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小話《時系列関係なし突発短編》
アメジールさんちの……
しおりを挟むアメジールさんちの ジェイル君
このごろ少し変よ どうしたのかナ
休憩しようって 言っても
試作を見せるって 言っても
いつも答えは同じ 「あとで」
つまんないナァ
……ってことでーー。
「ジェイル、この頃少し変じゃぞ? どうしたのじゃ」
「あ、姉上……。あの、そろそろ膝から下りてくれると助かります……」
避けている気がするから座って気を緩めた瞬間を襲ったのじゃけど……。顔を真っ赤にして声も若干震えていたので額にそっと手を当てた。
「うーむ、熱はないみたいじゃなぁ……」
「あ、姉……姉上が……」
「……ん? ………………うっみゃぁぁぁっ! 誰かっ! 執事、執事~っ! お父さぁ~んっ!」
慌てて呼ぶと執事も慌てて側にやって来たらしく乱暴にドアが開かれた。
「はいはい、そんなに慌ててどうかしたんですか? ……おや」
「ジェイルが! ジェイルがぁ~っ!」
側に来た執事は妾を見て脇にズボッと腕を入れて持ち上げるなり一人用のソファーに座らせるとメイドが慌てて用意した布を手にとってジェイルの鼻に当てた。
「執事、ジェイルは病気なのじゃろか……。鼻血なんて……」
「………………思春期ですからねぇ~……。そっとしておいてあげましょうね」
「思春期ってなんじゃ?」
思わず首をコテンと倒すと何故かジェイルが気絶した。出血多量? 執事の押さえている布は真っ赤に染め上がっていた。
「リア様はしばらくジェイル様が落ち着くまでは面会謝絶にしましょうかね」
「なぬっ! そんなに悪いのか!?」
END
アメジールさんちの ジェイル君
このごろ少し変よ どうしたのかナ
大事にしていた ハンカチが
お部屋でなんだか ぬれていた
けさは元気になったかナ 「おはよう」
返事がない
「……という訳なんです」
「……そうですか。ありがとうございます。仕事に戻ってください」
この頃ジェイル様が変です。いや、理由は「思春期」なのはわかっている。しかもリア様が原因なのもわかっている。ジェイル様は理想がリア様っていうかなり重度のシスコンですからね。さすがの鈍感なリア様が変だと気がつき不意をつく攻撃が膝の上に対面で乗るという最終手段だったのも悪いですが……。
あぁ~……なんか面倒くさっ! 思春期、面倒臭い!
とりあえず落ち着くまではお父上のいる王都で暮らせと荷物をまとめて旅立たせたものの……。意図的に避けてたくせに居なくなったら居なくなったで2日目でおいおいと泣き暮らすとかどこの乙女だ、このやろう! 綺麗に纏めた髪を思わずかきむしりたくなるのをぐっと抑えてジェイル様の部屋へ歩き出す。
コンコンコンコン……。
「おや?」
返事がない。
END
アメジールさんちの ジェイル君
王都へ行ってた姉が 帰ってきたら
たちまち元気に なっちゃって
王都のおみやげ 持ってきた
お菓子の詰め合わせ スッゴク
甘いね
「いやぁ、一時はどうなるかと思ったわよねぇ~っ!」
「ホントホント! 泣き暮らし始めたときは署名活動するべきか本気で悩んだもの」
メイド達の休憩中。話のネタはつい前日までのジェイルによる思春期事変である。規模はかなり小さいのにこの家では大事件だったので事変である。
そもそも原因はわからないが急にこの家のとても小さくてキュートでお婆ちゃんみたいな口調のお人形さんことクリスタリア様を意識したせいとも言われている。小悪魔みたいな説明だが鈍感すぎて無意識に悪化させたともいう。
とりあえず側にいるのは苦痛だろうと落ち着くまでは離れさそうとクリスタリア様を王都に行かさせたら行かせたで2日目から泣き暮らすというウザい状況がやって来た。最初は「可愛い!」と言ってた私達もさすがに最後の方は「男だろ!」へと変化した。執事のリシャール様は2日目からイライラしてたし、地獄だった。まぁ、リシャール様がキレて「さっさとふっ切れてくれませんかね。仕事が溜まる一方なんですけど。リア様が知ったら嘆くでしょうね。嫌われちゃうかな?」と嫌みたっぷりにいうとジェイル様は「やだぁーっ!」と叫んで何故か仕事にせいを出し始めた。コレなら戻しても平気かなとこの家の主である現在国王のフローライト様と話し合って翌日にクリスタリア様が帰ってきた。
久しぶりではない短期ではあったがのほほーんとした独特の空気を身に纏っていて懐かしい! そう思ったのは仕方ないくらいみんなイライラしてたからだと思う。思春期、拗らせるとほんとに面倒臭い!
「なんか面倒をかけたみたいで済まなかったのじゃ」
王都で人気というお菓子を詰め合わせたものを持ってきてくれた。
そして当のジェイル様はシスコンに磨きをかけて帰ってきたクリスタリア様を抱っこして、抱っこして、抱っこして、抱っこして離さなかったので最終的にリシャール様に怒られていた。うん、リシャール様はクリスタリア様を本当に可愛がってますもんね。抱っこして癒されたいですよね、わかります。
「いやぁ、それにしてもさ……」
「お菓子もジェイル様もリシャール様も全て引っ括めてさぁ」
『甘いねぇ!』
END
ー・ー・ー・ー・ー・ー・【元ネタ】・ー・ー・ー・ー・ー・ー
山口さんちのツトム君(童謡)
山口さんちの ツトム君
このごろ少し変よ どうしたのかナ
広場で遊ぼって 言っても
絵本を見せるって 言っても
いつも答えは同じ 「あとで」
つまんないナァ
山口さんちの ツトム君
このごろ少し変よ どうしたのかナ
大事にしていた 三輪車
お庭で雨に ぬれていた
けさは元気になったかナ 「おはよう」
返事がない
山口さんちの ツトム君
田舎へ行ってたママが 帰ってきたら
たちまち元気に なっちゃって
田舎のおみやげ 持ってきた
つんだばかりのイチゴ チョッピリ
すっぱいね
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ひと息に、読んでしまいました!溺愛、過保護で安心して読めました。
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