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前編
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「君と生きてゆく未来を想像できなくなった。よって、婚約は破棄とする。君とはこれでおしまいだ、さよなら」
ある日のこと、赤毛の婚約者オードレインスが急に呼び出してきたので、珍しいなと思いつつ彼の家へと向かった。
というのも、彼は婚約者である私を愛してはいなかったのだ。
彼はこれまで一度も私に優しい言葉をかけはしなかった。そしてほぼ放置であった。嫌なことを言ってくる、といったことはなかったけれど、だからといって良いことを言ってくるわけではなかった。ほぼ無であった。
で、珍しく呼び出されたと思ったら、これだ。
「婚約破棄……ですか?」
「ああそうだ」
「どうして……?」
「好きになれないからだ。君のようなぱっとしない女性には興味を持てないんだ」
薄々気づいてはいたけれど、いざこうはっきりと言われてしまうと……どことなく切ないような感覚もある。
もっとも、彼が私をどうでもいいと思っていることなんて分かっていたことなのだけれど。
でも、せっかく婚約者同士になったのだからもう少し仲良くなれたら良かったのに、とは思ってしまう。せっかく得られた縁だ、無駄にしたくなかった、とは思ったのだ。とはいえ、彼の中にはそのような思いは欠片ほどもないのだろうし、その事実に気づいてはいるのだけれど。
「そういうことだから、去ってくれるかな?」
「……はい」
「ありがとう。じゃ、さよなら」
こうして、彼との関係は終わってしまった。
ある日のこと、赤毛の婚約者オードレインスが急に呼び出してきたので、珍しいなと思いつつ彼の家へと向かった。
というのも、彼は婚約者である私を愛してはいなかったのだ。
彼はこれまで一度も私に優しい言葉をかけはしなかった。そしてほぼ放置であった。嫌なことを言ってくる、といったことはなかったけれど、だからといって良いことを言ってくるわけではなかった。ほぼ無であった。
で、珍しく呼び出されたと思ったら、これだ。
「婚約破棄……ですか?」
「ああそうだ」
「どうして……?」
「好きになれないからだ。君のようなぱっとしない女性には興味を持てないんだ」
薄々気づいてはいたけれど、いざこうはっきりと言われてしまうと……どことなく切ないような感覚もある。
もっとも、彼が私をどうでもいいと思っていることなんて分かっていたことなのだけれど。
でも、せっかく婚約者同士になったのだからもう少し仲良くなれたら良かったのに、とは思ってしまう。せっかく得られた縁だ、無駄にしたくなかった、とは思ったのだ。とはいえ、彼の中にはそのような思いは欠片ほどもないのだろうし、その事実に気づいてはいるのだけれど。
「そういうことだから、去ってくれるかな?」
「……はい」
「ありがとう。じゃ、さよなら」
こうして、彼との関係は終わってしまった。
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