熱い想いに燃える青年は頑張れる!〜たとえそっけなくされても〜

四季

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前編

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「アナベル・フロスティさん! 貴女が好きです! 結婚してください!」
「お断りします」

 アナベル・フロスティは今世紀最高の美女と呼ばれている、資産家の娘である。

 生まれ持った立ち位置とその優れた容姿ゆえ、嫉妬されることもあるが、異性からの人気は絶大である。
 ……と言っても、本当に行動に移すところまで至る者は少ないのだけれど。

「ではせめて気持ちを伝えさせてください!」
「結構です」

 ちなみに今は、アナベルは、一人の青年からプロポーズされている。

「いや待って! それは酷い!」
「帰ってください」

 そんな幸福そのものに見えるアナベルにも悩みはある。義母のことである。義母エリカテリーナは、数年前に父親が再婚した女性。整った容姿と落ち着いた雰囲気を持つ女性なのだが、前妻の子であるアナベルのことを気に入っていない。

 エリカテリーナは、ことあるごとにアナベルにいちゃもんをつける。

 実父も、エリカテリーナに嫌われることを恐れて、あまり強いことを言えない。そのため、エリカテリーナはやりたい放題。罵るのも嫌がらせをするのも、自由自在なのだ。

「少しくらい聞いてくださいよ! お願い! お願いします!」
「お断りします」
「なぜそんなに頑ななのですか!? ……どうか話を聞いてください。少しで構いませんので」
「プロポーズされている、なんて、明らかにしたくないのです」

 アナベルが発した答えに、青年はきょとんとする。

「……何か理由が?」
「そういう話が義母の耳に入ると、また、色々余計なことを言われるのです。それが困るのです。分かっていただけましたか? 分かったなら、帰ってください」
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