティーで王女から婚約者の本音を告げ口され、別れを決意する。更に、彼女とクラウスは想い合っているとか。
(王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは身を引くとしましょう。クラウス様)
しかし。破局寸前で想定外の事件が起き、エルヴィアナのことが嫌いなはずの彼の態度が豹変して……?
小説家になろう様でも更新中
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした
カレイ
恋愛
「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」
それが両親の口癖でした。
ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。
ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。
ですから私決めました!
王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
[完結]本当にバカね
シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。
この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。
貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。
入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。
私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる