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後編
しおりを挟む「そうですか分かりました、じゃあ私はこれで。さようなら」
「待て! 泣いて謝るなら許すかちょっとは考えてやっても……」
「何ですかそれ、よく分かりません。なんにせよ、もう私は去りますので。ではさようなら」
ローゼングと関わるのは面倒臭い。とはいえこちらから関係をやめにしたいなんて言えないし。それで困っていた。だから、彼が望んで別れられるのなら、ある意味好都合だ。それはある種の解放である。
「ま、待てよ! いいのか!? 婚約破棄だぞ、いいのか! 泣いて謝ればまだチャンスはゼロではないんだぞ!?」
彼は何やら言っていたけれど、私は無視してその場から去った。
◆
あの後親戚のおじさんからの紹介で良い縁を得られた私は、愛おしいと感じる人と結ばれることができた。
夫となった彼は、かえる顔でおっとりしている愛らしい人だ。
いつも寛容な心で接してくれる。
だから好きだ。
それに、一緒に過ごしているだけでなぜかとても癒される。
「ケーキ買ってきたよ~」
「え! 本当ですか!?」
「うんうん~、三つくらい~。どれでも好きなの食べてよ~」
ちなみにローゼングはというと、あの後良い女性が見つからずショックを受けて寝込んでしまったそうで――心の病にかかってしまい、あの婚約破棄から数年が経った今でも療養を続けているそうだ。
通常であれば「少しでも状態が改善するといいな」と思うところだが。
申し訳ないけれど、ローゼングに関してだけはそうは思えない。
◆終わり◆
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