上 下
3 / 3

3話

しおりを挟む

「でも一歩ずつ進めたいです」
「あ、そうですよね。じゃあ、一つずつ。まずは交流させてください」
「もちろん、喜んで!」
「うわぁ……言ってみて良かったぁ……本当に嬉しいですありがとうございます……!!」

 こうしてレッガートと結婚目指して動き出した私は、元々の趣味だった歌も取り戻すことができ、縛りから逃れることができた。

 で、やがて彼と結婚。

 また、歌手としても成功し、一気に有名人になった。

 有名になった頃、ローレンスが私の前へ現れて「出世したようだな、なら話は別だ。俺とやり直さないか? 地位と金があるなら家事だけしろとは言わないから」と言ってきたけれど、私は既に結婚しているので断った。

「結婚している、だと!? もう!? あり得ん、軽すぎる!!」
「お帰りください」
「嘘をつくな! そんなすぐ次が見つかるはずがない!」
「嘘ではないですよ。夫を呼びましょうか?」
「っ……ま、まぁいい。もういい。帰る。お前にはがっかりだ!!」

 どうぞ、何とでも仰っていてください。

 これがローレンスとの最後の対面となった。

 というのも、この翌日、ローレンスの家に泥棒が入ったのだ。
 その話はニュースになっていて。
 昼過ぎには既に皆が知っているような話になっていた。

 で、彼は、泥棒と出くわしてしまって殺められてしまったそうだ。

 不運だったな、とは思う。
 そんなことになるなんて。
 けれども同情はしない、可哀想にとも思わないし思いたくない。

「ニュース、びっくりだったね。前の婚約者さんが亡くなるなんて」
「ええ……」
「可哀想って思う?」
「まさか、それはないわ」
「はっきり言うなぁ」
「ええ。だって彼のことは好きじゃないの」
「そっか。でもま、そうなっても仕方ないよね。酷い人だし」
「そうよ! もう二度と会いたくないわ」

 私はレッガートと共に生きてゆく。


◆終わり◆
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

夫で王子の彼には想い人がいるようですので、私は失礼します

四季
恋愛
十五の頃に特別な力を持っていると告げられた平凡な女性のロテ・フレールは、王子と結婚することとなったのだけれど……。

魔法を使える私はかつて婚約者に嫌われ婚約破棄されてしまいましたが、このたびめでたく国を護る聖女に認定されました。

四季
恋愛
「穢れた魔女を妻とする気はない! 婚約は破棄だ!!」 今日、私は、婚約者ケインから大きな声でそう宣言されてしまった。

愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。

梅雨の人
恋愛
私にはイザックという愛しの婚約者様がいる。 ある日イザックは、隣国の王女が私たちの学園へ通う間のお世話係を任されることになった。 え?イザックの婚約者って私でした。よね…? 二人の仲睦まじい様子を見聞きするたびに、私の心は折れてしまいました。 ええ、バッキバキに。 もういいですよね。あとは好きにさせていただきます。

なんか美少女が転校してきて、チラチラ見てくるんだが

黒の底力
恋愛
平凡な毎日を過ごしていたとある男子高校生に降りかかる様々な幸運なのか災難なのか、現実ではほぼあり得ないストーリー展開に全米が泣いた・・・(かもしれない) 小説家になろうでも投稿しています

自分の欲望を満たす為に妃となるはずの私を生贄にした王子は、その身を滅ぼしました。

coco
恋愛
自分の欲望を満たす為、いずれ妃となる私を生贄にした王子。 そのせいで、自身が破滅する事になるとも知らず…。

さようなら婚約者。お幸せに

四季
恋愛
絶世の美女とも言われるエリアナ・フェン・クロロヴィレには、ラスクという婚約者がいるのだが……。 ※2021.2.9 執筆

執着はありません。婚約者の座、譲りますよ

四季
恋愛
ニーナには婚約者がいる。 カインという青年である。 彼は周囲の人たちにはとても親切だが、実は裏の顔があって……。

婚約破棄されてしまった件ですが……

星天
恋愛
アリア・エルドラドは日々、王家に嫁ぐため、教育を受けていたが、婚約破棄を言い渡されてしまう。 はたして、彼女の運命とは……

処理中です...