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『榊容疑者の情報は完全に伏せられていると言うことでしょうか?』
『これだけの事件の容疑者なんですからね、騒ぎにならないように、情報の制限がなされているんでしょう』
『これだけの事件だからこそですよ!被害者の遺族も相当な数になるんだ、情報を開示するべきだ!』
雑賀さんのGT-Rは私は車のことなどからきしなので、良くはわからないけれど、少し昔の車なんだろうなってくらいはわかるつもりだ。
その証拠に、カーナビ付きのオーディオではなく、ただのオーディオが装備されている。
なのでとりあえずラジオを聞くことにしていた。
GT-Rの中で聞いているラジオのニュースも、どの局を回しても、榊の話題ばかり。
意味の見えない議論を繰り返すばかりだ。
「すまないな、女性を助手席に乗せることを考えずに、趣味に走った車にしてしまったんだ。だから、年式も20年位前の車でテレビはおろか、ナビも付けてない」
「いえ、私は機械はホントに駄目で運転も出来ないくらいなんです、免許はなんとか持ってますけど。だから、この車が見た目でカッコいいなと思うくらいです」
「女性の君に言われると助かるよ」
私のホテルは警視庁から少し離れた場所で取ってある。
どうにか騒ぎの中心からは離そうとしてくれてはいるらしい。
近くの首都高速のインターへ向かう途中だけど、車がほとんど進まない。
ずっと先までズラリと渋滞する車の列が見えるだけだ。
今日は酷く道が混んでいる。
確かにここ一週間は一連の騒ぎで確かに今は車の量は激しく多くなっている。
けれど、今日の車の混み方はさらに酷くなっている。今の時刻は午後2時。通勤ラッシュや帰宅ラッシュの時間ではまだ無い。
この先で事故でも起きてるみたい。
20分程動かない車内の中に閉じ込められていると、雑賀さんのiPhoneが鳴った。
「雑賀です……」
雑賀さんは小声で話す。
私はやることがないので、窓から外を眺めていると、歩道の上を多くの人が歩いていた。
平日の昼下がりのオフィス街、歩く人と言えばスーツを着こんだサラリーマンやOLの姿が大半を閉めている。
その光景をぼんやり眺めていると。
一人のスーツの男性と一人のOLがぶつかった。
歩道の上には多くの人が歩いているので、そんなこともあるんだろうと見ていると。
OLが力を失ったように地面に崩れ落ちた。
「えっ……!?」
私はあわてて窓から身を乗り出す。
「神楽坂さん、君の上司の……」
「雑賀さん、あれ!!」
私はあわてて指を指す。
その先には。
その手にナイフを持ち、握るその手を紅く染めた男と、その男に刺され地に伏せる女性。
「嘘でしょ!?こんな場所で通り魔!?」
「神楽坂さん、救急車を頼む!!」
雑賀さんはそう言うと、通話中だったiPhoneを通話を切って私に投げ渡した後、スゴイ勢いで車外に飛び出した。
「君は車の中で待機だ!」
雑賀さんはナイフを未だに振り回す男の元へと駆け出していった。
『これだけの事件の容疑者なんですからね、騒ぎにならないように、情報の制限がなされているんでしょう』
『これだけの事件だからこそですよ!被害者の遺族も相当な数になるんだ、情報を開示するべきだ!』
雑賀さんのGT-Rは私は車のことなどからきしなので、良くはわからないけれど、少し昔の車なんだろうなってくらいはわかるつもりだ。
その証拠に、カーナビ付きのオーディオではなく、ただのオーディオが装備されている。
なのでとりあえずラジオを聞くことにしていた。
GT-Rの中で聞いているラジオのニュースも、どの局を回しても、榊の話題ばかり。
意味の見えない議論を繰り返すばかりだ。
「すまないな、女性を助手席に乗せることを考えずに、趣味に走った車にしてしまったんだ。だから、年式も20年位前の車でテレビはおろか、ナビも付けてない」
「いえ、私は機械はホントに駄目で運転も出来ないくらいなんです、免許はなんとか持ってますけど。だから、この車が見た目でカッコいいなと思うくらいです」
「女性の君に言われると助かるよ」
私のホテルは警視庁から少し離れた場所で取ってある。
どうにか騒ぎの中心からは離そうとしてくれてはいるらしい。
近くの首都高速のインターへ向かう途中だけど、車がほとんど進まない。
ずっと先までズラリと渋滞する車の列が見えるだけだ。
今日は酷く道が混んでいる。
確かにここ一週間は一連の騒ぎで確かに今は車の量は激しく多くなっている。
けれど、今日の車の混み方はさらに酷くなっている。今の時刻は午後2時。通勤ラッシュや帰宅ラッシュの時間ではまだ無い。
この先で事故でも起きてるみたい。
20分程動かない車内の中に閉じ込められていると、雑賀さんのiPhoneが鳴った。
「雑賀です……」
雑賀さんは小声で話す。
私はやることがないので、窓から外を眺めていると、歩道の上を多くの人が歩いていた。
平日の昼下がりのオフィス街、歩く人と言えばスーツを着こんだサラリーマンやOLの姿が大半を閉めている。
その光景をぼんやり眺めていると。
一人のスーツの男性と一人のOLがぶつかった。
歩道の上には多くの人が歩いているので、そんなこともあるんだろうと見ていると。
OLが力を失ったように地面に崩れ落ちた。
「えっ……!?」
私はあわてて窓から身を乗り出す。
「神楽坂さん、君の上司の……」
「雑賀さん、あれ!!」
私はあわてて指を指す。
その先には。
その手にナイフを持ち、握るその手を紅く染めた男と、その男に刺され地に伏せる女性。
「嘘でしょ!?こんな場所で通り魔!?」
「神楽坂さん、救急車を頼む!!」
雑賀さんはそう言うと、通話中だったiPhoneを通話を切って私に投げ渡した後、スゴイ勢いで車外に飛び出した。
「君は車の中で待機だ!」
雑賀さんはナイフを未だに振り回す男の元へと駆け出していった。
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