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1話
しおりを挟む婚約者アドレ・イフィス・ゴッデレッサールス・アイフォムは口臭が酷い。
しかも自覚がない。
だから厄介だ。
内容が内容だけに気づいている周囲の人間が指摘することも難しいし。
「それでさ、俺、モテてて~うけるだろ? 俺、前回の時もモテモテだったのにさぁ。リィナ、そんな人気爆発な俺と結婚できるんだから感謝しろよ~? なんちゃて! けど、さ。お前、俺と結婚できて幸せ者だよな!」
アドレは自分を人気者だと思っている。
しかも異性からの人気という意味で。
それは単なる勝手な思い込み――なのだが、彼は純粋にそう信じているようなのでこれまた指摘しづらい。
でも、これ以上彼と一緒にはいたくない。
だってあまりにも臭いから。
失礼なことを言っているかもしれない。けれど匂いというのはどうしても気になりだすと気になってしまうものなのだ。特に口の匂いとなればなおさら。喋っていない時でもある程度近い距離で接していればそれはこちらに襲いかかってくる。それが長時間続いた日には、もはや拷問でしかない。
どうにか彼から離れる方法はないだろうか?
そんな風に考え悩みを抱えていたある日――私はアドレが浮気していることを知った。
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