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Christmas

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「ク~リス~マスは今年も~やって来るのじゃーーっ!」
「姉上、可愛い!」

 スキップしながら歌ってサロンへとやって来たら後ろからぎゅむ~っとジェイルに抱き締められた。

「うちの子達可愛いなぁ~……」
「旦那様、そうですね~っ!」

 母上は父上に連れてきてもらったのか仲良くソファーに座ってニコニコと妾たちを見つめていた。因みに下の3人は学校のため王都の学校にある寮生活である。今日はクリスマス。明日は祝日で休みのため、父上と母上は泊まっていくらしい。なので今日は父上と母上は久しぶりの参加となる我が家のクリスマスパーティーなのである。

「それにしてもクリスマスパーティーなんて本当に久しぶりですね」
「そうだね。そう言えば無礼講パーティーって言ってたよ?」

 両親の会話に執事が説明していた。

「つまりはリアちゃんが寂しいからみんなとご飯が食べたいと言い出したと……」
「……と言うよりも、1年に1回くらいこの家に働いている皆を労ってもいいだろうと仰りまして……」
「なるほど。リアちゃんらしくていいね」

 そんな会話をしていると家に来客がやって来た。とは言ってもアールの一家だが……。

「はい、お邪魔さま。クリス、今年からお父さんとお母さんも参加で良かったねぇ~♪」
「うむ!」

 アールがなぜかジェイルを引き剥がして妾を抱っこした。そしてジェイルはエティに怒りながら訴えるも逆に諦めろとなだめられていた。

「ローズマリー様、お久しぶりでございます」
「まぁ! セシリアさん。本当にお久しぶりね! 今日はゆっくりたくさんお話ししましょうね?」

 セシリア様がにこやかに母上に声をかけ、会話を少しすると初めて会うだろうコーデリア様とアンジェリア様を紹介していた。まぁ、セシリア様は伯爵家の出だがコーデリア様とアンジェリア様は平民出身のため少し緊張しているらしい。母上はシルヴァーニャ国では侯爵家出身の根っからのお嬢ーーでもなかったか……。父方と母方の伯父上から思い込みの激しいお転婆娘だとか聞いてたし……。あの2人、妾が喋れないからとよく愚痴を言ってたんじゃよね……。話を理解してるのはわかってたはずなんだけどなぁ……。あれ? 話を理解してほしいが返事ではなく相槌が欲しかっただけなのじゃろうかーーおっと、話が反れたがセシリア様が間に入って何とか会話が盛り上がっている。セシリア様、ぐっじょぶ!

「ふふ、クリス。嬉しそうだね」
「うむ、母上とコーデリア様達も仲良くなれそうじゃし……」
「ねぇ、ところでクリス。あれは良いの?」

 あれ……と指指した方向では執事がガラスのキャビネットから何かを出して父上に渡していた。

「うにゃーーっ!」

 あれは歪すぎて執事にしまわれたバターナイフ! ジタバタと暴れるとアールは仕方ないなぁと笑いながら呟くと歩き出した。

「これがリアちゃんの作ったバターナイフ……」
「もちろん未使用ですよ?」
「うにゃーーっ! 執事~っ! 父上にそんなの見せたらダメなのじゃ! 歪すぎて使ってくれないくせに~っ!」

 と言うと執事はアールから妾を奪って宥め始めた。背中をポンポン。頭を撫で撫で。ポンポン、撫で撫でと繰り返し、キャビネットにしまったと思いきや飾っていたらしくその理由を話し始めた。妾が頑張って作ったのを使うのは勿体ないでしょう? と……。制作者からしたら使ってなんぼじゃと思う。

「幼い頃に描いた似顔絵やお絵かき帳、文字の練習帳もちゃんと残しておりますよ?」
「棄ててくれなのじゃ……」

 まぁ、もちろん返事は「ダメです」の一言だったが……。

「そう言えばこのサロンの絨毯……」

 母上がそう言うとアールが執事から妾を奪い、部屋から慌てて出ていった。うん? サロンの絨毯がどうかしたのかの……。

「アール? どうしたのじゃ?」
「クリス……。ちょっと確認したいからローズマリーさんと奥さんたちのプレゼントを見せなさい。本気で嫌な予感がする」
「ヤじゃ! 綺麗に包んだのじゃから開封したくないのじゃ!」

 プイッとそっぽを向くとアールは困った顔をしていた。包装は苦手だから何度でもやり直せるので綺麗なハンカチで包むことにした。それもプレゼントであったりする。やっぱりお金は少しはかけないと……。使ったお金ゼロなのにお金を使っただろうプレゼントを貰うのはやはり良心が痛む。ついでにエティ達アールの子供達へは以前母上にあげた石英のブレスレットを用意した。男と女で別けてある。これも多目に作ったので最後に引いたとしても選べる仕様である。

 いやぁ、妾、頑張ったわぁ~……。





 ティータイムを経て夕刻、クリスマスパーティーが始まると妾はなぜか父上にお膝抱っこされていた。立食パーティーなのに……。

「モグモグ……」
「ふふ、美味しい?」

 そう聞かれたので口を動かしながらコクコクと頷いた。アンジェリア様直伝の魔物肉ジビエ料理に舌鼓しているとふと母上とコーデリア様が居なかった。

「父上、母上とコーデリア様が居ないのじゃ」
「うん、マリーにコーデリアさんがワンピースをプレゼントって今製作してるらしいよ? マリーはドレスで料理があまり食べられないって嘆いてたからね……。ほら、よく食べるから……」

 確かに……。朝からステーキ生活長かったものな……と思わず納得する。でもティータイム後から今製作してるらしいがそんなに簡単に終わるものなのだろうか……。

「うーむ、いつ終わるんじゃろ……」
「そろそろ終わるみたいだよ、クリス。侍女さん達も手伝ってくれたみたいだからね」

 それからしばらくは妾を抱っこした父上がジェイルを連れてこの家で働いてくれている全員に挨拶回りをしていた。いや、妾、歩けるし!

「はい、お待たせしました~……」

 ドアが開くとドレスとは違うが豪華な感じのワンピースを纏った母上がいた。皆の注目を集め、『わぁ、綺麗~……』等と言われたが、父上と妾、ジェイルの出た第一声は異なっていた。それもまた注目を浴び、母上は顔を真っ赤にしているし、執事とアールは口に手を当てて横を向きながら肩を震わせて耐えていた。

「酷いです!」

 母上はプリプリいやプンプン? とりあえず怒っている。

「いや、すまない。ただ、ただーーねぇ、リアちゃん?」
「う、うむ。お腹を圧迫するものがないとなるとのぉ、ジェイル?」
「そうですね……。やりかねないかな……と思いまして……。ね、父上?」

 そう、妾達3人の第一声は「ご飯をたくさん食べそう……」である。コルセットないから気兼ねなく食べそうだなって思ったら口に出てたのじゃ……。





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