悪の怪人☆お悩み相談室

四季

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第七十三回 クラスメイトの今

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 高校時代のクラスメイトである甘矢は、妙に馴れ馴れしく、それでいて発言に棘がある。最近は嫌みのようなことを発することは滅多にない由紀とばかり話しているからか、昔よりも、発言に潜む棘がはっきりと感じ取ってしまうようになっていた。

「岩山手くんてさー、今は何か仕事してるの?」
「う……うん」
「へー! やっと職に就けたんだ!」

 やっと、は、余計だろう。
 感じ悪い。

「で、どんな仕事してるのー?」
「……相談に乗る仕事だよ」

 早くコンビニへ行きたいのだが、質問されてしまうと無視するわけにもいかなくて。

「えぇっ、そうなの!? 相談に乗ってもらう仕事じゃなく!?」

 失礼だぞ、甘矢。

「うん。相談に乗る仕事だよ」
「へぇー。人って分からないものだねー」
「そ、そうかな」
「うん! だって、岩山手くんが相談に乗るところなんて、絶対想像できないもん!」

 ばっさり言われてしまった。

 だが、そう言われてしまうのも、当然といえば当然だ。

 高校時代の僕は、本当にぱっとしない男子だった。勉強がよくできるわけでもなく、運動が好きということもなく、だからといって友達との交流に時間を割いているわけでもなく。幸い非常に嫌われているということはなかったものの、女子から話しかけられるなんてことは滅多になかった。もちろん、告白や彼女なんかは、手の届かない話だったし。

「そうだよね……僕もそう思うよ」
「えー、そうなのー? なのに勤めてるなんて、おっかしー」

 甘矢の悪意ある発言に苛立ちつつも、僕は、冷静さを保ちながら言葉を返す。

「そうだよね。でも、結構楽しいんだ」

 すると甘矢は面白くなさそうな顔をした。

「ふーん、そっか」
「甘矢さんは? お仕事か何かしているの?」

 あまり突っ込んでこられても困るので、今度はこちらから話を振ってみる。
 すると、甘矢は両手を腰に当て、「えっへん」という風なポーズを取りながら、答えてくれた。

「アタチは結婚したよー」
「えぇっ!!」

 衝撃のあまり、叫びを止められなかった。

「ちょっと何それ、驚きすぎー」
「あっ……ご、ごめん」
「ま、いーけどー。よくビックリされるしー」

 最初はかなり驚いた。が、よく考えてみれば、結婚していたとしてもおかしくないことに気がついた。彼女ももう、二十歳を過ぎた大人の女性だ。結婚していたとしても、おかしくはない。

 ……もっとも、今の時代だと早めの結婚ではあるだろうが。

「もう旦那さんがいるんだね」
「うん! そだよー!」
「良かったね、おめでとう」

 結婚なんて、僕の頭には欠片もない言葉だった。

「ありがとー」
「……あ。でも、旦那さんがいるんだったら、僕なんかとは……話さない方がいいんじゃ」

 すると、甘矢は急に大笑い。

「え……あの、僕は何か変なこと言ったかな……?」
「もー岩山手くんったらー。面白ーい。アタチの旦那が岩山手くんなんかに嫉妬するわけないよー!」

 とても明るい言い方ではあるものの、こんなにもはっきり言われると、少し傷ついてしまいそうになる。

 いや、もちろん、自分が魅力的な男だと思っているわけではないけれど。
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