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1話

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 これは記憶だ。

 ――遠き日、幼馴染みとの。

「ねぇコルク! この花、知ってる?」
「何それ」

 私エリーと近所の男子コルクは幼馴染みだった。

「これね! コウバシソウっていうんだって!」
「へぇ……そうなんだ、知らなかった」
「じいちゃんが教えてくれたの!」
「おじいさんが?」
「そうそう! うちのじいちゃん草とか好きでさー。結構詳しくて教えてくれるんだよねー」

 家が大変近かったこともありずっと二人で遊んでいた。

「良い匂いがするね」
「そういうものみたい」
「へぇ、凄いね。世の中にはいろんな植物があるんだなぁ」

 これも数多ある楽しい記憶のうちの一つ。

 だがこの時はまだ知らなかった。

 二人に忍び寄る影。
 別れという絶望がすぐ傍にまで迫ってきていることを。

 ――そう、この翌日、コルクは他の町へ引っ越してゆくこととなってしまったのだった。

 あの日はとにかく辛くて泣いてばかりだった。どうやっても涙をとめられなかったのだ。その時の私にできることといえばただ悲しみを涙として地に落とすことだけ。それ以上のことなど頑張ろうともできなかったのだ。

 でも、別れしな、彼と一つの約束をした。

「大人になったらきっといつかまたこの丘で会おうね!」

 けれどそんな約束は叶うはずがないと思っていた。

 だってそうだろう?
 子どもの約束なんて守られるはずもないもの。
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