上 下
1 / 2

前編

しおりを挟む

「お前ってさぁ~、ほんとないよな~、女として終わってるよな~」

 黒髪の婚約者アベルに呼び出されたと思ったら、いきなり心ない言葉をかけられてしまった。

「ださいしさ、可愛くなろうとしないし、そう振る舞いもしないし。みっともねーと思わねーの? 俺優しいからここまで付き合ってきてやっただけだし、普通の男が相手だったらぜってーもうとっくに捨てられてる。間違いねーよ、そこは。なぁ分かるか?」

 でも彼はいつもこんな感じだ、私のことを平然と悪く言う。

 彼は他人を傷つけることを何とも思わない人間なのだ。

「あの、それで、用とは……?」
「げ~っ、もう聞いちゃう? それ? 自分で聞いちゃう~?」
「何でしょうか……」
「ま、仕方ねえか。なら言ってやるよ。俺! お前との婚約、破棄することにしたから!」

 ああ、そうか、やっぱり。

 納得できた。
 むしろありがたかった、はっきりそう言ってもらえて。

「それが話ってやつよ!」
「そうですか、分かりました」
「はぁ~? 何だその態度、可愛くねえなあ」
「婚約破棄ですよね」
「ああそうだよ~?」
「では関係はここまでということで、私は去りますね。失礼します」

 一礼して去ろうとしたら。

「ったく、マジ可愛くねーなゴミ」

 最後の最後にそんなことを言われた。

 ……どこまでも酷い人。

 別れしなくらい心ない言葉は呑み込んでほしかった。
 何も最後まで敢えて傷つけようとしなくても良かっただろうに。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

酷い人生だった……と思いつつ死を選んだ瞬間に不思議な力を手に入れたので、その力を使って復讐することにしました。

四季
恋愛
酷い人生だった……と思いつつ死を選んだ瞬間に不思議な力を手に入れたので、その力を使って復讐することにしました。

暁のカトレア

四季
恋愛
レヴィアス帝国に謎の生物 "化け物" が出現するようになり約十年。 平凡な毎日を送っていた齢十八の少女 マレイ・チャーム・カトレアは、一人の青年と出会う。 そして、それきっかけに、彼女の人生は大きく動き出すのだった。 ※ファンタジー・バトル要素がやや多めです。 ※2018.4.7~2018.9.5 執筆

山猿の皇妃

夏菜しの
恋愛
 ライヘンベルガー王国の第三王女レティーツィアは、成人する十六歳の誕生日と共に、隣国イスターツ帝国へ和平条約の品として贈られた。  祖国に聞こえてくるイスターツ帝国の噂は、〝山猿〟と言った悪いモノばかり。それでもレティーツィアは自らに課せられた役目だからと山を越えて隣国へ向かった。  嫁いできたレティーツィアを見た皇帝にして夫のヘクトールは、子供に興味は無いと一蹴する。これはライヘンベルガー王国とイスターツ帝国の成人とみなす年の違いの問題だから、レティーツィアにはどうすることも出来ない。  子供だと言われてヘクトールに相手にされないレティーツィアは、妻の責務を果たしていないと言われて次第に冷遇されていく。  一方、レティーツィアには祖国から、将来的に帝国を傀儡とする策が授けられていた。そのためには皇帝ヘクトールの子を産む必要があるのだが……  それが出来たらこんな待遇になってないわ! と彼女は憤慨する。  帝国で居場所をなくし、祖国にも帰ることも出来ない。  行き場を失ったレティーツィアの孤独な戦いが静かに始まる。 ※恋愛成分は低め、内容はややダークです

真実の愛のお相手に婚約者を譲ろうと頑張った結果、毎回のように戻ってくる件

さこの
恋愛
好きな人ができたんだ。 婚約者であるフェリクスが切々と語ってくる。 でもどうすれば振り向いてくれるか分からないんだ。なぜかいつも相談を受ける プレゼントを渡したいんだ。 それならばこちらはいかがですか?王都で流行っていますよ? 甘いものが好きらしいんだよ それならば次回のお茶会で、こちらのスイーツをお出ししましょう。

虐げられた皇女は父の愛人とその娘に復讐する

ましゅぺちーの
恋愛
大陸一の大国ライドーン帝国の皇帝が崩御した。 その皇帝の子供である第一皇女シャーロットはこの時をずっと待っていた。 シャーロットの母親は今は亡き皇后陛下で皇帝とは政略結婚だった。 皇帝は皇后を蔑ろにし身分の低い女を愛妾として囲った。 やがてその愛妾には子供が生まれた。それが第二皇女プリシラである。 愛妾は皇帝の寵愛を笠に着てやりたい放題でプリシラも両親に甘やかされて我儘に育った。 今までは皇帝の寵愛があったからこそ好きにさせていたが、これからはそうもいかない。 シャーロットは愛妾とプリシラに対する復讐を実行に移す― 一部タイトルを変更しました。

婚約者の行動が何やら不自然なので……。

四季
恋愛
最近、同居している婚約者フェルーデの行動がおかしい。 なので調査してみることにした。

夫で王子の彼には想い人がいるようですので、私は失礼します

四季
恋愛
十五の頃に特別な力を持っていると告げられた平凡な女性のロテ・フレールは、王子と結婚することとなったのだけれど……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...