70 / 116
第六十九回 ミニマムーン(2)
しおりを挟む
ミニマムーンがようやく椅子に座れたところで、早速悩みを聞くことに。
「では早速。ミニマムーンさんのお悩みは何でしょうか」
椅子に座ったミニマムーンは、慣れない場所というのもあってか、かなり気が散っているようだ。先ほどからずっとキョロキョロしている。
「……あ。ごめん。何か言った?」
僕が質問してからかなりの時間が経過してから、ミニマムーンは返事をした。
「はい。あの、お悩みを」
「そうだったね……返事が遅れてごめん」
「いえいえ」
「うん、じゃあ……」
そこまで言って、ミニマムーンは少し口を閉じる。それからしばらく、何か考え事でもしているかのような顔つきをしていた。
言いかけたのに黙るとは。
悩みを発することに、躊躇いでもあるのだろうか。
なぜ黙るのか、事情は分からない。
が、急かすというのも問題だろう。
だから僕は、ミニマムーンが自ら口を開くのをじっと待った。
それから二分ほど経過して。
「……ぼく、背がひくいのを気にしてるんだ」
悩みとは分からないものだ。
改めて、そう感じた。
ミニマムーンの武器とも言える可愛らしさ。それは、背の低さも含んでのもの。つまり、背が低いということも、ミニマムーンの魅力を高めている要素の一つなのである。背が極めて低いことによって、デフォルメキャラやマスコットのような可愛らしさが醸し出されているのだから、背が低い、なんて、気にすることとは思えない。
「そうなんですか?」
「……うん」
こくりと頷くミニマムーンは、本当に可愛らしい。
「今のままでも十分魅力的だと思いますけど」
「ううん……もっと大きくなりたいよ」
僕としては、今のままであってほしい。
せっかく可愛らしいミニマムーンなのに、これで背が百七十センチ以上になったりしたら、それこそ奇妙なことになってしまう。
「どうしてですか?」
「それはもちろん……立派な男になりたいからだよ!」
急に元気な声になるミニマムーン。
「立派な男になって! 世界平和のためにヒーローと戦って! 勝って! 救世主と呼ばれて! そして、可愛い女の子と結婚するんだ」
なんと。既に立派な人生設計が。
何も考えず今日この時を生きている僕とは大違いだ。
だが、ところどころ突っ込みたいところがある人生設計である。
そもそも、立派な男になるには、背が伸びればそれだけでいいわけではない。背が高ければ偉いというわけではないからだ。実際のところ、身長なんてそれほど関係していない。それよりも、中身を磨くことの方が大事。
それに、世界平和のために戦う相手が、どうしてヒーローなのか。
ヒーローと戦う——それは、悪の怪人が行うことである。
そして特に気になるのは「ヒーローに勝つ」という部分。易々と成し遂げられることではない。ほぼ不可能と言えよう。
いや、もちろん、ヒーローを追い詰めることならできるだろう。
卑怯な手を使いでもすれば、戦いを有利に進めることはできるはずだ。
けれど、「勝つ」となると、話が変わってくる。
……ちなみに、最後の「可愛い女の子と結婚」は好きにすればいいこと。
僕が口出しするとこではないだろう。
「ミニマムーンさんはそんな夢をお持ちなのですね」
「うん……叶うかな……」
多分無理だろう。
そう思わずにはいられない。
「では早速。ミニマムーンさんのお悩みは何でしょうか」
椅子に座ったミニマムーンは、慣れない場所というのもあってか、かなり気が散っているようだ。先ほどからずっとキョロキョロしている。
「……あ。ごめん。何か言った?」
僕が質問してからかなりの時間が経過してから、ミニマムーンは返事をした。
「はい。あの、お悩みを」
「そうだったね……返事が遅れてごめん」
「いえいえ」
「うん、じゃあ……」
そこまで言って、ミニマムーンは少し口を閉じる。それからしばらく、何か考え事でもしているかのような顔つきをしていた。
言いかけたのに黙るとは。
悩みを発することに、躊躇いでもあるのだろうか。
なぜ黙るのか、事情は分からない。
が、急かすというのも問題だろう。
だから僕は、ミニマムーンが自ら口を開くのをじっと待った。
それから二分ほど経過して。
「……ぼく、背がひくいのを気にしてるんだ」
悩みとは分からないものだ。
改めて、そう感じた。
ミニマムーンの武器とも言える可愛らしさ。それは、背の低さも含んでのもの。つまり、背が低いということも、ミニマムーンの魅力を高めている要素の一つなのである。背が極めて低いことによって、デフォルメキャラやマスコットのような可愛らしさが醸し出されているのだから、背が低い、なんて、気にすることとは思えない。
「そうなんですか?」
「……うん」
こくりと頷くミニマムーンは、本当に可愛らしい。
「今のままでも十分魅力的だと思いますけど」
「ううん……もっと大きくなりたいよ」
僕としては、今のままであってほしい。
せっかく可愛らしいミニマムーンなのに、これで背が百七十センチ以上になったりしたら、それこそ奇妙なことになってしまう。
「どうしてですか?」
「それはもちろん……立派な男になりたいからだよ!」
急に元気な声になるミニマムーン。
「立派な男になって! 世界平和のためにヒーローと戦って! 勝って! 救世主と呼ばれて! そして、可愛い女の子と結婚するんだ」
なんと。既に立派な人生設計が。
何も考えず今日この時を生きている僕とは大違いだ。
だが、ところどころ突っ込みたいところがある人生設計である。
そもそも、立派な男になるには、背が伸びればそれだけでいいわけではない。背が高ければ偉いというわけではないからだ。実際のところ、身長なんてそれほど関係していない。それよりも、中身を磨くことの方が大事。
それに、世界平和のために戦う相手が、どうしてヒーローなのか。
ヒーローと戦う——それは、悪の怪人が行うことである。
そして特に気になるのは「ヒーローに勝つ」という部分。易々と成し遂げられることではない。ほぼ不可能と言えよう。
いや、もちろん、ヒーローを追い詰めることならできるだろう。
卑怯な手を使いでもすれば、戦いを有利に進めることはできるはずだ。
けれど、「勝つ」となると、話が変わってくる。
……ちなみに、最後の「可愛い女の子と結婚」は好きにすればいいこと。
僕が口出しするとこではないだろう。
「ミニマムーンさんはそんな夢をお持ちなのですね」
「うん……叶うかな……」
多分無理だろう。
そう思わずにはいられない。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

千紫万紅の街
海月
キャラ文芸
―「此処に産まれなければって幾度も思った。でも、屹度、此処に居ないと貴女とは出逢えなかったんだね。」
外の世界を知らずに育った、悪魔の子と呼ばれた、大切なものを奪われた。
今も多様な事情を担う少女達が、枯れそうな花々に水を与え続けている。
“普通のハズレ側”に居る少女達が、普通や幸せを取り繕う物語。決して甘くない彼女達の過去も。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?


新日本警察エリミナーレ
四季
キャラ文芸
日本のようで日本でない世界・新日本。
そこには、裏社会の悪を裁く組織が存在したーーその名は『新日本警察エリミナーレ』。
……とかっこよく言ってみるものの、案外のんびり活動している、そんな組織のお話です。
※2017.10.25~2018.4.6 に書いたものです。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる