上 下
1 / 3

1話

しおりを挟む

 婚約者アドレ・イフィス・ゴッデレッサールス・アイフォムは口臭が酷い。

 しかも自覚がない。
 だから厄介だ。

 内容が内容だけに気づいている周囲の人間が指摘することも難しいし。

「それでさ、俺、モテてて~うけるだろ? 俺、前回の時もモテモテだったのにさぁ。リィナ、そんな人気爆発な俺と結婚できるんだから感謝しろよ~? なんちゃて! けど、さ。お前、俺と結婚できて幸せ者だよな!」

 アドレは自分を人気者だと思っている。
 しかも異性からの人気という意味で。
 それは単なる勝手な思い込み――なのだが、彼は純粋にそう信じているようなのでこれまた指摘しづらい。

 でも、これ以上彼と一緒にはいたくない。

 だってあまりにも臭いから。

 失礼なことを言っているかもしれない。けれど匂いというのはどうしても気になりだすと気になってしまうものなのだ。特に口の匂いとなればなおさら。喋っていない時でもある程度近い距離で接していればそれはこちらに襲いかかってくる。それが長時間続いた日には、もはや拷問でしかない。

 どうにか彼から離れる方法はないだろうか?

 そんな風に考え悩みを抱えていたある日――私はアドレが浮気していることを知った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

姉の魔力を自分のものであるかのように利用して王子と婚約した妹は嘘がばれたために婚約破棄されそれによって壊れてしまいました。

四季
恋愛
姉の魔力を自分のものであるかのように利用して王子と婚約した妹は嘘がばれたために婚約破棄されそれによって壊れてしまいました。 ……ま、自業自得ですけどね。

泣いてばかりだった私は母の一言によって泣けなくなったのですが……? ~色々あって人気者になれて、さらに、幸せにもなれました~

四季
恋愛
泣いてばかりだった私は母の一言によって泣けなくなったのですが……?

執着はありません。婚約者の座、譲りますよ

四季
恋愛
ニーナには婚約者がいる。 カインという青年である。 彼は周囲の人たちにはとても親切だが、実は裏の顔があって……。

やたらと見下してくる厄介な義妹がいましたが、私が王子から求婚されていることを知ると壊れてしまったようです。

四季
恋愛
やたらと見下してくる厄介な義妹がいましたが……。

良い家の出の婚約者ができて勘違いし私をやたらと見下してきていた姉がいましたが、彼女は捨てられた途端自滅してゆきました。

四季
恋愛
良い家の出の婚約者ができて勘違いし私をやたらと見下してきていた姉がいましたが……

処理中です...