19 / 134
春の風物詩
6
しおりを挟むそして待ちに待った抽選が始まった。
これは不公平のない、公平に行われたと証明するために全ての領。つまりは国民全てが見られるようにテレビ石と言われる物を使った魔導具で映像に音や声と共に放映されている。だからこそ妾はここに来る必要がなかったのだ。
~♪~♪~♪
軽快な音楽と共に先ずは空の箱を出して中身が入っていないことをその場の者達で確認。もちろん魔導具で撮影をする。その後は幹部クラスの宮廷魔導師数名が魔法でそれぞれが違うものを施す。掛けた人はその類いを説明し、魔法感知だの反射だの結界だの。いつもならこれを映し出されたものをソファーで寛ぎ、お茶を飲みつつ見ていたのに……。
何故今年は綺麗(窮屈)なドレスを着て中々良い場所で立って見守らなければならないのか。
そして抽選箱の用意ができたら隣国4国の王様が登場し、挨拶がてらスピーチをする。それが終わると先ず1枚ずつ同じ封筒が積まれた所で種族を書き、魔人族やら獣人族等を各々が書き、魔導具に見せてから封筒にしまい、中へ入れた。
魔導師の反応はなし。
そこで4人の王がジャンケンをして勝ったらしい小人族の王様が1枚を引くとそれを見せつけてから中の紙をゆっくりと取り出した。そこには「魔人族」と書かれていて歓喜するかと思いきや皆は一様にため息か笑いをこらえるに二分していた。
父上と母上も然り、徐に嫌そうな顔をしている。
今、壇上では国の魔人族の代表が用意された封書の前で自分の種族を紙に書き、それを先程と同じ様に見せつけてから封書に入れて箱へ入れるを繰り返していた。吸血鬼の妾達の種族を代表して父上……と思いきや、本人がまず嫌がり……。母上も嫌がり、妾も嫌がった為にジェイルが代表して書きに行った。
全てが書き終わると小人族の王様以外の3人が順番に手を突っ込み満遍なく混ぜている。それが終わるとついに本日最大のメインイベントが始まる。ファンファーレが鳴り響き、それが止むと小人族の王様が手を突っ込んで1枚を選ぶ。
ゆっくりと見せつけるようにもしくは焦れったく取り出しては封書を見せつける。そして心得たように頃合いを見、魔道具の角度を考えて開くと1枚の紙を取り出した。
「今年の代表は……」
良いからさっさと言えよ! ……といつもの放送を見ている癖で悪態を言いそうになるのをグッと堪える。
「魔人族の吸血鬼!!」
その声と共に父上が床に崩れ落ちた。
「なんだ、またお前かよ……」
と、小人族の王が憐れみの目をして言い、
「おや、国の方針も変わらないでしょうから良いお付き合いができますね」
と、妖精族の王が笑顔で言い、
「これ、ホントにやる意味あるのかわからんが、風物詩といった所だな」
と、獣人族の王が納得した顔で言い、
「うひゃひゃひゃ! ひっ、うくくっ! マジでウケるなっ! 最強で最凶だな! お前の運は!!」
と、魔人族の王が爆笑していた。
『………………いつものことか……』
「やだ! やだーーーーっ! もう殿堂入りで抽選不参加にしてーーーーっ!!」
『だめ!! (やだ!!)』
魔人族の王様に父上は無理矢理頭に王冠を乗せられていた。そして獣人族の王に立派なマントを無理矢理つけられていた。
「今年の王様は変わらずでーーーーす!!」
わぁーー! と拍手されていた。ここで撮影は切られた。
「うぅ、リア~!」
「父上、戴冠おめでとうございます。ーーと言うことは妾も領主代理? 代行? は、変わらずですね? 349年目も日々邁進していこうかと思っております。遠い地から父上、母上の息災を祈りつつ、これにて失礼させていただきます」
丁寧に王様に挨拶をすると魔法で妾は自分の部屋に転移した。その場に残された両親は涙を流していたらしい……。
「やだ! やだーーーーっ! リアちゃんと一緒に暮らす~~っ!!」
人前で転移魔法を使ったので一時その場がざわついた事を後で帰ってきた学園長に聞くまで珍しい類いの魔法だとは知らなかった。
ちなみに学園長と奥方達が王都へ来ていたのは学園長は母上の頼んだ誘拐以外に妖精国の王の護衛を頼まれていたからで、奥方達を連れてきたのは知り合いから会わせろと言われたかららしい。まぁ、あまり祖国や実家に帰ってないみたいだからついでだったのだろう。
妾は今年もアメジール領の領主として頑張ります!
END
0
お気に入りに追加
278
あなたにおすすめの小説
異世界で神様に農園を任されました! 野菜に果物を育てて動物飼って気ままにスローライフで世界を救います。
彩世幻夜
恋愛
エルフの様な超絶美形の神様アグリが管理する異世界、その神界に迷い人として異世界転移してしまった、OLユリ。
壊れかけの世界で、何も無い神界で農園を作って欲しいとお願いされ、野菜に果物を育てて料理に励む。
もふもふ達を飼い、ノアの箱舟の様に神様に保護されたアグリの世界の住人たちと恋愛したり友情を育みながら、スローライフを楽しむ。
これはそんな平穏(……?)な日常の物語。
2021/02/27 完結
異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!
明衣令央
ファンタジー
糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。
一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。
だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。
そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。
この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。
2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。
“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか
まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。
しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。
〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。
その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。
【完結】ガラクタゴミしか召喚出来ないへっぽこ聖女、ゴミを糧にする大精霊達とのんびりスローライフを送る〜追放した王族なんて知らんぷりです!〜
櫛田こころ
ファンタジー
お前なんか、ガラクタ当然だ。
はじめの頃は……依頼者の望み通りのものを召喚出来た、召喚魔法を得意とする聖女・ミラジェーンは……ついに王族から追放を命じられた。
役立たずの聖女の代わりなど、いくらでもいると。
ミラジェーンの召喚魔法では、いつからか依頼の品どころか本当にガラクタもだが『ゴミ』しか召喚出来なくなってしまった。
なので、大人しく城から立ち去る時に……一匹の精霊と出会った。餌を与えようにも、相変わらずゴミしか召喚出来ずに泣いてしまうと……その精霊は、なんとゴミを『食べて』しまった。
美味しい美味しいと絶賛してくれた精霊は……ただの精霊ではなく、精霊王に次ぐ強力な大精霊だとわかり。ミラジェーンを精霊の里に来て欲しいと頼んできたのだ。
追放された聖女の召喚魔法は、実は精霊達には美味しい美味しいご飯だとわかり、のんびり楽しく過ごしていくスローライフストーリーを目指します!!
聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件
バナナマヨネーズ
恋愛
聖女召喚に巻き込まれた志乃は、召喚に巻き込まれたハズレの方と言われ、酷い扱いを受けることになる。
そんな中、隣国の第三王子であるジークリンデが志乃を保護することに。
志乃を保護したジークリンデは、地面が泥濘んでいると言っては、志乃を抱き上げ、用意した食事が熱ければ火傷をしないようにと息を吹きかけて冷ましてくれるほど過保護だった。
そんな過保護すぎるジークリンデの行動に志乃は戸惑うばかり。
「私は子供じゃないからそんなことしなくてもいいから!」
「いや、シノはこんなに小さいじゃないか。だから、俺は君を命を懸けて守るから」
「お…重い……」
「ん?ああ、ごめんな。その荷物は俺が持とう」
「これくらい大丈夫だし、重いってそういうことじゃ……。はぁ……」
過保護にされたくない志乃と過保護にしたいジークリンデ。
二人は共に過ごすうちに知ることになる。その人がお互いの運命の人なのだと。
全31話
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる