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13話「許可を貰いに」
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私は両親のところへ向かう。
二人が過ごしている部屋にいきなり訪問したものだから、かなり驚いているようだった。
それはそうだろう。私は二人の部屋に行くことは少ない。よほど用事がある時か招かれた時しかその部屋には入らないのだ。だから、二人が驚いた顔をするのも仕方ないことではある。
「どうしたの、リリアン。そんなに慌てて」
突如入室した私に向けて一番に声を発したのは母親。
「急にごめん。許可を取りたいことがあるの、今でも構わない?」
「えぇ、構わないわよ」
ソファに腰掛けてお茶を飲んでいた母親は、体の前面を私の方へ向け、僅かに笑みを浮かべてくれた。
個人的には、その嫌々な感じのない接し方がとても嬉しい。
「フルービルさんにプロポーズされたの」
私がそう述べた瞬間、母親は物凄い勢いでソファから立ち上がった。
「プロポーズ!?」
彼女の立ち上がり方は凄まじかった。信じられないくらい早く、また、ソファをぐらつかせるほどの乱雑さがあったのだ。急に立ち上がって椅子ががたつくならまだ分かるが、ソファをぐらつかせるというのはかなり高度なテクニックと言えるだろう。
「その話は本当なの!? リリアン!!」
「本当」
「えぇーっ! ウソ! 信じられないわっ」
母親は両手の手のひらをそれぞれ自分の頬に当て、顔面をほんのり赤く染めながら、その場でくるくると回転する。その様を目にした父親は少し引いたような顔をしていた。
「で、どうなの? どうなるの? 受けるの?」
回転が終わると、今度は凄まじい勢いで迫られる。
「え……あ、う、うん……。できれば……」
「いいじゃない!」
「許可を貰おうと思って、伝えにきたの」
「そうだったのね! 素晴らしいわ! 幸せになるのよっ」
許可してもらえるだろうとは思っていたが、ここまで気持ちよく認めてもらえるとは思っていなかった。母親がこんなテンションになることも、欠片ほども想定していなかった。
「あなたも認めるわよねっ!?」
「あ、あぁ。もちろん」
幸いだったのは、両親とフルービルが以前から知り合いだったこと。
「リリアン。今度こそ幸せになってくれ」
こうして、私とフルービルはその関係を認められた。
もちろん問題がなかったわけではない。フルービルは家庭という意味では複雑な事情を抱えているからだ。けれどもそれは私たちにとっては小さなこと。私たちの縁は些細なことで切れるほど弱いものではなかった。
婚約後も、私は実家で暮らし、フルービルは掃除の仕事を続けていた。
そして、ついに完全な形で結ばれる。
フルービルは家らしい家を所有していないので我が家に住むこととなった。
◆終わり◆
二人が過ごしている部屋にいきなり訪問したものだから、かなり驚いているようだった。
それはそうだろう。私は二人の部屋に行くことは少ない。よほど用事がある時か招かれた時しかその部屋には入らないのだ。だから、二人が驚いた顔をするのも仕方ないことではある。
「どうしたの、リリアン。そんなに慌てて」
突如入室した私に向けて一番に声を発したのは母親。
「急にごめん。許可を取りたいことがあるの、今でも構わない?」
「えぇ、構わないわよ」
ソファに腰掛けてお茶を飲んでいた母親は、体の前面を私の方へ向け、僅かに笑みを浮かべてくれた。
個人的には、その嫌々な感じのない接し方がとても嬉しい。
「フルービルさんにプロポーズされたの」
私がそう述べた瞬間、母親は物凄い勢いでソファから立ち上がった。
「プロポーズ!?」
彼女の立ち上がり方は凄まじかった。信じられないくらい早く、また、ソファをぐらつかせるほどの乱雑さがあったのだ。急に立ち上がって椅子ががたつくならまだ分かるが、ソファをぐらつかせるというのはかなり高度なテクニックと言えるだろう。
「その話は本当なの!? リリアン!!」
「本当」
「えぇーっ! ウソ! 信じられないわっ」
母親は両手の手のひらをそれぞれ自分の頬に当て、顔面をほんのり赤く染めながら、その場でくるくると回転する。その様を目にした父親は少し引いたような顔をしていた。
「で、どうなの? どうなるの? 受けるの?」
回転が終わると、今度は凄まじい勢いで迫られる。
「え……あ、う、うん……。できれば……」
「いいじゃない!」
「許可を貰おうと思って、伝えにきたの」
「そうだったのね! 素晴らしいわ! 幸せになるのよっ」
許可してもらえるだろうとは思っていたが、ここまで気持ちよく認めてもらえるとは思っていなかった。母親がこんなテンションになることも、欠片ほども想定していなかった。
「あなたも認めるわよねっ!?」
「あ、あぁ。もちろん」
幸いだったのは、両親とフルービルが以前から知り合いだったこと。
「リリアン。今度こそ幸せになってくれ」
こうして、私とフルービルはその関係を認められた。
もちろん問題がなかったわけではない。フルービルは家庭という意味では複雑な事情を抱えているからだ。けれどもそれは私たちにとっては小さなこと。私たちの縁は些細なことで切れるほど弱いものではなかった。
婚約後も、私は実家で暮らし、フルービルは掃除の仕事を続けていた。
そして、ついに完全な形で結ばれる。
フルービルは家らしい家を所有していないので我が家に住むこととなった。
◆終わり◆
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