悪の怪人☆お悩み相談室

四季

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第七十七回 リッタータン(4)

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「せっかくなので、安寧さんにも相談に乗っていただいて構わないでしょうか」

 由紀が部屋にいることを許したリッタータンは、そんなことを言う。相談に乗ってくれるならいてもいいよ、ということだったのかもしれない。

「え。あたしですか?」
「はい。少し相談事があり、岩山手さんにお話しさせていただいていたところでしたので」
「構いませんけど……彼に相談していたのでは?」

 由紀が丁寧な言葉を話していると、少し不思議な感じがする。いつもはもっとフレンドリーな話し方だから。

「はい、そうです。しかし、可能であれば、より多くの意見を聞かせていただきたいと思うのです」

 リッタータンは淡々とした話し方を続けている。

 ぶりっこだったり、荒くれ者だったり、個性溢れる怪人が多い中、彼はわりと普通だ。言動が落ち着いている。それに、真面目だし、きっちりしている。だから、個人的には結構好感が持てる。

「あ、リッタータンさん」
「何でしょうか」
「では、僕が彼女に事情を説明しますよ」

 由紀にも相談に乗ってもらうというのは、悪くはない。僕からでは出ないような意見を彼女が出してくれる可能性を考えれば、彼女にも相談するというのは、良い方法と言えるだろう。

 ただ、再びいちから説明するとなれば、莫大な時間がかかってしまう。

 だから、既に話の全体像を理解している僕が由紀に説明すれば早いのではないかと、そう考えたのだ。

「なるほど。そういうことなのですね。では岩山手さん、お願いしても構わないでしょうか」

 リッタータンはすんなり理解してくれた。

「はい! お任せ下さい!」

 僕はそう言って、由紀へ目をやる。
 そして、これまでの話を説明した。


 長台詞に関する悩みの件について、僕は由紀に説明した。

 ヒーローショーの台本に、やたらと長くややこしい台詞が幾つもあることや、それを暗記するのが非常に大変で苦労しているということなどを。

 その話を聞いた由紀は「それは結構大変だねー」と困り顔。

「リッタータンさん、とても困っていらっしゃるみたいで……」
「そりゃそうだよね。あたしだって、そんな目に遭ったら黙ってられないと思うなー」

 由紀も同意見のようだ。

「じゃあちょっと相談してみよっか!」
「……由紀さん?」
「台本を書き換えてもらえないか、相談してみるの!」

 え、そんなことができるのか?

「どうですか? リッタータンさん」
「そのようなことが……可能なのでしょうか……?」

 同感だ。
 ナイス、リッタータン。

「できますよ! 世の中できないことなんてありませんから!」
「ありがとうございます。では、申し訳ございませんが、宜しくお願いできますでしょうか」
「もちろんですっ」

 おぉ、話がどんどん進んでいく。

「由紀さん、僕は何か……」
「岩山手くんはいいよ! ありがとう!」

 少しでも手伝えることがあればと思ったのだが、どうやら、手伝えることはないようだ。
 基本優秀でない僕だから、手伝えることがないと言われてしまうのも無理はない。

 が、少しばかり残念である。
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