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第七十九回 バチャリカ(2)
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バチャリカはスマートフォンを取り出した。ということは、それに関する相談なのだろうか。だとしたら、僕に解決できるのか非常に心配である。なぜなら、僕はスマートフォンを使っていないから。もちろん、知り合いなんかが使っているところは見たことがあるから、まったく分からないということはない。が、マニアックな内容の相談だったりしたら、答えられないかもしれない。
「兄ちゃんやったら分かるやろー? 最近の子やし」
「すみません、あまり詳しくはありません……」
知識不足を認めるのは、少しばかり悔しい。
それに、恥ずかしい。
だが僕は、正直に答えておいた。
分かっているような顔をしていて、後から分かっていないことがバレたら、むしろそちらの方が恥ずかしいから。
「えー? そーなん?」
バチャリカはきょとんとした顔で言ってくる。
「はい。すみません」
「ま、でも、ちょっとは分かるやろー?」
「は、はい。少しだけなら……」
「ならえーわ!」
何が良いのだろう……?
「分かる範囲でえぇから教えて!」
「あ、はい。分かる範囲で、なら、お任せ下さい」
とはいえ、どの程度分かるのかが分からないから、現時点では何とも言えない。内容を聞いてみないことには。
バチャリカは取り出したスマートフォンを机に置くと、画面を明るくする。すると、いろんなアイコンが描かれた画面が表示された。よく街で見かける画面だ。
「これねー、実は孫から貰ったんよ。せやけど、使い方がまったく分からへんねん」
「そうだったのですね」
「この画面を出すとこまでは何とかできたんよ。でもそこからどうやって動かしたらいいんか分からんくて」
確かに、何も知らずにこれだけ貰ったら、困るかもしれない。
「説明書とかほぼなーんにも入ってへんかったし」
「あぁ、確かにそうですよね。最近のは少ないですからね」
「ボタンもあんまないやん? せやから、ここからどう進めたらえーんか分からへんのよ」
ははは、と、笑うバチャリカ。
あまり困っているようには見えないが、彼女は本当に困っているのだろうか……?
いや、そんなことを考えてはいけない。
悩みがある時、困っている時、誰もが「いかにも困っています」というような顔をするわけではないのだから。
バチャリカはわざわざ時間を取ってここへ来ているのだ、それが答えではないだろうか。
「指で画面を操作すると良いみたいですよ」
「え? あ、そーなん! 指で?」
「はい」
「ははーん。これが噂の、タッチパネルゆーやつやね?」
分かってはもらえたようだ。
しかしながら、改めて「タッチパネル」などと言うと、少しばかり不思議な感じもする。
当たり前に存在しているからこその違和感……かもしれない。
「写真を撮ったりできるんやんねー?」
「はい、可能です」
孫と写真を撮ったりするのだろうか。
「やり方教えてもらってもえーやろか」
「はい。ではこのカメラというアイコンを……」
「うんうん。へー! こうやるんやー」
写真の撮り方くらいなら、感覚的に分かった。
こういう時は、視覚的に分かりやすいデザインが役に立つ。非常にありがたい。
それからも僕は、バチャリカの要望に答え、色々な使い方を説明した。時には速やかに分からないこともあったが、そういう時バチャリカは気長に待ってくれたから、安心して進められた。
「兄ちゃんやったら分かるやろー? 最近の子やし」
「すみません、あまり詳しくはありません……」
知識不足を認めるのは、少しばかり悔しい。
それに、恥ずかしい。
だが僕は、正直に答えておいた。
分かっているような顔をしていて、後から分かっていないことがバレたら、むしろそちらの方が恥ずかしいから。
「えー? そーなん?」
バチャリカはきょとんとした顔で言ってくる。
「はい。すみません」
「ま、でも、ちょっとは分かるやろー?」
「は、はい。少しだけなら……」
「ならえーわ!」
何が良いのだろう……?
「分かる範囲でえぇから教えて!」
「あ、はい。分かる範囲で、なら、お任せ下さい」
とはいえ、どの程度分かるのかが分からないから、現時点では何とも言えない。内容を聞いてみないことには。
バチャリカは取り出したスマートフォンを机に置くと、画面を明るくする。すると、いろんなアイコンが描かれた画面が表示された。よく街で見かける画面だ。
「これねー、実は孫から貰ったんよ。せやけど、使い方がまったく分からへんねん」
「そうだったのですね」
「この画面を出すとこまでは何とかできたんよ。でもそこからどうやって動かしたらいいんか分からんくて」
確かに、何も知らずにこれだけ貰ったら、困るかもしれない。
「説明書とかほぼなーんにも入ってへんかったし」
「あぁ、確かにそうですよね。最近のは少ないですからね」
「ボタンもあんまないやん? せやから、ここからどう進めたらえーんか分からへんのよ」
ははは、と、笑うバチャリカ。
あまり困っているようには見えないが、彼女は本当に困っているのだろうか……?
いや、そんなことを考えてはいけない。
悩みがある時、困っている時、誰もが「いかにも困っています」というような顔をするわけではないのだから。
バチャリカはわざわざ時間を取ってここへ来ているのだ、それが答えではないだろうか。
「指で画面を操作すると良いみたいですよ」
「え? あ、そーなん! 指で?」
「はい」
「ははーん。これが噂の、タッチパネルゆーやつやね?」
分かってはもらえたようだ。
しかしながら、改めて「タッチパネル」などと言うと、少しばかり不思議な感じもする。
当たり前に存在しているからこその違和感……かもしれない。
「写真を撮ったりできるんやんねー?」
「はい、可能です」
孫と写真を撮ったりするのだろうか。
「やり方教えてもらってもえーやろか」
「はい。ではこのカメラというアイコンを……」
「うんうん。へー! こうやるんやー」
写真の撮り方くらいなら、感覚的に分かった。
こういう時は、視覚的に分かりやすいデザインが役に立つ。非常にありがたい。
それからも僕は、バチャリカの要望に答え、色々な使い方を説明した。時には速やかに分からないこともあったが、そういう時バチャリカは気長に待ってくれたから、安心して進められた。
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