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一番の友と思っていた彼女に婚約者を奪われてしまいました。……けれども、私はあの時捨てられていて良かったのかもしれません。
しおりを挟む「君のことを愛せなくなった。だから、君との婚約は破棄する」
そう告げる婚約者アインの隣にいるのは――私が親友だと思っていた女性ルルカだ。
私はルルカを一番の友と思っていた。
だから彼女だけにはアインとのことも色々話していた。
それが間違いだったのか……。
「僕は彼女を、ルルカを、愛してしまったんだ」
「ごめんね~?」
友人だからと信じるべきではなかった。
重要なことを話すべきではなかった。
「はじめは君を愛する気でいた。でも、ルルカに、運命の人に巡り会ってしまったんだ。だからもう君を愛せない」
「とる気なんてなかったの~、でも少し喋ってたら愛されちゃって~」
「しっかし可愛いなぁ、ルルカはぁ」
「いやぁ~やめてよ、今はぁ~」
いちゃつきを見せられながら、私は婚約者を失った。
◆
あれから一年、アインとルルカはというと結婚したが離婚したそうだ。
結婚した直後にアインに別の女がいることが発覚したらしい。
しかもその女の腹にはアインとの子がいたらしくて。
それによってルルカは精神が崩壊し、アインを森に呼び出して包丁で刺した後に逃走――だが数日後に治安維持組織に拘束され、人を刺した罪で牢に入れられたそうだ。
一方、アインはというと、一命は取り留めたものの、その一件から女性が怖くなってしまったそうで。
女性が相手だと近づくことも触れることも喋ることもできない状態となったそうだ。
私?
私は結婚した、伯父の紹介で知り合った人と。
今はちょこちょこ家事をしながらのんびりと生活している。
毎日穏やかそのもので。
大きな刺激はないけれど、ここには穏やかという幸福がある。
あのままアインと結婚して厄介事に巻き込まれなくて良かった――今は強くそう思う。
だってそうだろう?
もしかしたら私がルルカみたいになっていたかもしれないのだから。
それを思えば。
私が今、この穏やかな道を歩めているのは、奇跡みたいなものだ。
◆終わり◆
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