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27.まったくもって成果なし

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 自室内にいることを求められているアウディーのもとへレフィエリシナがやって来た。

「調子はどうかしら、アウディー」

 部屋の主である扉を開けるとすぐそこにレフィエリシナが立っていた。
 しかし優しさに満ちた表情ではない。

「あ……れ、レフィエリシナ、様」

 気まずさに上下の唇を近づけるアウディー。

「少しは反省できた?」
「できました」

 今はもう夜、外は暗い。そして、人通りもあまりない。神殿内は一応常に警備されているため安全ではあるのだが、見た目はどことなく怪しげだ。そう感じさせるのは、恐らく、通路などの多くの部分が無機質な素材でできているからだろう。

「もうあのようなことをしないように、良いですね?」
「……はい」

 アウディーは叱られた子どものように俯き気味だった。
 大きな身体の持ち主なのに小さくなっている。

「では明日午後より外へ出ることを認めます」
「ありがとうございます……!」
「リベルからそのようにしてほしいとの話があったからよ、感謝は彼にしなさい」
「そ、そうでしたか……」

 そこで沈黙が訪れる。
 どちらも言葉を発さず、無の時間だけが流れてゆく。

「あ、そうでした、レフィエリシナ様にお聞きしたいことが……」

 やがて口を開いたのはアウディー。
 本当は直接聞いてみるなんて気が進まない――それでもリベルから頼まれ引き受けてしまったから今さらなかったことにもできず、思いきってここで問いを放ってみることにしたのである。

「レフィエリシナ様に隠し事が、あると……聞きまして、それで……隠していることとは何なのです……?」

 レフィエリシナの顔面からすっと熱が引く。
 そして恐ろしいほど冷ややかな顔つきになる。

「――リベルね」

 ガラス細工のような彼女の唇を通り過ぎて流れ出る言葉。

「彼が問わせているのでしょう?」

 アウディーは気まずそうに視線を逸らす。

「皆揃って暴こうとして――何なのかしら」
「あ、いや、俺はただ……何か、レフィエリシナ様がお悩みだったらと、不安で……」

 うにうにしてしまうアウディー。
 それに対し、レフィエリシナは口角を僅かに持ち上げて笑みを浮かべる。

「残念だけれど、わたしには隠し事などないわ」

 目つきはどこか冷ややかなままで。けれども口もとには笑みが浮かんでいる。それこそ、絶対に暴かせない、とでも言っているかのような笑み。絶対的な自信を窺わせるような色。

「嘘だと思うかしら」
「……いえ」
「そうよね?」
「ああ、はい。もちろん。俺はレフィエリシナ様を信じています」

 少し間を空けて、けど、と続ける。

「もし、本当に、どうしようもなくなったら……その時は誰かに頼ってくださいよ」

 アウディーは勇気を振り絞るように声を発している。
 大柄な肉体に似合わない繊細さである。

「レフィエリシナ様が辛い想いをなさるようなことがあってはなりませんから……そんなことになっては妻に顔向けできません……」

 するとレフィエリシナは顔を軽く右へ傾けて微笑む。

「そうですね、ありがとうアウディー」

 その後レフィエリシナはアウディーの前から去った。

 話は一見綺麗にまとまったかのようだが――肝心なところはまったく聞き出せなかった。
 すべて済んでから、一人がっかりするアウディーだった。
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