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前編
しおりを挟む婚約者であり王子でもある青年オリエスタと共に生きてゆくつもりだった――今日この日までは。
「悪いがお前とはやめにする! 婚約は破棄だ!」
今日、オリエスタからそう告げられた。
しかも二人きりなどではない。
無関係な人もいるティーパーティー会場にて。
「お、お待ちください。どうしてですか? どうしていきなり……」
「実は聞いてしまったのだ――お前が裏で俺の悪口を言っている、と」
しかも心当たりにないことを言われてしまって。
「え!?」
脳がはじけとんでしまったかのよう。
まともに働かない。
衝撃があまりに大き過ぎて。
「驚いているということは、そうだということだな?」
「まさか! あり得ません! 誰が言ったのですか、そのような嘘を」
「事実、なのだろう?」
「いいえ、絶対に、事実などではありません」
「そうか。認めないか。ま、いい。そういうことだ、婚約は破棄させてもらう。ではな、さらば」
こうして私は城から追い出された。
多分、オリエスタは、私が悪口を言っていたとか何とかの話にはそこまで興味がないのだろう。それより、婚約破棄することの方が重要なのだろう。だから、私が悪口を本当に言っていようが言っていまいがそれほど興味はなく、婚約を破棄できさえすればそれで良かったのだろうと思われる。
しかし……まさかこんなことになってしまうとは。
想像していなかった。
王子に捨てられる未来なんて。
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