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マオの実験、想定外
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「倫太郎くん、いますかー?」
今ならあの名探偵の気持ちわかるよ。うん。今なら、あれれ~?おかしいぞ~?って言える気がする。
こんな姿なため、倫太郎の家へ訪問してみてもマオと名乗ることができない。名乗ってしまったら、きっと騒ぎになる。もしかしたら、倫太郎の父さんなんかは厳格な人間だから、なに馬鹿なことを言っていると追い返されてなにも聞けないなんてことになるかも。
そんな訳だから、見た目通りの幼い子どもを演じてみている。
「倫太郎……?」
久しぶりに見た倫太郎の父さん……おじさんは、弱々しく見えた。
頬がこけてしまっていて、目元には真っ黒なくまが。
「お前さんは誰だね。倫太郎を、知っているのか?なぁ……」
きっと倫太郎を含めたあのクラスの生徒たちは召喚されてしまったのだから、見つける手がかりなんてなかったはずだ。
だからなんだろう。
オレは三才くらいに見える。そんなオレが一人で行方不明の息子はいるかと訪ねてきたのだ。わざわざ訪ねてきたのだから、親密な関係なのではないだろうか。行方不明前の息子はこのような子どもの話をしたことはなかったのだから。
すがるような目つきでオレを見つめてくる。かなり参ってしまっているようだ。
「倫太郎くんは帰ってくるよ。きっとすぐに……」
このときばかりは時間の歪みがありがたい。オレがいくら時間をかけようと、こちらではそのかけた時間のほんの少ししかたっていないのだから。
「ほ、本当か……!」
「だから待っていてあげて。倫太郎が帰ってきたときおじさんがそんなんだと、倫太郎が悲しくなっちゃうよ?」
「そ、そうだな……」
正常な状態じゃないおじさんは現在細かいことを気にしない、否、気を回していられない。オレがつい倫太郎って呼び捨てにしちゃったことも、おかしな発言をする子どもがいてもスルーできるのである。
「お前さんは不思議だな。倫太郎の友人に似ている。全く似ていないし、子どもなのにな」
「んー……じゃあ、さようなら。おじさん」
スルーできているはずなんだけど、直感なんですかね。オレにマオを見ているようだった。すごいね、さすがおじさんだ。
おじさんと別れた。
いやーこんな感じなんだね。わが子を心配して、夜も眠れていない。
願わくばこんなふうに全員がわが子を心配してくれているといいね。
倫太郎の家が終わって、次に行くのは……。
「キミ、親御さんは?」
わーお巡りさんだ。定型文を真面目な顔で、オレの方をポンと叩いてきた。
只今の時間、日が一番高い一時くらい。幼稚園とかが終わるような時間だけど、一人で歩いているのはおかしい。迷子なのだろうかなんて思われているんだろうな。
「ひゃっ!う、うわぁー!」
小さければ何でも……だいたいは許される!ってことで、驚いたふりをして逃げ出してみようと思う。
いや、オレじゃなくてもそういう反応する小さい子はいると思うよ?だって、後ろからいきなり方を叩かれて、声もかけられたんだよ。怖いよね。不審者で誘拐されちゃうかもなんだから。
特に考えずに走り出したもので、お巡りさんを撒いた頃には見慣れない公園に来ていた。遊具なんかが真新しく見えるから、召喚されたあとにできた公園かな。
ふふふ……公園も懐かしく感じるね。よく遊んだなぁ。
「ここどこだよ。帰れないじゃん」
少しだけなのに町並みは変わっている。同じ場所のはずなのに違う場所のよう。
「迷っちゃったの?家どこ?送ってあげるから」
「……アンタ誰?」
「言葉づかいわるいねぇ……キミ、お名前は?」
そこの女の子、ごめんね。つい……あんまりにも気配がなかったものだからさ。お前は誰だ状態でして。
「マオ。アンタは?」
マオという名前は珍しい名前でもないから、偽名を考える必要はなかった。
「私?結城リオよ」
珍しいこともあるもんだね。名前が一字違いだよ。マオとリオで名前だけなら、兄弟ですかって聞かれそう。
「マオくんね。で、家はどこなの?」
サバサバした性格のようで。
「ないよ」
「はぁ?家出でもしたの?しょうがないわねー……夕方になったら帰るのよ?」
「は……?あ、えっと?」
リオは何を考えたのか、オレの手を掴んであるきだした。小さい体は抵抗するものの、少女の体の大きさには負けてしまった。
困るんだけど!
オレはさっさかクラスメイトたちのいえを回って帰らないとなのに。
放っておいてくれないかなー。
そんなことを考えていた時期がオレにもありました。
「ここは……」
リオが連れてきたのは途中からなんとなく予想はついていたが、結城家だった。
え、なんなの?どういうこと?混乱してきた。
「私の家よ……っていっても私は養子なんだけどねぇ」
オレに女のきょうだいはいなかったはずだと考えていたが、養子なら納得できる。
「マオくん、マオさんと名前一緒だね」
「心配してるの?」
「そりぁあね。私のお兄ちゃんだもの」
本当になんなの⁉
「いつから?」
「いつからって……私が養子になった?」
「そうだ」
訳わかんない。実験は順調に進むものだと思っていたのに……なに、この予想していなかった展開!反応に困るんだけど!
「二年前?」
「嘘つき」
二年前はまだオレ、地球にいたもん。ありえない。
「正解。なんでわかったの?お話しようよ、マオくん」
リオは食えない顔でオレをヒョイと抱き上げて家の中へ入っていった。
お巡りさん、さっきは逃げたりしてごめんなさい。もうしないから、この娘どうにかしてください。
今ならあの名探偵の気持ちわかるよ。うん。今なら、あれれ~?おかしいぞ~?って言える気がする。
こんな姿なため、倫太郎の家へ訪問してみてもマオと名乗ることができない。名乗ってしまったら、きっと騒ぎになる。もしかしたら、倫太郎の父さんなんかは厳格な人間だから、なに馬鹿なことを言っていると追い返されてなにも聞けないなんてことになるかも。
そんな訳だから、見た目通りの幼い子どもを演じてみている。
「倫太郎……?」
久しぶりに見た倫太郎の父さん……おじさんは、弱々しく見えた。
頬がこけてしまっていて、目元には真っ黒なくまが。
「お前さんは誰だね。倫太郎を、知っているのか?なぁ……」
きっと倫太郎を含めたあのクラスの生徒たちは召喚されてしまったのだから、見つける手がかりなんてなかったはずだ。
だからなんだろう。
オレは三才くらいに見える。そんなオレが一人で行方不明の息子はいるかと訪ねてきたのだ。わざわざ訪ねてきたのだから、親密な関係なのではないだろうか。行方不明前の息子はこのような子どもの話をしたことはなかったのだから。
すがるような目つきでオレを見つめてくる。かなり参ってしまっているようだ。
「倫太郎くんは帰ってくるよ。きっとすぐに……」
このときばかりは時間の歪みがありがたい。オレがいくら時間をかけようと、こちらではそのかけた時間のほんの少ししかたっていないのだから。
「ほ、本当か……!」
「だから待っていてあげて。倫太郎が帰ってきたときおじさんがそんなんだと、倫太郎が悲しくなっちゃうよ?」
「そ、そうだな……」
正常な状態じゃないおじさんは現在細かいことを気にしない、否、気を回していられない。オレがつい倫太郎って呼び捨てにしちゃったことも、おかしな発言をする子どもがいてもスルーできるのである。
「お前さんは不思議だな。倫太郎の友人に似ている。全く似ていないし、子どもなのにな」
「んー……じゃあ、さようなら。おじさん」
スルーできているはずなんだけど、直感なんですかね。オレにマオを見ているようだった。すごいね、さすがおじさんだ。
おじさんと別れた。
いやーこんな感じなんだね。わが子を心配して、夜も眠れていない。
願わくばこんなふうに全員がわが子を心配してくれているといいね。
倫太郎の家が終わって、次に行くのは……。
「キミ、親御さんは?」
わーお巡りさんだ。定型文を真面目な顔で、オレの方をポンと叩いてきた。
只今の時間、日が一番高い一時くらい。幼稚園とかが終わるような時間だけど、一人で歩いているのはおかしい。迷子なのだろうかなんて思われているんだろうな。
「ひゃっ!う、うわぁー!」
小さければ何でも……だいたいは許される!ってことで、驚いたふりをして逃げ出してみようと思う。
いや、オレじゃなくてもそういう反応する小さい子はいると思うよ?だって、後ろからいきなり方を叩かれて、声もかけられたんだよ。怖いよね。不審者で誘拐されちゃうかもなんだから。
特に考えずに走り出したもので、お巡りさんを撒いた頃には見慣れない公園に来ていた。遊具なんかが真新しく見えるから、召喚されたあとにできた公園かな。
ふふふ……公園も懐かしく感じるね。よく遊んだなぁ。
「ここどこだよ。帰れないじゃん」
少しだけなのに町並みは変わっている。同じ場所のはずなのに違う場所のよう。
「迷っちゃったの?家どこ?送ってあげるから」
「……アンタ誰?」
「言葉づかいわるいねぇ……キミ、お名前は?」
そこの女の子、ごめんね。つい……あんまりにも気配がなかったものだからさ。お前は誰だ状態でして。
「マオ。アンタは?」
マオという名前は珍しい名前でもないから、偽名を考える必要はなかった。
「私?結城リオよ」
珍しいこともあるもんだね。名前が一字違いだよ。マオとリオで名前だけなら、兄弟ですかって聞かれそう。
「マオくんね。で、家はどこなの?」
サバサバした性格のようで。
「ないよ」
「はぁ?家出でもしたの?しょうがないわねー……夕方になったら帰るのよ?」
「は……?あ、えっと?」
リオは何を考えたのか、オレの手を掴んであるきだした。小さい体は抵抗するものの、少女の体の大きさには負けてしまった。
困るんだけど!
オレはさっさかクラスメイトたちのいえを回って帰らないとなのに。
放っておいてくれないかなー。
そんなことを考えていた時期がオレにもありました。
「ここは……」
リオが連れてきたのは途中からなんとなく予想はついていたが、結城家だった。
え、なんなの?どういうこと?混乱してきた。
「私の家よ……っていっても私は養子なんだけどねぇ」
オレに女のきょうだいはいなかったはずだと考えていたが、養子なら納得できる。
「マオくん、マオさんと名前一緒だね」
「心配してるの?」
「そりぁあね。私のお兄ちゃんだもの」
本当になんなの⁉
「いつから?」
「いつからって……私が養子になった?」
「そうだ」
訳わかんない。実験は順調に進むものだと思っていたのに……なに、この予想していなかった展開!反応に困るんだけど!
「二年前?」
「嘘つき」
二年前はまだオレ、地球にいたもん。ありえない。
「正解。なんでわかったの?お話しようよ、マオくん」
リオは食えない顔でオレをヒョイと抱き上げて家の中へ入っていった。
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