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婚約破棄、指輪の思い出も過去のものとなり。

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 今日、二人の思い出の場所であるキリタタ崖にて、婚約者から婚約破棄を告げられた。

 彼はもう私と生きる気はないらしい。
 迷いも躊躇いもなく、彼は、はっきりとそう口にした。

 こうして私たちの関係は終わる。

 帰り道。
 涙をこぼしながら、彼との過去の記憶を振り返る。

 過去の記憶。それは、ここ、キリタタ崖での彼との思い出だ。かつて、彼は、私をこのキリタタ崖に呼び出した。で、プロポーズし、指輪を贈ってくれたのだ。だからこそ、この場所には特別な想いがあり。この地の果てまで見えそうなキリタタ崖は、良い意味で思い出の場所だった。

 彼は酷い人だ。

 終焉の地として、なぜわざわざここを選んだのだろう。
 彼とてここが始まりの場所だと知っているだろうに。

 キリタタ崖の良い記憶は変わってしまった。
 書き換えられてしまった。
 ここから見る美しい自然も、今はもう、純粋には見つめられない。

 指輪の思い出も過去のものとなり。

 いつの日かの幸福は、涙に溶けて、流れ去った。


◆終わり◆
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