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第二十三回 ズガイクォツゥ(3)
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「なるふぉど! それなら名乗りの分が無駄にならずに済む!」
ズガイクォツゥの顔が晴れやかになる。
それはまるで、雨上がりの空に浮かぶ灰色の雲が流れて消え去った後の空のよう。爽やかな顔色だ。
少ない知識からの提案だったが、納得してくれたのかもしれない。
「すぉうか! すぉの手があったな!」
「少しでも参考になれば良いのですが……」
するとズガイクォツゥは、握った片手を前に出し、ぐっと親指を上向きに立てた。
「感謝する!」
ズガイクォツは張りのある声で言う。
その表情から察するに、今回の提案は悪くはなかったようだ。僕は内心安堵する。また却下されたら、と多少の不安があっただけに、ほっとする部分も大きい。
「そう言っていただけて、嬉しいです」
「あまり聡明でぬぁい吾輩には思いつかない案だった。相談してみて良かった、と思う」
何より嬉しい言葉だ。
少ない知識だけで活動している僕にとっては、特に。
「他にも何かありますか?」
念のため確認。しかしズガイクォツゥは、首を横に振った。今日相談したいことは一件だけだったようだ。
「では、以上ですね」
「そうだぬぁ!」
言いながら、椅子から立ち上がるズガイクォツゥ。
「岩山手! いい名前なだけでなく、いい仕事しとぅぇるな! 吾輩、気に入った!」
ズガイクォツゥは、僕のことを、妙に褒めてくれる。気に入ってもらうことができたようで安心すると同時に、嬉しい。褒められると嬉しくて、自然とやる気に満ちてくる。
「ではな!」
「ありがとうございました」
帰ろうとするズガイクォツゥに、僕は、礼を言いつつ頭を下げる。
今、僕の胸は明るい。
初夏の昼間のような晴れやかな明るさだ。
「岩山手くん、お疲れ様っ」
ズガイクォツゥの対応を終え、個室から出る。すると、由紀がそんな風に労ってくれた。彼女は自分の机で何やら用事をしているが、僕の動きもきちんと把握しているようだ。
「ありがとうございます」
「さっきの方、岩山手くんのこと気に入ってたね!」
由紀は紙の束を机にとんとんと当てて揃えている。
「はい、何とか嫌われずにすみました……」
「良いことだねっ」
「嬉しいです。けど、逆に緊張してしまいます」
すると由紀は、ふふっ、と笑みをこぼす。
「ま、そういうこともあるか」
言いながら、彼女は、紙の束を持って立ち上がる。そして、机の向こう側——入り口から見て奥の方にあるシュレッダーのところまで、すたすたと歩いていく。
「その気持ちは分かるけど、緊張なんてしなくていいんだよっ」
由紀は手に持っていた紙の束を、少しずつ分けてシュレッダーにかける。
「は、はい。そうですよね。このくらいで緊張なんて……情けないことです」
「情けない、なんてことはないよっ」
「だけど僕……」
「岩山手くん、それなりに頑張ってるし、真面目だし、何の問題もないよ」
由紀はいつも僕を励ましてくれる。それに、僕が失敗した時も、彼女は僕を責めなかった。自信がない質の僕にとっては、彼女の存在はありがたい。
……もっとも、たまに眩しすぎる時もあるが。
「これからも頑張って」
「は、はい! できるだけ頑張ります!」
こうして話がひと段落した時、僕は気になっていたことを聞いてみることにした。
「あの……少し質問させていただきたいことがあって」
「ん? 何?」
聞いたって、怒られはしないはず。
「由紀さんはどうして相談室をなさっているのですか?」
ズガイクォツゥの顔が晴れやかになる。
それはまるで、雨上がりの空に浮かぶ灰色の雲が流れて消え去った後の空のよう。爽やかな顔色だ。
少ない知識からの提案だったが、納得してくれたのかもしれない。
「すぉうか! すぉの手があったな!」
「少しでも参考になれば良いのですが……」
するとズガイクォツゥは、握った片手を前に出し、ぐっと親指を上向きに立てた。
「感謝する!」
ズガイクォツは張りのある声で言う。
その表情から察するに、今回の提案は悪くはなかったようだ。僕は内心安堵する。また却下されたら、と多少の不安があっただけに、ほっとする部分も大きい。
「そう言っていただけて、嬉しいです」
「あまり聡明でぬぁい吾輩には思いつかない案だった。相談してみて良かった、と思う」
何より嬉しい言葉だ。
少ない知識だけで活動している僕にとっては、特に。
「他にも何かありますか?」
念のため確認。しかしズガイクォツゥは、首を横に振った。今日相談したいことは一件だけだったようだ。
「では、以上ですね」
「そうだぬぁ!」
言いながら、椅子から立ち上がるズガイクォツゥ。
「岩山手! いい名前なだけでなく、いい仕事しとぅぇるな! 吾輩、気に入った!」
ズガイクォツゥは、僕のことを、妙に褒めてくれる。気に入ってもらうことができたようで安心すると同時に、嬉しい。褒められると嬉しくて、自然とやる気に満ちてくる。
「ではな!」
「ありがとうございました」
帰ろうとするズガイクォツゥに、僕は、礼を言いつつ頭を下げる。
今、僕の胸は明るい。
初夏の昼間のような晴れやかな明るさだ。
「岩山手くん、お疲れ様っ」
ズガイクォツゥの対応を終え、個室から出る。すると、由紀がそんな風に労ってくれた。彼女は自分の机で何やら用事をしているが、僕の動きもきちんと把握しているようだ。
「ありがとうございます」
「さっきの方、岩山手くんのこと気に入ってたね!」
由紀は紙の束を机にとんとんと当てて揃えている。
「はい、何とか嫌われずにすみました……」
「良いことだねっ」
「嬉しいです。けど、逆に緊張してしまいます」
すると由紀は、ふふっ、と笑みをこぼす。
「ま、そういうこともあるか」
言いながら、彼女は、紙の束を持って立ち上がる。そして、机の向こう側——入り口から見て奥の方にあるシュレッダーのところまで、すたすたと歩いていく。
「その気持ちは分かるけど、緊張なんてしなくていいんだよっ」
由紀は手に持っていた紙の束を、少しずつ分けてシュレッダーにかける。
「は、はい。そうですよね。このくらいで緊張なんて……情けないことです」
「情けない、なんてことはないよっ」
「だけど僕……」
「岩山手くん、それなりに頑張ってるし、真面目だし、何の問題もないよ」
由紀はいつも僕を励ましてくれる。それに、僕が失敗した時も、彼女は僕を責めなかった。自信がない質の僕にとっては、彼女の存在はありがたい。
……もっとも、たまに眩しすぎる時もあるが。
「これからも頑張って」
「は、はい! できるだけ頑張ります!」
こうして話がひと段落した時、僕は気になっていたことを聞いてみることにした。
「あの……少し質問させていただきたいことがあって」
「ん? 何?」
聞いたって、怒られはしないはず。
「由紀さんはどうして相談室をなさっているのですか?」
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