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第二十七回 マンティーデ(3)
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少し褒めたら、柔らかくなる。
マンティーデは、もしかしたら、案外単純な性格なのかもしれない。
上手く操ろうとしているようで少々申し訳ない気もするが、今はそこを活用させてもらうとしよう。というよりか、そこをうまく使わなければ、今回のこの相談を乗りきれないのだ。それゆえ、仕方ない。
「カマたんはどうです?」
「その『カマ』にばっか執着すんのは止めろォ!」
「では、マキリングスはどうです?」
この際、思いつくことすべてを言っていってやろう。
「何だかキラキラした感じだな。……しかーし! それでは、俺様の強さが伝わらん! 却下ァ!」
返ってくる言葉に心を揺らすことはない。
提案を続けていれば、いつかは、少しくらい気に入るものが出てくるだろう。
「キリングはどうです?」
「もはやよく分かんねーよっ!」
「キリングスキラキラは?」
「だっせ! あだ名にキラキラとかなさすぎるぜぇーっ!」
凄まじい酷評を受けてしまったが、その程度で平常心を失ったりはしない。心の準備はしていたし、酷評なんて慣れっこだ。
「カマキリンゴはどうでしょう」
「どこからリンゴ出てきたァ! 却下ァ!」
「鎌かっこいいくん」
「ふざけてるだろ!」
「荒々し将軍」
「いい加減にしろよ! イワヤマテ!」
……しまった、つい本音が。
こんなところで怒らせるわけにはいかないのだ。
たとえ不愉快であっても付き合うしかない。それが現実なのだから。
「ソラカラカマキリ」
「俺様は空出身じゃねぇよ!」
僕はもう、考えることを止めた。思いついた言葉を、ぽんぽんと発するだけにした。真剣に考えてもどうせ却下になるのだから、いっそ適当の方が良いのでは。そんな風に思って。
「では、テンカラカマキリ」
「天から来たわけでもねぇ! 勝手に設定付け加えるんじゃねーよ!」
「それでは、アクノカマキリ」
「悪とか嫌みだろーっ!」
提案と却下が繰り返される。
その間も、彼はずっと、室内をうろついていた。
「なら思いきって、テンカエル」
「ひゃっふぅー!? カエルと一緒にすんなァ!」
それはカエルに失礼ではないだろうか。
カエルだって、きちんとした生き物の一種。カマキリがそうであるように、カエルも一つの生き物だ。懸命に生きているのだ。そんなカエルを馬鹿にするような発言が許されるとは、とても思えない。
……いや、考えるのは止そう。
「カエルは嫌ですか?」
「嫌だよ! だーってよぉ! カエルをモチーフにしているのかと勘違いされるじゃねーかっ!!」
「なるほど。確かに、それは一理ありますね」
「真面目に頷いてんじゃねーっ!」
いちいち叫ぶから、マンティーデと話すと騒がしい。しばらくやり取りを続けていると、耳が痛くなったくらいだ。
しかし、彼の言うこともまんざら間違いではないように思えてきた。
怪人には大抵モチーフがある。そして、それにちなんだ名前のことが多い。それは恐らく、多くの人が「この怪人はこういう怪人なのだな」と速やかに理解できるようにするためなのだろう。
そういう意味では、あだ名だとはいえ、モチーフと無関係の名前をつけるのは避けた方が良さそうだ。
「しかし……難しいですね、かっこいいあだ名って」
適当では駄目だ。適当に言っていると、どうしても、段々ずれていってしまう。それは問題だ。
やはり、きちんと考えたうえで、提案しなければ。
マンティーデは、もしかしたら、案外単純な性格なのかもしれない。
上手く操ろうとしているようで少々申し訳ない気もするが、今はそこを活用させてもらうとしよう。というよりか、そこをうまく使わなければ、今回のこの相談を乗りきれないのだ。それゆえ、仕方ない。
「カマたんはどうです?」
「その『カマ』にばっか執着すんのは止めろォ!」
「では、マキリングスはどうです?」
この際、思いつくことすべてを言っていってやろう。
「何だかキラキラした感じだな。……しかーし! それでは、俺様の強さが伝わらん! 却下ァ!」
返ってくる言葉に心を揺らすことはない。
提案を続けていれば、いつかは、少しくらい気に入るものが出てくるだろう。
「キリングはどうです?」
「もはやよく分かんねーよっ!」
「キリングスキラキラは?」
「だっせ! あだ名にキラキラとかなさすぎるぜぇーっ!」
凄まじい酷評を受けてしまったが、その程度で平常心を失ったりはしない。心の準備はしていたし、酷評なんて慣れっこだ。
「カマキリンゴはどうでしょう」
「どこからリンゴ出てきたァ! 却下ァ!」
「鎌かっこいいくん」
「ふざけてるだろ!」
「荒々し将軍」
「いい加減にしろよ! イワヤマテ!」
……しまった、つい本音が。
こんなところで怒らせるわけにはいかないのだ。
たとえ不愉快であっても付き合うしかない。それが現実なのだから。
「ソラカラカマキリ」
「俺様は空出身じゃねぇよ!」
僕はもう、考えることを止めた。思いついた言葉を、ぽんぽんと発するだけにした。真剣に考えてもどうせ却下になるのだから、いっそ適当の方が良いのでは。そんな風に思って。
「では、テンカラカマキリ」
「天から来たわけでもねぇ! 勝手に設定付け加えるんじゃねーよ!」
「それでは、アクノカマキリ」
「悪とか嫌みだろーっ!」
提案と却下が繰り返される。
その間も、彼はずっと、室内をうろついていた。
「なら思いきって、テンカエル」
「ひゃっふぅー!? カエルと一緒にすんなァ!」
それはカエルに失礼ではないだろうか。
カエルだって、きちんとした生き物の一種。カマキリがそうであるように、カエルも一つの生き物だ。懸命に生きているのだ。そんなカエルを馬鹿にするような発言が許されるとは、とても思えない。
……いや、考えるのは止そう。
「カエルは嫌ですか?」
「嫌だよ! だーってよぉ! カエルをモチーフにしているのかと勘違いされるじゃねーかっ!!」
「なるほど。確かに、それは一理ありますね」
「真面目に頷いてんじゃねーっ!」
いちいち叫ぶから、マンティーデと話すと騒がしい。しばらくやり取りを続けていると、耳が痛くなったくらいだ。
しかし、彼の言うこともまんざら間違いではないように思えてきた。
怪人には大抵モチーフがある。そして、それにちなんだ名前のことが多い。それは恐らく、多くの人が「この怪人はこういう怪人なのだな」と速やかに理解できるようにするためなのだろう。
そういう意味では、あだ名だとはいえ、モチーフと無関係の名前をつけるのは避けた方が良さそうだ。
「しかし……難しいですね、かっこいいあだ名って」
適当では駄目だ。適当に言っていると、どうしても、段々ずれていってしまう。それは問題だ。
やはり、きちんと考えたうえで、提案しなければ。
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