2 / 3
2話
しおりを挟む◆
「ただいま~」
「お帰りなさい」
夜遅く、ウィルクスはいつもと変わらない様子で二人の家へ帰ってきた。
「ウィルクス、ちょっといい?」
「ん? 何?」
「今日さ、帰り、女性と会っていたでしょう」
「え」
一瞬顔が強張った。
すぐに笑みを取り戻したけれど。
彼、どうやら、心当たりがあるらしい。
「あ、ああ、彼女は……勘違いしないで、ただの友人だよ。偶然出会ってさ、少しだけ喋ってたんだ」
「でも宿泊所に行ったのでしょう? それって友人と言えるのかしら」
「そんなことしてないよ!」
「私聞いたのよ、喋っているのを」
「そ、そうなの……? でも、勘違いだよ! そんな感じじゃなかったでしょ!?」
ウィルクスは慌てているようだ。
「残念ながら、そんな感じに見えたわ」
ここははっきり言わせてもらう。
「最近様子がおかしいと思っていたけれど……そういうことだったのね」
そこまで言うと。
「し、仕方ないだろ! 僕だってたまには癒やされたいんだから!」
急にキレ始めた。
「仕事に家庭にで疲れてるんだ! ちょっとくらいいいじゃないか、安らぎをよそで求めたって! べつに子ども作るわけじゃないし! ちょっと遊ぶだけだし!」
もはやこれまでか。
「いいわ、じゃあ、離婚としましょう」
「えっ」
「離婚する、と言っているの」
「な、何で!?」
「癒やしを求めたいくらい家庭が嫌なのでしょう? なら終わらせてあげる。貴方だってその方が良いのでしょう」
「ち、ちちち、違うよ! それは違う!」
「もう遅いわ」
「待って! 違うよ! 違うんだ! そういう意味じゃないっ」
急に慌て出すウィルクス。
どうやら離婚は嫌みたいだ。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
死に戻るなら一時間前に
みねバイヤーン
恋愛
「ああ、これが走馬灯なのね」
階段から落ちていく一瞬で、ルルは十七年の人生を思い出した。侯爵家に生まれ、なに不自由なく育ち、幸せな日々だった。素敵な婚約者と出会い、これからが楽しみだった矢先に。
「神様、もし死に戻るなら、一時間前がいいです」
ダメ元で祈ってみる。もし、ルルが主人公特性を持っているなら、死に戻れるかもしれない。
ピカッと光って、一瞬目をつぶって、また目を開くと、目の前には笑顔の婚約者クラウス第三王子。
「クラウス様、聞いてください。私、一時間後に殺されます」
一時間前に死に戻ったルルは、クラウスと共に犯人を追い詰める──。
くだらない冤罪で投獄されたので呪うことにしました。
音爽(ネソウ)
恋愛
<良くある話ですが凄くバカで下品な話です。>
婚約者と友人に裏切られた、伯爵令嬢。
冤罪で投獄された恨みを晴らしましょう。
「ごめんなさい?私がかけた呪いはとけませんよ」
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
皇太女の暇つぶし
Ruhuna
恋愛
ウスタリ王国の学園に留学しているルミリア・ターセンは1年間の留学が終わる卒園パーティーの場で見に覚えのない罪でウスタリ王国第2王子のマルク・ウスタリに婚約破棄を言いつけられた。
「貴方とは婚約した覚えはありませんが?」
*よくある婚約破棄ものです
*初投稿なので寛容な気持ちで見ていただけると嬉しいです
元婚約者が「俺の子を育てろ」と言って来たのでボコろうと思います。
音爽(ネソウ)
恋愛
結婚間近だった彼が使用人の娘と駆け落ちをしてしまった、私は傷心の日々を過ごしたがなんとか前を向くことに。しかし、裏切り行為から3年が経ったある日……
*体調を崩し絶不調につきリハビリ作品です。長い目でお読みいただければ幸いです。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました
四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。
だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!
失礼な人のことはさすがに許せません
四季
恋愛
「パッとしないなぁ、ははは」
それが、初めて会った時に婚約者が発した言葉。
ただ、婚約者アルタイルの失礼な発言はそれだけでは終わらず、まだまだ続いていって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる