14 / 116
第十四回 モグリトエハ(2)
しおりを挟む
モグリトエハは、細長い腕の先端で、巾着袋をじわじわと開けていく。その作業が始まって数十秒ほどが経過して、巾着袋の口はようやく開いた。
彼が取り出したのは、ゲーム機。
二つ折れになっているもので、真上から見ると横長の長方形をしている。よく見かける、僕も持っていたゲーム機だ。
「これなんですー」
彼はそう言って、ゲーム機を開き、手の先で電源ボタンを押す。すると、微かにプツッと音がして、ゲーム機の画面が光を放ち始めた。
「ゲーム……ですか?」
「はいー」
「そのゲーム機、僕も昔よく遊びました」
すると、モグリトエハは苦笑する。
「変ですよねー。この年でゲームなんて」
確かに、彼は大人だ。だが、大人だからといってゲームをしてはならないという決まりはないだろう。実際、僕だって、家ではよくゲームをしている。
「そんなことないと思いますよ!」
はっきりと言い放つ。
本当は、こんな大きな声で言うべきところではなかったのかもしれないが。
「……そうですかー?」
「はい。モグリトエハさんがゲームをお好きなのは、悪いことではないと思います」
「嬉しいですー。そう言っていただけると、ほっとしますー」
そんな風に言葉を交わしている間、彼はずっと、ゲーム機を操作していた。
「ところでモグリトエハさん」
「はいー?」
「今日のご相談は、ゲームに関することなのですか」
いきなり踏み込んでいくのは失礼かもしれない、と思いつつも、気になってつい尋ねてしまう。
個人的には若干後悔したのだが、彼が少しも嫌な顔をせず「はいー」と答えてくれたから、僕の心は少し救われた。もしここで彼に嫌な顔をされたりなんかしていたら、僕の心はダメージを受けていたことだろう。
「実は……ここのステージがクリアできなくてですねー」
小学生のような相談。
まさかの展開に動揺してしまう。
「えっ、あ、はい」
モグリトエハはゲーム機の画面を見せてくる。
どうやら、シューティングゲームのようだ。
個人的にあまり経験のないジャンルのゲームである。それだけに、きちんと力になれるか不安でいっぱいだ。不安要素が多すぎる。
「この前のステージまでは、それなりにすんなり進めていけたんですー。けど、このステージはどうやってもゲームオーバーになってしまってですねー」
急に積極的に話し出すモグリトエハ。
「なるほど。よくありますよね、そういうこと」
僕もゲームはわりとよくやっていた。しかし、得意ということはなくて。興味はあってもセンスが不足していて、大概途中で詰まってしまっていた。何十本ものゲームを遊んできたが、完全にクリアできたものといったら、半分あるかないか程度。
……ほろ苦い思い出である。
「分かっていただけますー?」
「はい。とてもよく分かります」
できれば分かりたくなかったが。
「そこでですねー、このステージをクリアするお手伝いをしていただきたいんですー」
これは困った内容だ。
彼がそこまで詰まってしまっているということは、そこそこ難しいステージなのだろう。
それをセンスのない僕がクリアするなんて、ほぼ不可能。
奇跡でも起こらない限り、クリアは無理だと思う。
彼が取り出したのは、ゲーム機。
二つ折れになっているもので、真上から見ると横長の長方形をしている。よく見かける、僕も持っていたゲーム機だ。
「これなんですー」
彼はそう言って、ゲーム機を開き、手の先で電源ボタンを押す。すると、微かにプツッと音がして、ゲーム機の画面が光を放ち始めた。
「ゲーム……ですか?」
「はいー」
「そのゲーム機、僕も昔よく遊びました」
すると、モグリトエハは苦笑する。
「変ですよねー。この年でゲームなんて」
確かに、彼は大人だ。だが、大人だからといってゲームをしてはならないという決まりはないだろう。実際、僕だって、家ではよくゲームをしている。
「そんなことないと思いますよ!」
はっきりと言い放つ。
本当は、こんな大きな声で言うべきところではなかったのかもしれないが。
「……そうですかー?」
「はい。モグリトエハさんがゲームをお好きなのは、悪いことではないと思います」
「嬉しいですー。そう言っていただけると、ほっとしますー」
そんな風に言葉を交わしている間、彼はずっと、ゲーム機を操作していた。
「ところでモグリトエハさん」
「はいー?」
「今日のご相談は、ゲームに関することなのですか」
いきなり踏み込んでいくのは失礼かもしれない、と思いつつも、気になってつい尋ねてしまう。
個人的には若干後悔したのだが、彼が少しも嫌な顔をせず「はいー」と答えてくれたから、僕の心は少し救われた。もしここで彼に嫌な顔をされたりなんかしていたら、僕の心はダメージを受けていたことだろう。
「実は……ここのステージがクリアできなくてですねー」
小学生のような相談。
まさかの展開に動揺してしまう。
「えっ、あ、はい」
モグリトエハはゲーム機の画面を見せてくる。
どうやら、シューティングゲームのようだ。
個人的にあまり経験のないジャンルのゲームである。それだけに、きちんと力になれるか不安でいっぱいだ。不安要素が多すぎる。
「この前のステージまでは、それなりにすんなり進めていけたんですー。けど、このステージはどうやってもゲームオーバーになってしまってですねー」
急に積極的に話し出すモグリトエハ。
「なるほど。よくありますよね、そういうこと」
僕もゲームはわりとよくやっていた。しかし、得意ということはなくて。興味はあってもセンスが不足していて、大概途中で詰まってしまっていた。何十本ものゲームを遊んできたが、完全にクリアできたものといったら、半分あるかないか程度。
……ほろ苦い思い出である。
「分かっていただけますー?」
「はい。とてもよく分かります」
できれば分かりたくなかったが。
「そこでですねー、このステージをクリアするお手伝いをしていただきたいんですー」
これは困った内容だ。
彼がそこまで詰まってしまっているということは、そこそこ難しいステージなのだろう。
それをセンスのない僕がクリアするなんて、ほぼ不可能。
奇跡でも起こらない限り、クリアは無理だと思う。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
新日本警察エリミナーレ
四季
キャラ文芸
日本のようで日本でない世界・新日本。
そこには、裏社会の悪を裁く組織が存在したーーその名は『新日本警察エリミナーレ』。
……とかっこよく言ってみるものの、案外のんびり活動している、そんな組織のお話です。
※2017.10.25~2018.4.6 に書いたものです。
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる