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第十八回 ネーオン(2)
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モグリトエハの落とし物に関する件が解決したところで、本題に入っていく。
「実はねー、最近上手くいっていないのよ。カカカンカンとかいうヒーローが現れて、いつもそいつらに邪魔されてばっかなの。そのせいで侵略はなかなか進まず、ボスはいつもご機嫌ナナメ。ホント、嫌になっちゃうわ」
ネーオンは色気ある唇から愚痴をこぼす。
彼女は恐らく、邪魔者とボスの間で板挟みになってしまっているのだろう。僕は板挟みに苦しんだことはないが、二者の間に挟まれてしまうストレスは、想像できないこともない。
「……活動はいつもこの辺りで?」
ネーオンの言葉を聞く感じ、彼女の所属している組織は、この辺りで活動しているようだ。しかし、侵略活動をしている怪人なんて、この街では見たことがない。
だから、僕は質問した。
その問いに、彼女はそっと答える。
「隣の市よ」
なるほど。それなら、僕が彼女らの活動を見たことがないのも、そんなにおかしな話ではない。……のだろうか?
「それでね、今日は、カカカンカンに邪魔されず侵略する方法を考えてほしいの。オーケー?」
侵略する方法を考える。
一般市民にすぎない僕が、そんなことをして良いのだろうか。
対象が隣の市だとはいえ、僕が考えた方法が成功して侵略が上手くいったりした日には、かなりの大問題である。
「僕にそんな重大なことを考えろ、と……」
「そうよ。オーケー?」
できれば元気よく「オーケー!」と返したいところだが、ここはさすがに、元気よくは返しづらい。少々迷いがある。
いくら怪人の相談に乗る仕事とはいえ、逆に人間に危害が加わってしまうようなお手伝いはできない。
「どうなのよ?」
「は……はい! 考えましょう!」
一応そう返しておく。
相談に乗る分には問題はない。成功する方法を考えなければいいのだから。
「ところで、ボスの方はなぜ侵略を望んでいらっしゃるのですか?」
「それは……もちろん、家を建てるためよ」
え。
そんな理由?
「家を建てるため? それなら、土地を買えばよくないですか」
「……土地を?」
怪訝な顔をしていそうな声を発するネーオン。
「はい。それなら、邪魔者も何も関係ありませんし」
わざわざ侵略する理由となると、乗っ取りたいからか何かかと思っていた。しかし、ネーオンの話によると、どうもそうではないらしい。
彼女は「家を建てるため」と言っていた。
もしそれが真実ならば、力ずくで侵略せずとも、もっと現実的な方法で土地を手にすれば良いのだ。
それなら誰にも邪魔されないだろう。
「しかし、我々のような人ならざる者が土地を買えるかしら」
「いや、それは……」
「ノー! まさか『分からない』なんて言うんじゃないでしょうね」
柔らかそうな太ももを重ね、音もなく足を組む。
「はい、その通りです……。まったく分かりません……」
するとネーオンは、はぁ、と大袈裟に溜め息をついた。
「お兄さん、まーったく役に立たないわね」
呆れられてしまったようだ。
それも無理はない。僕が無知だったことが悪い。
だが、少し、そこまで露骨に呆れた態度を取らなくても、と思ってしまう部分もある。
そんな風に内心愚痴っていると、ネーオンは突如椅子から立ち上がった。
「実はねー、最近上手くいっていないのよ。カカカンカンとかいうヒーローが現れて、いつもそいつらに邪魔されてばっかなの。そのせいで侵略はなかなか進まず、ボスはいつもご機嫌ナナメ。ホント、嫌になっちゃうわ」
ネーオンは色気ある唇から愚痴をこぼす。
彼女は恐らく、邪魔者とボスの間で板挟みになってしまっているのだろう。僕は板挟みに苦しんだことはないが、二者の間に挟まれてしまうストレスは、想像できないこともない。
「……活動はいつもこの辺りで?」
ネーオンの言葉を聞く感じ、彼女の所属している組織は、この辺りで活動しているようだ。しかし、侵略活動をしている怪人なんて、この街では見たことがない。
だから、僕は質問した。
その問いに、彼女はそっと答える。
「隣の市よ」
なるほど。それなら、僕が彼女らの活動を見たことがないのも、そんなにおかしな話ではない。……のだろうか?
「それでね、今日は、カカカンカンに邪魔されず侵略する方法を考えてほしいの。オーケー?」
侵略する方法を考える。
一般市民にすぎない僕が、そんなことをして良いのだろうか。
対象が隣の市だとはいえ、僕が考えた方法が成功して侵略が上手くいったりした日には、かなりの大問題である。
「僕にそんな重大なことを考えろ、と……」
「そうよ。オーケー?」
できれば元気よく「オーケー!」と返したいところだが、ここはさすがに、元気よくは返しづらい。少々迷いがある。
いくら怪人の相談に乗る仕事とはいえ、逆に人間に危害が加わってしまうようなお手伝いはできない。
「どうなのよ?」
「は……はい! 考えましょう!」
一応そう返しておく。
相談に乗る分には問題はない。成功する方法を考えなければいいのだから。
「ところで、ボスの方はなぜ侵略を望んでいらっしゃるのですか?」
「それは……もちろん、家を建てるためよ」
え。
そんな理由?
「家を建てるため? それなら、土地を買えばよくないですか」
「……土地を?」
怪訝な顔をしていそうな声を発するネーオン。
「はい。それなら、邪魔者も何も関係ありませんし」
わざわざ侵略する理由となると、乗っ取りたいからか何かかと思っていた。しかし、ネーオンの話によると、どうもそうではないらしい。
彼女は「家を建てるため」と言っていた。
もしそれが真実ならば、力ずくで侵略せずとも、もっと現実的な方法で土地を手にすれば良いのだ。
それなら誰にも邪魔されないだろう。
「しかし、我々のような人ならざる者が土地を買えるかしら」
「いや、それは……」
「ノー! まさか『分からない』なんて言うんじゃないでしょうね」
柔らかそうな太ももを重ね、音もなく足を組む。
「はい、その通りです……。まったく分かりません……」
するとネーオンは、はぁ、と大袈裟に溜め息をついた。
「お兄さん、まーったく役に立たないわね」
呆れられてしまったようだ。
それも無理はない。僕が無知だったことが悪い。
だが、少し、そこまで露骨に呆れた態度を取らなくても、と思ってしまう部分もある。
そんな風に内心愚痴っていると、ネーオンは突如椅子から立ち上がった。
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