タナベ・バトラーズ レフィエリ編

四季

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2部

39.広場で訓練、しかし問題も……?

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 広場にて始まる訓練。
 それは、警備兵向けの戦闘訓練である。

 ただし参加者は有志。

「これより、訓練を始める!」

 この訓練の担当となったのはアウディーだった。

 ここのところ、レフィエリではあまりよろしくない話が流れている。近隣国から目をつけられているとか何とか。もしかしたら衝突があるかもしれない、そんな話が流れ、国民に不安の波が押し寄せているくらいだ。そんな事情もあり、今回、公開での訓練が行われることとなったのである。

 広場にびっしり大男。
 かなりもっさりとした絵面である。

 しかし良い点だってあるのだ。視覚的に力強く安心感がある、という点に関しては、他の何にも負けない。

 ちなみに、中にはやはり大男が好きという者はいて、そういった人たちは広場までわざわざやって来て訓練の様子を見守っている。そして、その中でも特に熱心な人は、応援フレーズが書かれたタオルやプレートを持ってきていた。カラフルなそれを持って訓練を応援している。

 訓練を応援というのも……少々不思議な話ではあるけれど。

「二人一組で既定の内容を行うように!」

 とはいえ、アウディーは内心、こんな訓練に意味はあるのだろうかと思っていた――すると。

「わー、暑苦しいなぁ。こんな訓練、意味あるのかなぁ」

 木の陰からふらりと現れたリベルに思っていたことをそのまま言葉にされてしまった。

「何でいるんだ、あんた」
「ちょっと見にきただけー」

 アウディーは一度溜め息をつき、それから提案する。

「参加していけよな」

 ぶっきらぼうにも思えるような調子で誘った。
 しかしリベルはその気はないようで。

「ええー? やだよ、あんな大男とやりあったら死んじゃうよー」

 笑顔でそんなことを言っている。

「嘘つけ、かわい子ぶりやがって」
「事実だよー」
「あんたが一番つええだろ!」
「あっはは、魔法がありならねー」

 その時、どっかん、と腹の奥に響くような音が鳴った。
 アウディーとリベルはほぼ同時に音がした方へ視線を向ける。

「てめぇ! 今のわざとやりやがったろ! ふざけんな!」
「やってねぇすよ!」
「なら何でこんなあぶねーとこに飛び回し蹴りとかするんだ!」
「うっかりっすぅ」
「やっぱわざとだな!? こいつ!!」

 二人一組での訓練なのだが、たくさんある組のうちの一組が喧嘩に発展していた。ひげが濃い男が若めの男を付近にあった箱にぶつかるように蹴り飛ばしていたのだ。

「ぜってぇ許さねぇ!!」
「はぁ? 何カッカしてんすか? 馬鹿老人すか?」

 若めの男が煽るようなことを言ってしまったためにひげの男の怒りはさらに加速する。

「ぐぉらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 感情が高まりきったひげの男は箱近くに中腰でいる若めの男へ殴りかかろうとする――が、リベルが飛ばした光弾によって両者が引き離される。

「ねーぇ、お兄さん、駄目だよ? 喧嘩しちゃ」

 リベルは笑顔のままひげが濃い男の前へと移動した。

「な……なんだてめぇ」
「痛かったねー、胸でしょ? 大丈夫?」
「何なんだ……」
「落ち着いてねー?」

 だがひげ面の男は止まらなかった。
 拳を振り上げ殴りかかろうとする。

「いいからのけよ! 話してんのはてめぇじゃね――」

 しかし、次の瞬間には、ひげ面の男は地面に叩きつけられていた。

「えっ……」

 本人は何が起きたのか分からずにいる。
 だが周囲はしっかりと見ていた。
 激怒に溺れた男がリベルに投げ落とされるところを。

「ぎゃあぎゃあ喚いてんじゃねえよ、おっさん」

 リベルに小さくも圧のある声をかけられたひげ面の男はしゅんとしてしまう。
 思わぬ言葉遣いに周囲の空気が凍る。
 しかし彼自身そのことを察したようで。

「なーんてね! あはは、らしくないことしちゃったかな? でもでも、喧嘩は駄目だよー。じゃ、僕はこれで!」

 手を振り、広場から出ていく。
 その背中を見送るアウディーの脳内には、何しに来たんだ、ばかりが渦巻いていた。

「何しに来たんだ……」

 しかも、思うのみならず、自然と口から出してしまっていた。
 ただ、リベルのおかげで喧嘩が何とか収まったことは事実であり、その点に関してはアウディーも感謝はしていた。

「訓練を続ける! 訓練は訓練なので、喧嘩は禁止! 何か問題が発生した場合には速やかにこちらへ伝えるように!」

 アウディーは改めて皆への言葉を放つ。

 そして訓練は再開される。
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