弱小転移者の戦旅譚

ぶなしめじ

文字の大きさ
上 下
4 / 29
一章 スタートライン

基礎知識を詰め込もう!

しおりを挟む
 冒険者組合を出た俺はエリスに連れられて人気のない薄暗い道を歩いていた。
 「はぁ・・・。魔法使いたかったな」
 「こればかりはご愁傷さまとしか言えませんね・・・」
 エリスは苦笑を浮かべている
 ま、まあ魔力が流れたおかげで身体能力が4倍になったんだし・・・。 ん? じゃあ俺の魔力量で4倍だからそれ以上の人はもっと動けるのか?

 「そんなことはないですよ。既存の筋肉量の4倍までしか身体能力は上がらないという計算結果が出てます」
 ふーん・・・。 あれ? 俺何もしゃべってないよね?

 「はい。読心魔法を使いました」
 おお、そんな魔法があるのか! でもあまり使う時無いんじゃない?
 「いえいえ。思考が読めると戦闘が有利になりますよ。相手の次の一手が分ったり、味方との会話を相手に聞かれなくなるので、あって損はないです」

 「なるほどな。・・・で、今から何処に行くんだ?」
 薄暗くて人気のない道・・・。その単語は少し卑猥だな。
 俺はエリスの体部分を見てみる。
 ・・・エリスは意外と胸があるのに体が細く、見た感じ太ももとか柔らかそうだから余計にそっち方面の事を考えてしまう・・・。
 「レクトさん?まだ読心魔法使ってますよ?」
 エリスはジト目で俺を見つめている。
 この世界にプライバシーはないのだろうか?

 「あって無いようなものですよ。男性だから仕方ないのかも知れませんが、不用意にそういった事を考えるのはおすすめしません。・・・・・・今から行くのはエルフィム魔法図書館ですよ。魔法書や歴史書の他にも、料理本や雑誌など様々あります」
 ん~、俺はあまり関係無さそうだな。エリスの用事か。

 「いえ、図書館に行くのはレクトさんのためです。これから戦う機会があると思うのでこの世界の武器や魔物、魔法などについて勉強して頂きたいとおもいまして」
 「よく俺が戦闘系の人間だってわかったな」
 「だって、この腰に付いている物って武器ですよね? 護身用かも知れませんが。でもレクトさんだって戦いたいとか思ってません?」
 まあ、早くこの体に慣れたいとはおもってるけど。

 そんなことを話しながら図書館のエルフィム魔法図書館と書かれた建物の前にやって来た。白を基調とした舘だが、扉の前には2人の兵士が立っている。そして近くには看板がある。

 「関係者以外に立ち入り禁止って書いてあるけど大丈夫?」
 「問題無いですよ。少し待ってて下さいね。話してきます」
 言われた通り3分ほど待っているとエリスから手招きがあったため図書館に向かった。横にいた警備をしている兵士の顔を見てみると何故か真っ青だったが気にしないことにした。

 中は俺の知る図書館と変わりはないが、本が浮いていたり、木でできた人型生物がいたりした。エリス曰くその人型生物はウッドゴーレムらしい。
 
 俺達は魔法書を手に取り勉強を始めた。
 まず、魔法とはこの世界では当たり前に使えるものらしい。空気中に含まれる魔力を体内に取り込み、体内の魔力で魔法を使用する。この行為は体に空気を吸い込み、吐き出すという事と同義らしい。

 魔法には2つ種類があり、体外で大規模な現象を起こす汎用魔法と体内で小規模な現象を起こす基礎魔法がある。
 基礎魔法は自分の身体能力を強化したり、五感を鋭くするなどといった魔法だ。基礎魔法は誰でも使える魔法らしく、実際俺も視力強化を使ってみたが問題なく発動出来た。
 
 そして汎用魔法は火、水、風、雷、闇、光の六属性の属性魔法、召喚、転移、回復といった属性の無い魔法を特殊魔法と呼ぶらしい。エリス曰くこちらの方が重要らしく、汎用魔法は攻撃系の魔法が多いため、戦闘時に使うのはほとんど汎用魔法らしい。ちなみに魔法適性は汎用魔法六属性のものである。

 戦闘時には汎用魔法が主に使われるが、基礎魔法を使う人でも強い人いるという。魔法師序列五位のベルは身体能力強化を使い、剣と接触型の属性魔法で戦うというスタイルらしい。
 多分俺もそのスタイルになるだろう。

 魔法にはそれぞれにランクがあり、第一位魔法から上に第七位魔法まであるらしい。第一位がほとんどの生物が使用出来るものに対して第七位は、魔法への適性が無い生物には使用出来ないとされている。基本的に位が上がると威力は上がると考えて良いらしい。
 
 次に土地だ。この国はバルネスト大陸の最も東に位置しており、技術的にもそこそこ栄えているという。そして、この国から見て西側にはフランデル帝国、北側には獣人の国であるタリナザス王国、南側にはガルデン都市国家連合があるという。

 魔物に関してはゴブリンや、オーガといった下位種や中位種、ドラゴンや、リッチ等の上位種、悪魔や神霊等の超級種について聞かされた。
 言葉で強さを表すと、
 下位種
 
 ・一般人10人が武器を持って戦うと倒せる強さ。
 ・一般冒険者は一人でも簡単に倒せる。
 中位種

 ・一般冒険者5、6人で倒せる強さ。
 ・一流冒険者は難なく倒せる。
 上位種

 ・一流の冒険者50人でやっと倒せる強さ。
 ・だいたいが魔法師序列二十位前後くらいの強さ。
 ・倒すと結構な騒ぎになり、滞在中の町から褒賞金がでる。
 超級種
 
 ・死なずに逃げきれたら超幸運。
 ・出くわしたら国家の危機。
 ・意思を持つ災害。

 と、されている。超級種は第七位魔法を軽々と使用し三十年前、この国に現れたアムネルと言う悪魔の進行により壊滅的な被害を受けたとされている。現在も悪魔アムネルは討伐されていないらしい。
 他にも魔王と呼ばれる存在やがいたり、龍王と竜王がいたりなどとても幅広い。

 武器に関して言えば剣や斧言ったものがほとんどでランチャーや銃といったものはないらしい。ただ、魔法の力が付与された道具があるという。
 一応、銃を持つ俺にアドバンテージはあるが、まだ魔法は未知数なので慎重に動きたいところだ。

 「こんなところですかね。魔法や魔物は実際に戦わないと分からない部分が多いので、後々確認しましょう。魔法の数ですが、今あるので17000ほどだと言われています。ただ、戦闘でよく使われる物は400ほどなのでその辺りを覚えておくといいかも知れません」

 400・・・。 結構多くないか?

 「まあざっとこんなところですか。そろそろ3時になりますので帰りましょう。あまり遅いと暗くなって野盗に出くわすかもしれないので」
 「ああ。分かった。今本を片付・・・」
 ける必要はないようだ。恐らく飛行魔法だろう。元々あった場所に本が勝手に飛んでいく。
 そんな光景を見ながら俺達は図書館を出て馬車に向かった。

 
 それから数分後。まだ薄暗い道を歩いていた時だった。
 嗅ぎ覚えのある臭いが近くの路地から漂ってくる。生々しく、鉄っぽい臭い・・・・・・。なんだっけ?
 俺がそんなことを考えていると、エリスが先に答えを口にした。
 「血の臭いしません?」
 っ!?
 「そうだ! 血だ! どうするエリス?」
 「厄介事って感じですね。止めにいきますか?」
 エリスは終止笑顔だ。何も変わらないこの笑顔は町中で見せる笑顔の様な優しさが溢れているものとは違い、狂喜が漏れ出ているような笑顔で逆に怖い。
 「行くぞ」
 俺達は血の臭いが漂う路地に入っていった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!

猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」 無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。 色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。 注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします! 2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。 2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました! ☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。 ☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!) ☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。 ★小説家になろう様でも公開しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

処理中です...