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だが、その青年の姿を描いた紙を見て、レーナは拒絶。
「何このぶっさいく! レーナ、こんな変なのと婚約するなんて無理!」
「そ、そこを何とか……」
「お父様! すぐに断って! こんなぶっさい男と婚約していつか結婚するなんて、ぜーったいに嫌だから」
描かれている青年は、確かに、美形であることを誇れるような美形ではないような気もする。が、とても優しげな目もとが印象に残る人だ。目じりがやや下がり気味なのは、元々なのか、あるいは僅かに笑みを浮かべているからなのだろうか。いずれにせよ、見た人に悪印象を与えるような顔面ではない。
「それに! レーナはもう恋人いるから! 他の男と結婚とか無理っ」
「こ、恋人ッ!?」
「彼は凄い人なの。お母様は大資産家の娘、お父様は領地持ちの家の出で商売にも大成功してる。彼自身も領地管理の勉強をしつつ商売を始めてて、もうかなり成功しかかってるの」
それにしても、レーナに恋人がいるのは知らなかった。
なんだかんだでまだ幼いような気でいた。が、よくよく考えてみれば、彼女だってそれなりに年を重ねている。大人ではないけれど、恋人くらいいても不自然ではない。
「レーナは彼のお嫁さんになるから! このキモ男との話は断って!」
「あ、あぁ……」
お馴染みの我儘ぶりを全力で披露し、レーナは画の彼との婚約拒否。
すっかり困り果ててしまった父親は弱る。レーナに厳しいことを言うことはできず、しかしながら一方的に断るのも嫌で。悩み込んでしまっていた。
悩みに悩み、彼はついにこんなことを言ってくる。
「ニナ。この男性と婚約してくれないか」
「え……」
「本当はレーナへの話だったのだが、レーナはどうしても嫌だという。可愛いレーナに無理させることはできない。だからどうか、ニナ、お前が代わりに行ってほしい」
画を見る感じ、嫌な雰囲気はない。
根拠はないけれど……優しげな表情の彼となら親しくなれる気がする。
「分かりました」
「本当か!」
「はい」
「助かった……! 本当に! 感謝する……!」
頼みを受け入れた私は、父親に感謝の気持ちを告げられる。
とてつもなく久々のことだった。
けれども、正直、あまり嬉しくはなかった。残り物を押し付けられているようで良い気はしない。それに、都合の良い時だけ感謝してくる父親は、私が思っている本当の父親ではない。そんな彼に優しくされても、ちっとも嬉しくないのだ。
その後、私が代わりに婚約するという話は、あっという間にレーナの耳に届いた。
彼女は私を嘲笑っていた。余り物を押し付けられた可哀想なお姉様、とでも思っていたのだろう。彼女はそういう人間だ。私を見下すのがとにかく好き。
「何このぶっさいく! レーナ、こんな変なのと婚約するなんて無理!」
「そ、そこを何とか……」
「お父様! すぐに断って! こんなぶっさい男と婚約していつか結婚するなんて、ぜーったいに嫌だから」
描かれている青年は、確かに、美形であることを誇れるような美形ではないような気もする。が、とても優しげな目もとが印象に残る人だ。目じりがやや下がり気味なのは、元々なのか、あるいは僅かに笑みを浮かべているからなのだろうか。いずれにせよ、見た人に悪印象を与えるような顔面ではない。
「それに! レーナはもう恋人いるから! 他の男と結婚とか無理っ」
「こ、恋人ッ!?」
「彼は凄い人なの。お母様は大資産家の娘、お父様は領地持ちの家の出で商売にも大成功してる。彼自身も領地管理の勉強をしつつ商売を始めてて、もうかなり成功しかかってるの」
それにしても、レーナに恋人がいるのは知らなかった。
なんだかんだでまだ幼いような気でいた。が、よくよく考えてみれば、彼女だってそれなりに年を重ねている。大人ではないけれど、恋人くらいいても不自然ではない。
「レーナは彼のお嫁さんになるから! このキモ男との話は断って!」
「あ、あぁ……」
お馴染みの我儘ぶりを全力で披露し、レーナは画の彼との婚約拒否。
すっかり困り果ててしまった父親は弱る。レーナに厳しいことを言うことはできず、しかしながら一方的に断るのも嫌で。悩み込んでしまっていた。
悩みに悩み、彼はついにこんなことを言ってくる。
「ニナ。この男性と婚約してくれないか」
「え……」
「本当はレーナへの話だったのだが、レーナはどうしても嫌だという。可愛いレーナに無理させることはできない。だからどうか、ニナ、お前が代わりに行ってほしい」
画を見る感じ、嫌な雰囲気はない。
根拠はないけれど……優しげな表情の彼となら親しくなれる気がする。
「分かりました」
「本当か!」
「はい」
「助かった……! 本当に! 感謝する……!」
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けれども、正直、あまり嬉しくはなかった。残り物を押し付けられているようで良い気はしない。それに、都合の良い時だけ感謝してくる父親は、私が思っている本当の父親ではない。そんな彼に優しくされても、ちっとも嬉しくないのだ。
その後、私が代わりに婚約するという話は、あっという間にレーナの耳に届いた。
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