113 / 116
第百二回 アーロ(3)
しおりを挟む
「ホクァニハ何カ思イツクーノ?」
新鮮な組み合わせを考える会はまだ終わらないようだ。
「他ですか……」
「ムォウナイカンージ?」
アーロは軽く「他には」などと言う。しかし、そんなに聞かれても困ってしまう。何個もの案をパッと提案するというのは、容易ではない。
「少し考えてみますね……」
「パット思イツクノデイイーヨ?」
いやいや。パッと思いつくものがないから苦労しているのではないか。
——その時。
脳内にぽつんとアイデアが浮かんだ。
まるで気まぐれな神様が贈ってくれたかのように、いきなり、ぽつんと。
「あ」
「思イツイターノ!?」
それは、過去の記憶に関連するアイデアだった。それも、数年前なんかではなく、小学生の頃の記憶から出てきたものである。
「はい」
「言ットェミーテ!」
「あ……けど、少し変かもしれません」
一応思いつきはしたものの、「少し変かもしれない」などと考えてしまって、口から出す勇気が出ない。
「イイーヨ! 取ルィ敢エーズ言ットェミーテ!」
アーロはそう言ってくれるけれど。
でも、言う勇気がない。
「も、もう少し考えて……」
「今思イツイターノ、マズ言ットェミーテ!」
アーロは鋭く言ってくる。
恥ずかしがっていても仕方がない——そう思い、勇気を出して口を開く。
「鮭とイチゴ!」
言い切って、僕は黙る。
これは小学生時代の思い出から生まれた組み合わせだ。
僕が小学生だった頃、給食で、鮭の天ぷらとイチゴジャムが並んでいる日があった。もちろん、イチゴジャムはパンと食べる用だ。僕はそれを、気まぐれで、鮭の天ぷらにつけてみたのである。
それが案外美味しくて。
知り合いに話したら笑われたこともあるが、個人的には結構好みの味だった。
「……ナルホド!」
「え」
「ソレ! 詳スィク聞カスェテホシイーナ!」
アーロは、意外にも食いついてきた。
「えぇっ」
「聞クァセテホスィーノヨ! サケトイティゴの組ムィ合ワセニツーイテ!」
これまで何度か話したことがあるが、笑われて終わることが大概だった。また、酷い時には「味覚が変わっている」と言われたりもした。
だから、正直あまり言いたくはなかった。
しかしアーロは受け入れてくれた。笑うでもなく、馬鹿にするでもなく、真剣に聞いてくれて。しかも興味を持ってくれた。
……本当に小さなことだが、凄く嬉しい。
「スォノ発想ガドコカラ出トェキタノカ、教エーテムォラエール!?」
「はい」
「アリガトウ! イーロイロ聞カスェテーネ!」
その後、僕は、鮭とイチゴの組み合わせについて詳しく話したのだった。
一時間後。
終了の時間が来た。
「今日ハ、イロイロ聞カセテクルェテ、アリガトウ!」
アーロは椅子からさっと立ち上がる。
弓のような形状の脚は、見た感じ凄く不便そう。しかしながら、彼の動きを見ていると不便そうだとは感じない。
「ア、ソーダ」
「はい?」
「今度ウチノルェストランデ、ダンスパーティーグァアルクァーラ、モシ良カッターラ来テ来テ!」
いきなりダンスパーティー。
少し戸惑ってしまった。
「あ……はい」
「観ルダケデムォ、オーケーヨ!」
「そうなんですか」
「モチロンヨー! 来トェクレタラ、美味スィー料理を振ル舞ウクァラネー!」
新鮮な組み合わせを考える会はまだ終わらないようだ。
「他ですか……」
「ムォウナイカンージ?」
アーロは軽く「他には」などと言う。しかし、そんなに聞かれても困ってしまう。何個もの案をパッと提案するというのは、容易ではない。
「少し考えてみますね……」
「パット思イツクノデイイーヨ?」
いやいや。パッと思いつくものがないから苦労しているのではないか。
——その時。
脳内にぽつんとアイデアが浮かんだ。
まるで気まぐれな神様が贈ってくれたかのように、いきなり、ぽつんと。
「あ」
「思イツイターノ!?」
それは、過去の記憶に関連するアイデアだった。それも、数年前なんかではなく、小学生の頃の記憶から出てきたものである。
「はい」
「言ットェミーテ!」
「あ……けど、少し変かもしれません」
一応思いつきはしたものの、「少し変かもしれない」などと考えてしまって、口から出す勇気が出ない。
「イイーヨ! 取ルィ敢エーズ言ットェミーテ!」
アーロはそう言ってくれるけれど。
でも、言う勇気がない。
「も、もう少し考えて……」
「今思イツイターノ、マズ言ットェミーテ!」
アーロは鋭く言ってくる。
恥ずかしがっていても仕方がない——そう思い、勇気を出して口を開く。
「鮭とイチゴ!」
言い切って、僕は黙る。
これは小学生時代の思い出から生まれた組み合わせだ。
僕が小学生だった頃、給食で、鮭の天ぷらとイチゴジャムが並んでいる日があった。もちろん、イチゴジャムはパンと食べる用だ。僕はそれを、気まぐれで、鮭の天ぷらにつけてみたのである。
それが案外美味しくて。
知り合いに話したら笑われたこともあるが、個人的には結構好みの味だった。
「……ナルホド!」
「え」
「ソレ! 詳スィク聞カスェテホシイーナ!」
アーロは、意外にも食いついてきた。
「えぇっ」
「聞クァセテホスィーノヨ! サケトイティゴの組ムィ合ワセニツーイテ!」
これまで何度か話したことがあるが、笑われて終わることが大概だった。また、酷い時には「味覚が変わっている」と言われたりもした。
だから、正直あまり言いたくはなかった。
しかしアーロは受け入れてくれた。笑うでもなく、馬鹿にするでもなく、真剣に聞いてくれて。しかも興味を持ってくれた。
……本当に小さなことだが、凄く嬉しい。
「スォノ発想ガドコカラ出トェキタノカ、教エーテムォラエール!?」
「はい」
「アリガトウ! イーロイロ聞カスェテーネ!」
その後、僕は、鮭とイチゴの組み合わせについて詳しく話したのだった。
一時間後。
終了の時間が来た。
「今日ハ、イロイロ聞カセテクルェテ、アリガトウ!」
アーロは椅子からさっと立ち上がる。
弓のような形状の脚は、見た感じ凄く不便そう。しかしながら、彼の動きを見ていると不便そうだとは感じない。
「ア、ソーダ」
「はい?」
「今度ウチノルェストランデ、ダンスパーティーグァアルクァーラ、モシ良カッターラ来テ来テ!」
いきなりダンスパーティー。
少し戸惑ってしまった。
「あ……はい」
「観ルダケデムォ、オーケーヨ!」
「そうなんですか」
「モチロンヨー! 来トェクレタラ、美味スィー料理を振ル舞ウクァラネー!」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
新日本警察エリミナーレ
四季
キャラ文芸
日本のようで日本でない世界・新日本。
そこには、裏社会の悪を裁く組織が存在したーーその名は『新日本警察エリミナーレ』。
……とかっこよく言ってみるものの、案外のんびり活動している、そんな組織のお話です。
※2017.10.25~2018.4.6 に書いたものです。
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる