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前編
しおりを挟む「お前との婚約は破棄する!」
告げられた言葉に、思考が停止してしまう。
背筋が冷たくなるような感覚。
唇からは体温が消える。
一瞬にしてお化けにでもなってしまったかのような得体のしれない感覚に全身が支配されて。
「ま、もともと一応婚約しておいてただけだったしな。もっと良い女性が出てくるまでの繋ぎ? まぁそういう感じだったからさ、正直どうでも良かったんだよお前は。その程度の女だってこと。はなからまともに将来を誓い合おうなんて思ってたわけじゃないしな」
目の前の彼アンデストロースはぺらぺらと喋る。
出てくるのは失礼な言葉ばかりだ。
「何その顔? もしかして本気で結婚するって思ってた系? あー、典型的な馬鹿だなー。お前みたいなやつに本気になると思ってたってことか? あり得ねぇあり得ねぇ、ないわ絶対。だってさ、考えてみてくれよ。この世にはもっと美女がたくさんいて性格神な女とか忠実で奉仕の精神に満ちた女とかいっぱいいるだろ? お前がその中で一番に選ばれるわけないじゃないか、簡単な話だろうが」
彼は悪気はないようで、しかしながら濃い毒を吐き続ける。
私はただぽかんとしているしかなかった――こんな風に散々に言われてしまったら、返せる言葉なんてない。
「ただ、さ、万が一良い人がいなかった時に一人くらいは確保しておきたいってもんだろ。誰もいないーってなったらやばいからな。だからお前と一応一旦婚約しておいてたんだよ。ただそれだけ、それ以上なんてあるわけないない。お前みたいな中の中みたいな程度の女をたった一人の伴侶に選ぶわけないない。あーあ、それにしても、婚約くらいで本気になるとかきっついわー。やっぱ中の中くらいの冴えない女って妄想力逞しすぎだな」
こうしてアンデストロースとの関係は終わっていったのだった。
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