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中編2

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「そして三つ目は『納涼風鈴太鼓玉』じゃ」

 僕は暫し固まった。
 聞いたことのない単語が出てきたからである。
 納涼、風鈴、太鼓、玉。それぞれの単語自体は聞いたことがあるし意味も理解できる。しかし、これらが繋がった単語を聞くのは今日が初めてだ。

「どんなものですか?」

 そこまで興味はないが一応尋ねてみた。本当に一応。
 これは『納涼風鈴太鼓玉』などという名称からして、いかにもたいしたことはなさそうである。しかしそれでも秘宝の一つだ。何かしらの力は秘めているのだろう。そうでなくては秘宝とは言えない。

「『納涼風鈴太鼓玉』はな、手のひらで触れるとひんやりするそうじゃよ」
「意味あるんですか、それ……」
「夏場には人気者らしいな。逆に冬場は、誰にも愛されず、ひたすら放置だとか」

 やはりたいしたことはないようだ。正直少しショックである。秘宝と呼ばれるものがここまで能無しとは。

「なるほど。で、それはどこで手に入れられるんですか?」

 僕が質問すると、巫女は一度大きく背伸びをした。続けて大あくびをし、それから答える。

「三丁目の一番北側にあるアパートの二○八号室に住む能登島之川という者がいるのじゃが」

 聞いたことがない。

 僕の実家は三丁目だ。それも丁の中で北寄りの位置なので、巫女が言うアパートは大体予想がつく。壁が吹き出物のように膨らんでいて、そろそろ塗り替えした方がよさそうな、オンボロアパート。恐らくあれだろう。

 しかし能登島之川なんて名字は聞いたことがないと思う。
 ここまで珍しい名字なら覚えていそうなものだが、まったく記憶に残っていない。謎だ。

「その奥さんが十七歳八ヶ月になった日に告白した青年の妹が、小さな頃公園でよく見かけたカブトムシの被り物を被ったサラリーマン。彼の母親が初めて遊園地デートへ行った日に、園内でハンカチを拾ってあげた男性と同じ部署だった、志乃ちゃんという女性社員の実家の」

 な、長い。
 少し混乱してきた。

「ベランダに置かれた植木鉢に、百二年に一度、三分だけ現れる。それが『納涼風鈴太鼓玉』じゃ」

 長文を言いきり、すっきりした表情の巫女。だが僕からすれば何のこっちゃらである。
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