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1話「婚約破棄される乙女」

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「レイビア・オルトック! 貴様との婚約は破棄とする!」

 その日、レイビアは告げられた。

 婚約者で王子でもある青年ガットソーより、関係の解消を。

「貴様、裏で俺の悪口を言い広めていたそうじゃないか」

 レイビア・オルトック、彼女は父親の代で発展したオルトック家の一人娘だ。それゆえ彼女のことを良く思わない者も多い。特に王子の周囲、権力を求めてうごめいている者たちの中には、彼女とその家を悪く思っている者も多数存在するのだ。

「え……それは一体、どういう話なのですか……?」

 婚約破棄の原因となる嘘をついた者たちというのは、そういった者たち。
 つまり、レイビアとオルトック家を貶めたいという意思を持っている人間たちなのだ。

 もちろん、レイビアは何もしていない。

 ただ、嘘によって、今まさに王子の婚約者という位置から蹴落とされようとしているだけのことだ。

「言葉のままだ! 婚約者である俺の悪口を言い広めていたことはもう知っている、今さらとぼけるな」
「心当たりがありません……」
「だが聞いたという者が複数いるのだぞ!」
「ですが、本当に、心当たりがないのです」

 レイビアは困り果てていた。
 心当たりが一切ないことで責められ、どうすれば良いものか分からなくなってしまったのだ。

「忘れたふりをするか! まぁいい、そこまで反省できないというのなら、婚約破棄に加えてさらなる罰を与えることとしよう」
「反省も何も心当たりがないのです……!」
「黙れッ!!」

 叫ばれて、黙ってしまうレイビア。

「そうだ、ちょうどいい、貴様は西の塔へ送ってやる」

 西の塔、そこには魔物たちが暮らす地域がある。
 人々は誰も近づかない魔境。
 怪物の姿をした魔王が支配すると言われている、皆に嫌われた地。

「貴様は心が怪物だ、魔物たちと暮らす方が合っているだろう」
「そんな……待ってください、私……」

 声を震わせるレイビアを見て、ガットソーは見下すように笑った。

「ふん、怪物どもにせいぜい痛い目に遭わされるがいい」

 こうしてレイビアは婚約破棄され、また、魔の地区である西の塔へと強制的に送られることとなってしまったのだった。

「レイビア、ついに追放になったみたいねぇ」
「ちょっと可哀想な気もするけど……でも自業自得よね、あんな成り上がりの家の出のくせに王子と結ばれようなんてするから」
「身の程を知れ! ってやつよね」
「うふふ、ついにやられちゃったみたいですわね~。ま、自業自得だわね~。いつかこうなるって思っていたわ~」

 皆にくすくす笑われながら、レイビアは強制的に城から追い出された。
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