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プロローグ:タイムリープ
例の暴走トラック vs リュウ
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さて、リュウの海岸線バイクツーリングは続く。
次のコーナーはきつめの右コーナーである。が、登りなので難易度はさほど高くない。減速しながらコーナーに差し掛かると、センターラインを割り込まないよう注意しながらリュウはゆっくりと車体を右に寝かせた。リュウはアクセルを軽く開いて車体に安定を与えると、シュプールを描くようにコーナーを回った。
視線は常にコーナーの最も先におく。リュウは登り右コーナーを回っているので、反対車線は下り左コーナーということになる。コーナーの中盤に差し掛かったリュウの視界に飛び込んで来たのは、下り勾配でスピードが乗り過ぎてしまい、コーナーを回り切れず、大きく膨らんでリュウの正面に飛び出してきた暴走トラックであった。
「あ、死んだかも…。」リュウは全身で恐怖を覚えた。
センターラインを大きく割り、コーナリング途中のリュウに突っ込んでくるトラック。リュウはべったりと倒していた車体を立てて起こし、フルブレーキングしながら道路の端への避難を試みる。目の前に迫ったトラックの運転席のドライバーが、口を大きく開け、恐怖で歪んだ表情でリュウを見ている。
ずさささささ。リュウは落ち葉が茂る路肩の、車を3、4台は縦列駐車できそうなスペースに突っ込み、ガードレールに接触する寸前で停止した。直後に真横をトラックが轟音を立てて通り過ぎていく。
間一髪。リュウはトラックとの衝突もガードレールとの接触も転倒も、全てをまぬかれることができた。
「ふーっ。」リュウはバイクのサイドスタンドを出し、エンジンを切って振り返った。暴走トラックは峠を降りて行き、やがて次のコーナーの向こうに消えていった。
「死ぬかと思った。」リュウはヘルメットを脱いだ。ぱっちりした丸い瞳、くっきりした二重、長いまつ毛、高い鼻、小さな顔、染めていないが茶色がかったクセ毛。若い頃はなかなかの美形であったことが想像できる風貌である。が、リュウは童貞である。
「危うくDTのまま死ぬところだったな。」リュウは呟いた。
「まぁこの先どんな死に方するにせよ、DTのまま死ぬことには変わりないけどな。」リュウはへへへと笑った。
「この歳じゃな。エイジング対策しても、頑張ってやっと50代の風貌だもんな。さすがに女子には相手にされないよ。」
「まぁバイクで峠攻めができるから満足してるけど。昔は俺くらいの歳だと免許返納してたらしいからな。」
横をスポーツカーが走り過ぎていった。運転しているのは若い男で、助手席には彼女らしい女の子が座っていた。
「あ~、俺も若い頃女の子と付き合ってみればよかったなぁ。」休憩し心臓のドキドキがおさまると、リュウは再びヘルメットを被った。
「でもどうやって女の子と知り合えばよかったんだ?俺の若い頃は、インターネットも無かったしなぁ。」リュウは女の子と付き合う機会がなかったことの言い訳にした。
「それでも若い頃に戻って、やり直してみたいなぁ…。」リュウはバイクを発進させた。
峠道はやがて下りへと変わった。緩やかなカーブ。カーブミラーに映る対向車のカゲは無い。なんということもないコーナーである。
リュウはゆっくりと車体を寝かせてアスファルトにシュプールを描いた。そのとき、茂みから野うさぎが飛び出した。
「!!!」リュウは急ブレーキをかけた。転倒しアスファルトの上を滑るバイクとリュウ。リュウの記憶にあるのはここまでである。西暦2052年春のことであった。
次のコーナーはきつめの右コーナーである。が、登りなので難易度はさほど高くない。減速しながらコーナーに差し掛かると、センターラインを割り込まないよう注意しながらリュウはゆっくりと車体を右に寝かせた。リュウはアクセルを軽く開いて車体に安定を与えると、シュプールを描くようにコーナーを回った。
視線は常にコーナーの最も先におく。リュウは登り右コーナーを回っているので、反対車線は下り左コーナーということになる。コーナーの中盤に差し掛かったリュウの視界に飛び込んで来たのは、下り勾配でスピードが乗り過ぎてしまい、コーナーを回り切れず、大きく膨らんでリュウの正面に飛び出してきた暴走トラックであった。
「あ、死んだかも…。」リュウは全身で恐怖を覚えた。
センターラインを大きく割り、コーナリング途中のリュウに突っ込んでくるトラック。リュウはべったりと倒していた車体を立てて起こし、フルブレーキングしながら道路の端への避難を試みる。目の前に迫ったトラックの運転席のドライバーが、口を大きく開け、恐怖で歪んだ表情でリュウを見ている。
ずさささささ。リュウは落ち葉が茂る路肩の、車を3、4台は縦列駐車できそうなスペースに突っ込み、ガードレールに接触する寸前で停止した。直後に真横をトラックが轟音を立てて通り過ぎていく。
間一髪。リュウはトラックとの衝突もガードレールとの接触も転倒も、全てをまぬかれることができた。
「ふーっ。」リュウはバイクのサイドスタンドを出し、エンジンを切って振り返った。暴走トラックは峠を降りて行き、やがて次のコーナーの向こうに消えていった。
「死ぬかと思った。」リュウはヘルメットを脱いだ。ぱっちりした丸い瞳、くっきりした二重、長いまつ毛、高い鼻、小さな顔、染めていないが茶色がかったクセ毛。若い頃はなかなかの美形であったことが想像できる風貌である。が、リュウは童貞である。
「危うくDTのまま死ぬところだったな。」リュウは呟いた。
「まぁこの先どんな死に方するにせよ、DTのまま死ぬことには変わりないけどな。」リュウはへへへと笑った。
「この歳じゃな。エイジング対策しても、頑張ってやっと50代の風貌だもんな。さすがに女子には相手にされないよ。」
「まぁバイクで峠攻めができるから満足してるけど。昔は俺くらいの歳だと免許返納してたらしいからな。」
横をスポーツカーが走り過ぎていった。運転しているのは若い男で、助手席には彼女らしい女の子が座っていた。
「あ~、俺も若い頃女の子と付き合ってみればよかったなぁ。」休憩し心臓のドキドキがおさまると、リュウは再びヘルメットを被った。
「でもどうやって女の子と知り合えばよかったんだ?俺の若い頃は、インターネットも無かったしなぁ。」リュウは女の子と付き合う機会がなかったことの言い訳にした。
「それでも若い頃に戻って、やり直してみたいなぁ…。」リュウはバイクを発進させた。
峠道はやがて下りへと変わった。緩やかなカーブ。カーブミラーに映る対向車のカゲは無い。なんということもないコーナーである。
リュウはゆっくりと車体を寝かせてアスファルトにシュプールを描いた。そのとき、茂みから野うさぎが飛び出した。
「!!!」リュウは急ブレーキをかけた。転倒しアスファルトの上を滑るバイクとリュウ。リュウの記憶にあるのはここまでである。西暦2052年春のことであった。
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