吸血鬼領主~体は子供体型でも妾、大人じゃもん!~

けいき

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春の風物詩

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「あ、クリス。今日も本当に可愛いね。そのドレス似合ってるよ? やっぱりクリスには金と黒と暗赤が似合うね。いや、白とか淡い色味の服ももちろん可愛くて似合ってるけど、シックな色味は大人っぽく見えて良いね!」
「あー、それはどうも……。そろそろ首を絞める手を離したらどうじゃろう? なんと言うべきか……。うむ、なんじゃろうな……。其奴から魂が出始めてる気が……。さすがに王城で殺人はいかんと思うのじゃが……」
「え? 別にコイツは死んでもよくない? 生まれてから現在まで一切役に立ってないんだよ? コイツはこの国にとって必要なのゴミ以下なんだけど? それに俺の可愛いクリスをちんちくりんとか! 万死に値すると思う」

 ーーうん。断罪ごっこのあの少女の「ちんちくりん」の時に居なくてホントに本当によかった。あの館で殺人事件はやめて欲しい。

 でも一応、妾の家族らしいので何とか説得して手を離させることに成功した。一応首締めから解放された彼は床で咳き込み、急に呼吸したせいで噎せかえり、最終的には過呼吸のようになっている。そんな彼を何故か全員介助やら何やらをするでもなくただ静かに見つめていた。目が皆一様に冷たいのは気にしない。

「リアちゃん。私の可愛いクリスタリア~! 久しぶりだね~♪ さぁ、パパの所においで?」
「ヤじゃ! プラスイオンたっぷりの涙とヨダレの滝を発生させている奴とそんなヨダレにまみれた腕の中に飛び込むのは絶対にヤじゃ!」

 皆はまたしても現在の光景を冷たい目で見つめていた。そして父上は「あ、本当だぁ~」と低い声質で更に棒読みでそう言うと手に持っていたものを過呼吸で苦しんでいる彼に投げつけてから生活魔法で身に付けているものを含めて綺麗にするだけの魔法。《清浄クリーン》を自分の体に何度も何度も掛けていた。

「姉上、来てくれないのだと思ってました」
「あー、うん……。来るつもりはなかったんじゃけどなぁ……。それに出来れば妾はこんな変態が家族にいると言うことを知りたくはなかったのじゃが……」

 そして床に寝転んで嫌がりもせずに踏みつけられている男を見つめていた。しかも心地よいのか頬を赤くしてデレデレとした顔で床とジェイルの靴に頭を挟まれていて気持ち悪い。

「ーーこの分だと母上に鞭打ちされても悦ぶだけですかね……」
「あー、それは気持ち悪いね……。そうだ! じゃぁ、暗黒魔法の幻術で一番見たくないリアルな夢を見させる? 俺、最近暗黒魔法を一部取得したんだよね……」

 ジェイルが足をどけると愉しそうにルノアールが魔法をかけた次の瞬間、床に寝転んで悦んでいた彼が絶叫を発した。それを皆で少しばかり見守ると無言のまま虚空を見つめて静かに涙を流していた。そして父上が軽く蹴りあげて過呼吸と顎を外された山に強制的に移動させられた。

「うん、久しぶりに静かでいいね! やっぱりリアちゃんに会えない寂しさで子供を作っちゃったのが失敗だったのかなぁ……」
「父上。一応、妹? がアガアガと喚いてるので顎を戻してやったらどうじゃろ? ヨダレで床の絨毯もかなり汚れとるし、ドレスも凄いことになってるし……。これでは婚約者のなけなしの愛も冷めてしまうじゃろ? さすがに原型がわからん化粧直しもあるじゃろし? 髪もグチャグチャでやり直すのならやはり抽選までに終わらせた方が……」

 相手の婚約者が誰なのか知らんけども多分政略的で結び付き強化の為の婚約じゃから愛は無いに等しいけれど、それでも情を含む愛はあると思う。いや、あると思いたい。だからこそ、この化け物は見せたらダメじゃと思う……。

「それなら体調不良で部屋に閉じ込めておけばいいじゃない」
「それじゃと仕方なしに相手がお見舞いとか来るじゃろ? 妾、知らんよ? 来たときにアガアガとこの情けない顔見せられたときのショックは相当じゃと思う……。それが広まって結婚できなかったら死ぬまで養わないといけなくなるじゃろ? 父上が良いならそれでも構わないが、妾は面倒は見ないぞ?」

 仕方なく顎をパワープレイでジェイルがイヤそうにガッコン! と顎を戻し、尚且つ末っ子の魔法をルノアールが解き、更には次男? に回復の魔法をしてやると3人は急にワーワー喚き始めた。まぁ、妾を認めないとかそんな事だったが……。

「お前達? さっさと結婚して家から出ていってくれるかな? 私の子供はリアちゃんとジェイルだけで十分だよ……」
「あら、では旦那様。私はお相手の家の方々に婚期を早めるようにお話しを進めますね? 現状は白い結婚となりますが大丈夫でしょう……。もし離婚となっても家を出ている身ですし、優秀らしいので自分の力で何とかしますわよ。えぇ、バカの一つ覚えみたいに優秀だと毎日のように言ってるのですもの。出来ない筈がありませんわ」

 と、夫婦はニッコニッコと笑顔で仲良く話始めた。本当にそれで良いのか? と思うが子供である妾の口を挟むことではない。接点のまるでない妾が諌める立場でもない。なぜならばジェイル以外の弟妹がいたことを初めて知ったくらいだし……。初見で嫌われるとは我ながらなんとも言えないが仕方ない。

「父上! 母上も! 俺達が可愛くないのですか!? こんなちんちくりんと無愛想のどこがいいんですか!」
「え? お前達を可愛いとか一切思ったことないけど? 逆に疎ましい。死んで欲しいくらいには嫌い。この子達が可愛い理由? そんなのお前らと真逆な所だよ? 何せこの子達は地位に胡座をかくようなことしてないし? 実績もあるしね。逆にお前達は何かしたのかい? 与えられた仕事をしない。武術もそこそこ、魔術もそこそこ、知能もそこそこ。そこそこ、そこそこ、そこそこ! どれか1つだけでも努力してほしかったよ。そして金を使うだけ使ってバカなの?」

あ、コレ、塵積もじゃわ! 妾、しーらないっ!!









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